私、メリー
※これは、フィクションです。絶対に真似しないようにしましょう。
私、メリー。ある家の一軒家に住んでいるの。
朝起きると、いつも散歩とご飯をくれるおばあさんが私を起こす。おばあさんは私の事を嫌いと言うが、たまにおやつをくれる、大好きなおばあさんだ。
散歩を満喫して帰ると、家の中が少しうるさくなる。私のご主人とご主人の奥さんが起きたらしい。いつも、奥さんの大きな声が聞こえ、ご主人の車のエンジン音が聞こえる。そして、その娘達が起き、階段の行ったり来たりする音がする。全くもってこの家は騒々しい。ゆっくり寝たくても、騒々しくて寝ていられない賑やかな家である。
少し経つと静かになりおばあさんと二人きりになる。私の休息が訪れる。
おばあさんはたくさんの濡れた物を干し終わると、家の中でガシャガシャと水の音がする。何かを洗っているのかな?私を巻きこまないで欲しいのは確かだ。
お昼まで、おばあさんを待つのが、私の楽しみ。何故かって?おばあさんのお昼ご飯さ。半分私に分けてくれる。もちろん、おやつ付きで。
そして夕方には、日課のお散歩。たまに、おばあさんの友人の家に訪問。待つ時間も嫌いじゃない。だって、すぐそばにおばあさんがいるから。
だから、家の人を待つのはけっこう嫌いじゃない。一人じゃないから。
家に着くと夕飯が待っている。おばあさん特製ねこまんま。何故か飽きない不思議な味。
こんなに良くしてくれるおばあさんを、嫌いになる要素はどこにもない。おばあさんが私を嫌いでも私は大好き。
これからもずっと、ずっとね………。そんな、毎日が続くと信じていた。
ある日、いつもの朝が来た。家の住人が起き騒がしくなったが、いつもと違う感じがした。おばあさんが、家から出てこない。
(どうしたんだろう…)
その日からおばあさんは、家の中から出て来なくなった。毎日待っても出て来ない。
(おばあさん!どうして、顔を出してくれないの?おばあさんの散歩じゃなきゃ嫌だ!)
私は、吠える事が増え、奥さんやご主人によく怒られる様になった。
吠えていれば、いつかおばあさんがひょっこり現れるんじゃないかと思っていた。
それから半年後…おばあさんが帰ってきた。うれしくて声がなかなか出てこなかった。そのせいか、ご主人達は少し驚いていた。
「メリー、今日は静かだね。」
「ばあちゃんが、急に病院から退院してビックリしてるんじゃない?」
「毎日がこんな感じなら、近所迷惑ならなくてすむのにな…」
「本当、本当!!」
「本当、ばあちゃんが退院してよかったね。」
なんて会話は知らないが、そんな事より、やっと会えた。また、前の様な毎日が来るだけで幸せだった。
なのに………一週間もたたないうちに、おばあさんが、急に亡くなった。
「退院したばかりだったのに…ばあちゃん〜〜〜!!!」
そんな声が聞こえてくる。
おばあさん…もう二度と会えない。十年以上も一緒にいたのに、先に逝ってしまった。悲しくて、楽しみの散歩も楽しくない。ご飯も美味しく感じない。
(どうして、こんなに悲しいのか。ご飯を美味しく感じない。どうしても楽しくない。)
毎日が息苦しくなった。家の主人達も忙しくてなかなか、かまってくれない。寂しい………………
でもその分、庭を駆け回る事が増えた。
気分を変えた方が良いと、娘達が放してくれるようになった。鎖がない分気分は楽だったけど、柵があって外にはいけない。目の前に外が繋がっているのがわかるのに、いけない。
(悔しい! もっと自由になりたい!!)
そう思った私は、毎日、柵を乗り越えられるよう試してみた。もちろん、ご主人達がいない時を狙って、何度も何度も…
(とうとう、その方法を見つけた!! 私は自由だ!)
次女が家に入るのを確認し、柵を乗り越え、走り出した。畑、そのまた奥の畑を乗り越え、走り続けた。私のいた家が小さく見える。そして、家にいた次女が慌てている。
(ざまあみろ! ここまで来れるもんなら、来てみなさい。あなたより私の方が速いんだから。)
と思っていても最終的に捕まって、すごい剣幕で怒られる。私は、目をあわせない。だって、私は悪くないもの。ご飯がお預けになっても、私は隙があれば、何度だって脱け出してみせるわ!これは、決意表明よ。
怒り疲れて、家の中に入る次女。やっぱり怒られるのは好きじゃない…少し落ち込む。
だけど、すぐに何もなかった様に餌をくれる。次女は気分屋かもしれない。小さい時は、下僕だと思っていたのに最近、私をからかったりするのが、気に食わない。
次女と違って長女は、次女より好きだ。だって、私の事好きってわかるから。たまにしか会わないけど、優しくしてくれる。
奥さんは、とても怖い。だから、逆らっちゃいけない存在。いい子にしていれば、餌もくれるし、絶対服従だぁ。
そして、私のご主人。怒ると怖いけど、私をこの家に連れて来てくれた人。私は、ご主人が大好き。会えるのがうれしくて、尻尾をたくさん振ってしまう。月に一度会えるか会えないか…微妙である。
だからこそ私は、自由を求める。
今の私の生き甲斐だから。
最近、世話していた次女も忙しくなったのか、かまってくれなくなった。今こそ、脱走のチャンスだ!そして、誰も知らない私だけの冒険。
家に人がいないのを確認し、さっそく柵を乗り越える。まずは、おトイレをすまして畑で走って遊ぶ。そして、食べ物の散策を始める。いつも散歩は紐で繋がれてるけど、この時は自由し放題さ。走って疲れると、住宅街に戻りお宅訪問。
見つけた!
「おや、メリーまた脱走してきたのかい?」
(うん!おやつ貰いにきたよ。)
「待ってて。今、おやつあげるから。」
そう所謂、おやつ巡りである。
(私の楽しみは、やっぱりこれだね!家のご飯も飽きたしね。)
「ほら、持ってきたよ。」
いつものビーフジャーキーを食べつくす。食べたら、思うがままに歩く。出会った人におやつをねだり、そして、おばあさんの知り合いの人にも挨拶がてら、おやつを貰いに歩く。そして、お腹いっぱいなったら家の前でぐっすりとお昼寝。
家の人が帰るまでの私の冒険である。これだけは、やめられない。
私は、メリー。自由な犬である。 終
犬の気持ちを想像したみた話です。
抑圧される事は誰だって嫌だろうと思います。制限の多い犬にとって、それは、どんな思いなんだろうと、考えてみました。
処女作なので、つたない文章ですが楽しんでもらえたら嬉しいです。
もしかしたら、続きを書くかもしれないので、その時良ければまたメリーに会いに来て下さい。