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傘の音

掲載日:2026/08/27

夏のホラーです。

雨が降る。


僕はビニール傘をさす。

僕のビニール傘は不思議だ。

何がどう不思議なのかというと、台風でも壊れず、落としたり失くしたりしても僕の元に戻ってくるからだ。


そして、最近は傘をさすと着信音が聞こえてくるようになった。

着信音を聞いて、僕は付き合っていた彼女を思い出した。


「あ、もしもし元気?今なにしてるのー?」

傘から声が聞こえる。幻聴だ。


幻聴は正確には傘からではなく、雨が傘に当たって聞こえるようだ。

傘はイヤホン、雨は音楽みたいで、2つセットじゃないと幻聴は聞こえないみたいだ。


彼女は1年前に行方不明になった。

突然の出来事で僕は混乱し、落ち込んだり、悩んだり、イライラしたり、情緒不安定になった。


時間はその出来事を薄めていった。


傘をさすと彼女のことを思い出して何故か苦しい。


雨の日は憂鬱だ。


傘をさすと着信音と彼女の声。

「久しぶり〜元気?相合傘して帰った時のこと覚えてる?海に行ったよね」


あの日の記憶は曖昧だ。

相合傘で帰ったはずなのに僕は、びしょ濡れで3日ほど高熱で学校を休んだ。

そして、彼女が行方不明になった話を聞いた。


雨の日、傘を通じて彼女の声がする。

「海に来てほしいの」と幻聴。


僕の足は海へ向かった。

僕の体は海に吸い込まれるように波にのまれた。

傘から彼女の声がする。

「また相合傘しようね」と。


夕方の海の中。

曖昧な記憶が蘇る。

「雨の日の海がみたい」と彼女は言った。

僕も一緒に行った。


そして彼女は海にのまれた。

お盆の海には近づかないようにと言われていたのに。

何かに連れて行かれるから危ないからって言われてたのに。

彼女は好奇心旺盛で、お盆の海を怖がらなかった。


あの日、僕は怖くて助けを呼ぼうとして、慌てて転んで気を失って…

知らない人に助けてもらい家に帰った。

高熱で学校を3日休んだ。




今日はお盆。

あの日ように雨なのは偶然なのか?


彼女も僕も海の中。

傘がないから着信音も彼女の声ももう聞こえない。

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