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兄は聖女(女装)を演じる 後編

聖女に成りきろうとするが、ときどき静也視点に戻ります。

PV 1000 越えました。ありがとうございます。

ドアの開けると向こうにはアディストリア公国 第一騎士団所属の騎士団長が待っていた。


明るい茶髪に春の暖かい空の瞳を持ち優しそうな顔立ちの良く聞く甘いマスクの二十代半ば位の紺色のタキシードを着た優男が立っていた。



名前は確か…忘れた……。



騎士団長でいいや、異世界語解らない設定だったし、聖女を演じてよう。



「あなたが聖女殿ですね?」



騎士団長は言う。



その声は低く美声だ。


普通の女の子だったら腰にきてゾクゾクするだろうと思う声の持ち主だ。



背も高い、聖女よりも目線が上だ。



聖女はピンクのドレスを着ていた。露出が少なく。

清楚で美しかった。


ただ少し化粧濃いのが残念だが、黒い髪に瞳はこの国では珍しく、綺麗で魅力的だ。



騎士団長は膝まずいて聖女の手を握る。




「私はアディストリア公国第一騎士団所属の団長を勤めております。

ランスロット・ハーバードと申します。

今宵は私を御相手に楽しみ下さい。」



そうして、騎士団長は聖女の手の掌に唇を滑らした。



聖女は握らなれてない手がぎりっと握りしめ手が白くなっていた。




舞踏会ではうっとおしい視線がいくつもの注がれていた。




そこへ、


「今晩は、ランスロット様、シズカ様」


エヴァンナ王女ともう一人焦げ茶のお下げにぐるぐる牛乳瓶底眼鏡の灰色のドレスを着た地味で小さな女の子が一緒にいた。


「おや、その子はだれですか?」


騎士団長が問う。



「ええ、この子は私の教え子でシズクと申しますの。」


そう答えると、小さな女の子は舌ったらずな言葉で、


「おどる…おたましゃん」



雫は早くも異世界の単語を覚えつつあるようだ。


しかし、おたましゃんとはだれ?



雫は聖女の手を引いた。


どうやら、お姉ちゃんと言いたかったらしい。


雫は聖女を伴ってダンスホールへと向かった。




少女との踊る時間は正直心からほっとする。


(お兄ちゃんが初めて踊る相手で良かったよ

そうだ、念のためパーティー組もう)


少女は日本語で言う。

ああ、お兄ちゃん冥利に尽きる言葉だ。


しかしパーティーとは?

もう一緒に踊っているし…

(まぁ、いいだろう)

と小声で雫に言う。



ああ、いかん聖女の仮面が外れてしまう。



聖女と少女は騎士団長と王女の元へ戻る。



二人はお酒を飲んで話していた。



聖女は日本では未成年者なので飲めない。


騎士団長は聖女を踊ろうと誘う前に小さな少女が着かさず騎士団長をぐいぐい引っ張って行った。


騎士団長は中腰で踊り難そうで少女の方も足を数回踏んでいた。


聖女はその間、エヴァンナ王女と踊っていた。

結局、騎士団長とは踊る事なくやっと舞踏会も終わった。


王女たちと別れて、聖女の私室へまでついてきた…騎士団長。



「あなたともう少しお話したいのですが、中に入っても宜しいでしょうか?」



聖女は言葉が解らない素振りでとりあえず聖女の私室へと入れてしまった。



流石に疲れたようで聖女はソファへ座る。




何だかさっきと様子が変わっている。



聖女を見る瞳に艶かしい色をはらんで、じっくりと全身を見ている。



「聖女殿、申し訳ない……」

騎士団長がゆっくり歩み寄る。




何だか怪しい雲行きだ。



聖女が座ってるソファに騎士団長が隣に座る。



「…聖女殿……」




騎士団長は聖女の耳に唇を寄せて呟く。


その熱を帯びた声は色っぽく。耳にかかる吐息に聖女はぞくりと身体が反応する。



騎士団長は聖女を優しく抱きしめ、左手で頭を撫で、右手は聖女の腰をしっかりと引き寄せ、ゆっくりとソファへと押し倒していく。



ぎしりとソファが軋む。



聖女はしっかりと騎士団長に組しかれている。



聖女は両手で騎士団長を必死で押し戻そうするが両手は聖女を引き寄せていた手によって拘束される。




聖女は騎士団長の下半身の熱く固くなったそれが自分の太ももに押し当てられているのに気付く。



「ひっ」


と恐怖を感じて聖女が声を出すが、騎士団長の顔はすぐ聖女の目の前にある。



騎士団長は聖女の紅い唇に自分の唇を重ねようと目を瞑り――






がしゃんっ!!





その音を立てたのは焦げ茶色のお下げの髪にぐるぐる眼鏡をかけ、灰色のドレスを着た幼い少女だった。







幼い少女はワインボトルを握り絞めてボトルの中央からその半分が割れている。



騎士団長の頭を殴ったのだ…。


さらに少女はガラスの窓を回し蹴りで蹴り壊して、凶器のワインボトルをその辺に投げ捨てた。




その少女は聖女を気を失った騎士団長から引き離すと、






「きゃああああぁぁぁーーーーー」





と、大きな悲鳴を上げた。




その声を聞いた見張りの兵士が数人やってきた。




「せいしょ、ゆかい。きし、かばう。」




たどたどしい、発音で状況を説明する。




要約すると聖女が誘拐されそうになり、騎士団長が庇って襲われたとこういう感じだ。




状況からしてもその時の聖女の様子は酷く青ざめていて、騎士団長もソファの上でうつ伏せで後頭部にタンコブをつくり、ガラスの破片で怪我をし、おでこから血が流れていたので、ほぼ間違い。



ただ不思議なのが何故凶器がワインボトルだったのかである……。





しばらくして人が居なくなり、幼い少女と聖女の二人きりになった。




すると、




(お姉ちゃん、エヴァ先生、出てきても大丈夫だよ。)


幼い少女が日本語で言った。




くるりと部屋の一部の壁が回転して二人の少女が現れた。





(お姉ちゃん、騎士団長さんに一体何飲ませたの?)


(お城にあった図書館の本でむらむらの薬をつくってみたの効果抜群だったみたい。

良いもの見れちゃった目の保養。いひひっ)


「壁が回転するよう魔法でつくってみたのですが…カラクリとは面白いですわね。」



末っ子、本物の聖女いや魔女だ!

そしてこの国の王女が順に喋る。




(おい静華っ!、俺の貞操はどうなる)



聖女いや静也が言う。



(そんなの減るもんじゃないし、いいじゃない)



(お姉ちゃん、今回のは行き過ぎだよ。お兄ちゃんの尻の穴はへらなくても良くないよ)


末っ子よ、君はどこまで知っているんだ……


怖くて聞けない。お兄ちゃんであった。



ともあれ、舞踏会での騒動で事実上この国の騎士団長をノックアウトしてしまった雫のレベルが一つ上がり、

静華も薬の調合で経験値が上がり、やはりやばい方向性でレベルアップしている。


静也もRPG的に雫とパーティーを組んでいたとかでおこぼれながらにレベルが一つ上がっていた。



本当に情けない…レベルアップの仕方だった。




いつもより長くなりました。



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