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聖女付き侍女見習いと騎士団長の攻防 後編

そこには、一冊のマンガ本が置いてある。



「これって、ランスロット様とエヴァンナ王女様じゃない?」



一人のメイドさんが読み始めた。



想像して見て下さい。



「ええー。男の子だったのー!」



「あっ、え、うっうそー、抱きしめて…月明かりの下で影が……」



「…美少年と美青年って絵になるわ、これは他の娘にも見せなきゃ!」



このメイドさんの掴みは良いようだ…。




本日、100冊をエヴァンナと雫の手に寄って秘密裏に城の女子達に配われた。





**





騎士達が今訓練している訓練所。



一人の小さな女の子が物珍しそうにきょろきょろしている。



若草色のワンピースに白いエプロンに焦げ茶色のお下げにぐるぐる瓶底眼鏡をかけた女の子だ。



この場所では目立つ存在だ。




小さな女の子は誰か探している。



騎士や従者に剣の指導をしている茶髪の青年を見付けると近付いていく。




目的の人物を見つけたようだ。





ここでは珍しい小さな女の子に剣の指導をしていた青年もすぐにその存在に気付いて視線があう。





「皆、しばらく休憩だ。キール、後は頼む」


「え、アタシが?解りましたよ。またアナタ、今度はずいぶんと可愛い女の子をたぶらかしたのね。イケナイ子ね。」


そう紛らわしい発言をしたのはこの第一騎士団の副団長のキールだ。



「いや、違う。あの子は異世界から来た勇者と聖女の可愛い侍女さんだよ。」



「へえ、あの子が肥溜めに落ちた勇者の…ね。」



「…ああ」



二人とも微妙に勇者に対してのイメージが壊されてしまった被害者だ。



騎士として勇者は憧る存在!それが……



勇者が可哀想なのでこれ以上は辞めよ。





茶髪の美青年、この国の第一騎士団長、ランスロットは小さな女の子に寄っていく。



「こんにちは、お嬢さん。今日はあなたから来て下さったのですね。」



「こんにちは、騎士様。今日はこれ、あなたに…渡すです。」



そう言った少女の手には白いハンカチが差し出されている。



先日、ランスロットが雫に貸したハンカチである。




ハンカチを受け取ったランスロットに雫は言う。



「騎士様、もうお見舞い来ないで下さい。」


「いきなりどうしたのですか?」



「騎士様と聖女様、へんなウナギです。迷惑です。」



「…そうですか?、残念ですが、私は諦めるつもりはありませんよ。」


「なぜ?」


「解りませんが、このまま私を襲った犯人をこのまま伸ばしにして置くわけいけない気がして…」



その言葉を聞いた侍女見習いの少女は青ざめる。



犯人はあたなのすぐ目の前におりますが…。


あれは緊急事態で仕方なく殴ってたのだ。



「でも、王様がもう大丈夫だって、言った。だから、もうお見舞い来ないで下さい。」



そう言って、雫は足早にその場を去っていった。




**




その同じ日の夕方。



こん、こんっ。



いつもの青年がやってきた…。



ううーまた来たと雫は思いながら、仕方ないので扉を開ける。



「騎士様、聖女様はお休み中で、勇者様はいらっしゃいませんが、中へどうぞ。」



「…よろしいのですか?」



「はい」



今日は魔法のカラクリ壁にすべて例の物を隠してある。



中に入ると応接できるような二人掛けのソファとテーブルのセットに奥には大きなベッドがあり、黒髪の少女が眠っていた。



ランスロットはやっと会えた少女に近付いてく顔を覗き込む。



すると、ランスロットは黒髪の少女こと聖女の静華の黒く真っ直ぐで美しい髪に触れる。



お前、お姉ちゃんに近付き過ぎっ!雫がそう口にしかけた時…




「んっ、ランスロットさ、まぁ…」



姉の静香が寝言をいいランスロットの手が、静香の顔の近くにあったので、自分の頬に手を擦り寄せたのだ。



「ごほぉん!」


大きな咳払いをする雫。


その咳払いにびくっと雫の方を見るランスロット。



「もうお帰り下さいませ、騎士様。」



「あっ、はい…」



雫はランスロットを急かして部屋から追い出した。



あのシチュエーションはたしか変態のお父さんが『こう寝顔で自分の名前を呼ばれて頬擦りでもされると男は皆、どっきゅんって心を揺さぶられてオオカミさんになっちゃうから気を付けるんだぞー』って言っていたのとまったく同じだ。



あたしあまり良くないフラグを立ててしまったと雫は一人悩んでいた。



今回もちゃっかり花束を置いていったランスロットであった。




**




その頃、静香の夢の中では…




ジャクソン王子とランスロット騎士団長が…


ピ――― を啄むように貪りあい。



ピ――― をピ――― に挿入した。



激しく愛し合う二人。

次の日の朝、ジャクソン王子はランスロット騎士団長の自分の頬を手にし、優しく頬擦り愛しい人の名を呼び…。




BL万歳な姉の静香の夢だ…

きっと次の話のネタになるだろう。




**




次の日のまたまた同じ時間帯だ。



雫は明日のサイン会の手配とお面を作り終わって安心していた。



しかしながら、何故雫が世の中の半数の男性が怖くて読めない敵に回すようなマンガ本を売ろうとしているのか不思議に思う人がいると思う。



それは姉の静香が大好きだからだ。



姉の静香が大切にしているものを壊したくないし、受け入れている。だから、自分ができる範囲で手伝ってしまう。



普段から仲の良い姉妹(兄は?)なのだ。



姉の喜ぶ姿が好きなのだ。




こん、こんっ。



また…。



仕方なくでる雫。



「こんにちは、騎士様。ご用件は?」



「こんにちは、お嬢さん。今日はあなたに贈り物があります。」



「あたしに?」



「はい」



すると、ランスロットは膝をついて雫の焦げ茶色のお下げに青いリボンを結わえる。



「良くお似合いですよ。お嬢さん。」



「ありがとうです。騎士様。」



「騎士様じゃなくて、ランスロットです。」


「らんすろっど様?ですか」


「ええ、お嬢さんのお名前は?」



「聖女付き侍女見習い1号です。」



「……それは、ダメです。」



なんでですか!



「えーと、エヴァンナ王女の教え子のA子です。」



「………きちんと教えは頂けないのですか?」



「初めて会った日に、エヴァ先生から紹介して貰ったはずですが…」



「…………モズク?」


「失礼します!」




雫は勢い良く扉を閉めた。



モズクはないだろう、海蘊は!と雫は思った。



しかし、カツラのお下げに結って貰った青いリボンは嬉しかった。花束はまた貰ったのだが、やはり聖女の兄か姉宛なのか知らないがそう思うと胸の奥がきゅうと痛むは何でだろうと雫は思った。




**




次の日、同じ時間帯。



今日は兄の静也が一人でいた。



妹達は城下町でサイン会だ。



兄の静也は毎日、朝は合気道(護身術)を末っ子の妹に習い、午後は乗馬(キャシーしか乗れないが)や体力つけるべくジョギングをしていた。



今日もジョギングでかいた汗を風呂で流し休憩していた所だ。




こん、こんっ。




妹達が帰ってきたのかと静也は思い、扉を開ける。



「おか、わりください…」


前にも聞いたことがある言葉。



とそこには、ランスロットがいた。




これが本当の意味での勇者と騎士団長の初対面だった。





思ったよりも長くなりました。


お付き合い下さりありがとうございます。



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