うちの聖女、覆面?BLマンガ作家になる
「できたにょ~。」
そう言ったのは、目の下にくまを作り眠そうな顔をした残念な美少女ことこの国の聖女、静華だ。
彼女は創作活動開始から72時間1分12秒経過して50ページのBLマンガ本を一本書き上げた瞬間の一言だ。
1分12秒!記録新更新。
「後は雫、たのんだにゃり~♪」
ばたんっ。
聖女がベッドに倒れた。
眠っている。
そっとしておこう。
次の日の朝、聖女は寝ている。
そして、次の日の朝も聖女は寝ている。
また、次の日の朝も聖女は寝ている。
やっと次の日の朝、聖女が目を覚ました。
「あぁ、良く寝た♪」
ええ、それはもう寝ましたとも
たっぷりと。
静華の顔色はすごく良くなり、目の下のクマもなくなっている。
ぴちぴちの女子高生に戻っている。
「あれ?雫、服変わったね。どうしたの?」
「聖女様の専用侍女見習いになったの。」
雫の普段着に着ていた灰色のワンピースに白いエプロン姿だったのが、若草色のワンピースに白いエプロンと上品な服装になっていた。
それから、静華の部屋には、花瓶が5つに増えている。
増える花瓶の謎。
「その花瓶のお花、どうしたの?」
「すべて騎士団長さんから毎日、お姉ちゃんのお見舞いにきて置いてきます…。」
「そう、よく頑張ったね。雫、ありがとう」
さすがの静華も勝手に他人をモデルにして書いたことに多少の罪の意識がある。
兄は別だが……。
「雫、それより原稿は?」
「複写紙の呪文でエヴァ先生に200部作ってもらって、こっそりお城で働く洗濯場のお姉さんやメイドさんに渡した。」
「で、その後の反響は?」
「300部増刷決定!
本日、城下町にて緊急サイン会だよ♪」
「やったー!」
喜ぶ静華だが、
「でも、私がこのまま城下町に下りて大丈夫?」
「大丈夫。はいこれ。サイン会で被ってするように、あたし作ったよ。」
静華に雫から手渡されたのは、2つのお面。
1つはふくよかなおかめのお面。
もう1つは狐の可愛いお面。
末っ子の無難で可愛いお面だ。
静華は本日より狐の可愛いお面と金髪のカツラを被って城下町でひっそりとサイン会と行なったのだか……
増刷されたマンガ本はものの5分足らずで売り切るという売れ行きで、さらに増刷が決定した。
聖女、静華のBLマンガ本作家として異世界での活躍は素晴らしい第一歩となった。