魔守の森 名無しの龍 2
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ありがとうございます。
歩く?姿はぷに、ぷに。
立ち姿はぷるん、ぷるん。
鳴き声?はぴよ、ぴよ。
濡れた瞳は黒く潤んで見た目はぷるぷるのつるつるの黒いスライムちゃん。
雫は生まれて初めて魔族?と遭遇していた。
一人で森に入っていった雫は、白いチョークで木に矢印を書きながら進んでいた。
そこで出会ったのがブラックスライムだったのだ。
ぴよっ、ぴよ。
《うわーん。人間こわいよ~》
《あたし、えーと怖くないよ。お友達になろう》
ぴよっ?
《ともだち?》
《うん、友達に!あたしは雫っていうの。あなたは名前なんていうの?》
ぴっ、ぴよよ、ぴよぅ
《しずくね!あたちのなまえは…ないの》
《えーと、スライムだからスー。スーちゃんはどうかな?》
ぴよ、ぴよぴよ、ぴっ。
《あたちの名前スー。ありがとう!しずく》
こうして、雫はこの世界に来て初めて友達をGetした。
**
一方、孤児院では未だ帰らない妹の雫を姉の静香は心配していた。
雫が散歩に行くといって既に3時間が経過していた。
さすがにもう戻って来てもいいはずの時間だ。
もう、日が沈み始めていた。
「さすがにもう戻って来てもいいはずですよね。ランスロット様?」
「ええ、少し辺りを探して見ましょう」
「はい」
………。
しばらく辺りを探す二人。
「ランスロット様、これ見て下さい」
静華が見つけたのは木の幹に白い矢印が描かれたものだ。
「もしかしたら…、雫は魔守の森に」
心配した表情で静華が言う。
「それでしたら、大変なことです。魔守の森は魔族達の数少ない住みかであり、そして時間の流れがここと違うのです」
「探さなくちゃ!」
「お待ち下さい。聖女殿」
今にも森へ入ろうする静華をランスロットは肩を手に置き止める。
「いけません、お待ち下さい。」
「なんで!大事な妹が迷子になったのよ。帰って来ないのよ」
静華は息を荒げて言う。
ランスロットは大人しいと思っていた静華の荒々しい状態を見て少し驚いたが、
「シズクは私が必ず見付けて帰りますから、あなたはこの事を他の護衛の者に知らせて、城へ伝えるようお願いします」
「…解りました、あのっランスロット様にこれを薬です」
「ありがとうございます。では、行って参ります」
ランスロットは森の中へ入った。
静華はランスロットの姿を見送ると他の護衛の兵士に伝えて自分は孤児院で二人の帰りを待つことにした。
**
ぴい、ぴよっ。
《はっけよ~い、のこった》
かぱっ、かっぱ~♪
《せーの、かった~》
《うー、カッパ君つよいよ。3回勝負で3回とも負けちゃった》
雫は現在、カッパと相撲をとって遊んでいた。
何故こんなことなっていたかというと、森の中でスーちゃんとぴよぴよと話していたら、子供のカッパが倒れていた。
子供のカッパはお皿が乾いていて飢え死にしそうだったのを川まで運び助けて仲良くなったのだ。
《あ~あ、少し汚れちゃったね》
かぱ!
《いいところ知ってる》
《どこ?》
ぴよぴよ。
《あたちもいけるかな》
かぱ、かぱ。
《おいで、こっちだよ》
3人はこうして、カッパ君の案内で移動していた。
**
(シズクはどこまでいったのだろう?)
ランスロットは一人で雫の行方を探していた。
木の幹にしっかりと描かれた白い矢印を頼りに進んでいる。
おかげでこちらも助かるし、シズクは見た目よりずっと賢い子だとランスロットは思った。
途中で川まで来て白い矢印通りに進んで行く。
すると、白い湯気が見えてきた。
硫黄の匂いがする。
木々をわけ進み、白い湯気が立ち込める水場で探していた人物を見つけてしまった。
温泉に浸かっている雫とぷかぷか浮かんでいるスーちゃんとばしゃばしゃ泳いでいるカッパ君を。