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番外編 エヴァンナ王女の昔話

エヴァンナ視点です。


10年くらい前のお話でエヴァンナが4~5歳位です。

ランスロットは15、6歳です。

あたくしのお母様が亡くなりました。


お父様はお母様のお側を離れようとしません。


いつも仲の良かったお二人です。



あたくしはお父様が泣いているのを初めてみました。



お母様はそこにただ眠っているようにしか見えません。



あたくしはお母様を起こせばきっと目を覚まして下さるはずです。


「お母様、お母様、起きて下さい。お母様」


「エヴァ…、もうやめよう。母上は死んだんだ」



「死ぬとは?お母様はもうずっと目を覚まさないことなのですか?」


一番上の兄のアラジンはまだ幼い4歳の妹が母の死をまだ理解しきれていない姿をみるのが辛い。



「お母様の手、とても冷たいですわ。あたくしが手を繋いでいればお母様は寒くないですわ」



お母様の手は氷のように冷たいです。あたくしが温めればお母様もきっと寒くないですわ。



「エヴァンナ、もうよい。リーナは天国にいったのだ。もうよい。」



お父様があたくしの手をお母様から離して言いました。




その後、お母様は目を覚ますことありませんでした。



あたくしはお母様にもう名前を呼んでもらうことも微笑みかけてもらうことも抱きしめてもらうこともないと知りました。





**





あたくしは、次期巫女姫としてお城を出て大神殿に暮らすようになりました。



巫女姫とは代々アディストリア公国の領土を魔法の防災で作り災害や日照りがないよう管理し、王に報告する役目を担う魔力の素質が高い女性が受け継いでいた。



巫女姫は王族の者もいれば民の中から選ばれるもの様々である。



巫女姫の年齢は10歳前後の歳から現巫女姫から魔法を学び3、4年後に巫女姫の座を譲り受けるのが通例だった。


しかし、先代巫女姫は亡きリーナ王妃であった為、急きょ母と同じく高い魔力と月の精霊の加護がある娘のエヴァンナが選ばれた。



エヴァンナは笑うことを忘れてしまった。



お母様が亡くなって半年が経ちます。



あたくしはお母様の後を次いで立派な巫女姫になります。



ときどきお母様を思い出して夜一人で泣いてしまいますが、お父様やお兄様たちがいますので寂しくないです。




**






ハーバード家には変わった家訓がある。




『初めて見た裸体の異性を妻に持つこと』




女性に対しての敬意と尊重を重んじているのだが…




ランスロットは今、非常に困っていた。



「ランスロットさまぁ〜。こちらを見てください」




大神殿の庭園の木陰の近くで従者の少年が同じ歳のメイドに襲われていた。




ランスロットは目を瞑り必死で相手の姿を見ないようにしていた。



その頃、エヴァンナは大神殿の庭園で花の冠を作っていた。




何か木陰からごそごそ声が聞こえてくる。




エヴァンナはこっそり近づいて覗いてみた。



そこには、従者の少年が押し倒されてメイドに襲われてる…。




あらあら、どうしましょう?


これは助けるべきでしょうか?



最近の女の方はとても積極的ですのね。


お胸を堂々とさらして殿方の胸板に押し付けおりますわ。



殿方はぎゅっと目を瞑り必死で引き離そうとしておいでですわ。



ああ、見事に食われるとはこのことですわね。



唇を奪われておりますわ。



「んー、んんー」

やめてください。




「ランスロットさまぁ、何故こちらを見てくださらないの?」


ランスロットは今、非常に困っていた。


この状況をなんとかしたい一心だ。


初めて女性に言い寄られて、どうたらよいのか解らない。



しかし、ひとつだけ異性の裸体だけは見てはイケナイ。



どうしよう、幼い頃からの家訓が頭の中でリピートしている。



「そのくらいにしてあげたら如何でしょうか?」



「えっ!ひっ姫さま」


メイドがランスロットから離れて乱れた服を直した。



「お仕事はもう終わりまして?」



「い、いえ。し、失礼致します。」



間の悪いことにこの国の王女にとんでもない場面を見られいたメイドはそそくさとその場を離れていった。




ここに残された従者の少年と幼い王女。


「もう、行ってしまわれましたわ。お取り込み中、お邪魔してしまいましたでしょうか。あたくし?」



「いえ、大変助かりました…」



ランスロットはいまだ放心状態だ。


…まあ、無理もないが。



気まずい空気が流れる。




………。




「あの、ありがとうございました。」



「いえ」




………。




「もう大丈夫ですよ」


小さな女の子に慰められた。



知らない内に体が震えてエヴァンナに頭を撫でてもらっていた。



エヴァンナは相手をそっと労るように微笑んでいた。





エヴァンナが微笑んだのはどのくらい久しぶりだろうか…。





**





現在、エヴァンナの自室でエヴァンナとランスロットが二人でお茶を飲んでいた。



「エヴァンナ王女、今回のエタリーナ行の件なのですが…」



「ええ、辞退したいのですわね?」



「はい」




隣国エタリーナの目的地は大きな花街である。




二人は許婚同士だがそれは形だけであって二人の間に約束がある。





愛する人ができるまでの偽装の許婚でいること。





「ところで、最近勇者様のご兄妹のお部屋に花束を持って毎日お訪ねになっておいでとか?」



エヴァンナがふわりと微笑んで言う。




「ええっと、あの…はい」



戸惑うランスロット。



「私に気を使う必要は一切ございませんわ。好きなお方ができたのですね?」




「まだ、自分でも解りませんが、そうなのかもしれません」



「シズカ様ですか?」



「えっ」



…図星のようだ。



「シズカ様のお好きになったごきっかけは?」




気になるエヴァンナ、アディストリアのジュリエット・シャーロックのファン1号にしてファン倶楽部の会長としては気になる。



今後の活動計画に支障をきたしては!




「美しい黒髪やお姿もそうですがお優しい所と歌声でしょうか?」



「歌声?」



ランスロットはあの日の出来事をエヴァンナに話した。




「……」



「あの、エヴァンナ王女?」





あの日は確か雫がお家に帰りたいと大神殿にきて召喚した時に、使った鏡に体当りしようとして止めましたわね。




推察するとシズカ様はその頃、猛進突破の活動中…。




シズカ様ではありませんわね。






「ランスロット様、シズカ様は今のうちに諦めるべきですわ。あの方はいずれ元の世界へお帰りになりますわ」



「それは、わかっております」




「急にとは、いいませんがシズカ様とシズクには距離を置くべきです」




「…ええ、そのつもりです」




「そのお言葉聞いて、私、安心致しましたわ」





ランスロット様、お二人のことは諦めて頂きますが、シズヤ様との「かぷりんぐ」には協力致しますわ。うふふ。




間違いなく腐王女に落ちていくエヴァンナであった。






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