表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/35

少女には届かない


階段を上がり、廊下を少し進むとそこに教室はあった。


『S-1』と書かれている木札があり、

その下には丁寧に入学おめでとうと手書きで書かれた紙があった。


「はいはい、みんなの愛しのクラスだよ~。さぁ!中に入った。」


そういわれ全員が中に入ると、書きかけの黒板アートが目に入ってきた。

何を書こうとしたのかは意味不明だが、熱意だけは伝わってくる作品。


怕維人はそれを素早く消すと、一人一人の席を名指しで決めていく。


その決められた席に全員が座るのを確認すると、怕維人は全員の顔を見て言う。

「今席に座っただろうけど隣にいる人が、

 今から解散しない限り、ここを卒業してもほぼ永久的に同じペアだからね?

 え~と、行動とサポートでセット。俺の偏見で組んだから確認よろしく。」

 

永久..........賢雄はそう言われ、隣の少女を見る。


キラキラと輝く銀色の髪を後ろでまとめた、

いわばポニーテールが彼女という存在を際立たせていた。


確か彼女は賢雄や夕夏より早く来ていたはず。

そんな考え事をしながら彼女を見ていたが、

こっちを向いてくれず、ずっと黒板に貼られている座席表を見つめている。


「.......ちょっといい?」

「.............」

「?.............ちょっと?」

「.............」


呼びかけても返事が返ってこない。


(えっ.......俺なんかした?)


賢雄の心にダメージが入る。


見回すとほかの人たちは自己紹介ぐらいまでいっているのに、

自分たちだけ進展がない。


少し悲しそうな顔をしていると、

クラス内を見回っていた怕維人に肩をたたかれる。


「大丈夫?」

「これが大丈夫そうに見えているあなたの目は腐ってますよ。」

「......?」


怕維人が疑問に思っていると、賢雄が話す。


「まだ一回も話せていないんですよ。」

「あぁ、なる。任せとけ。」


怕維人は軽くそう賢雄に言うと、隣の少女の前に歩いていき手を振った。

そして、膝立ちすると少女の肩を指でたたき始めた。


トンタッ、トントントン、トンタッタッ、タットン、トンタットントン、

 トントントン、タットンタットンタットン


たたき終わると少女は慌ててこちらを向き、ペンと紙を取り出す。

そこに素早く文字を書き込むとこちらに見せてくる。


『お待たせしてすいません.......悪気はないんです、ごめんなさい。

 私の名前は、石鳥蜂(いしとりはち)といいます。』


女子っぽく丸みがあり、きれいな細い字でそう書かれていた。


「別に気にしてないよ。大丈夫。

 声に出すっていうのは恥ずかしい人もいると思うし、実際僕もだし……」


そう賢雄は蜂に言うと、蜂は困惑した顔色になる。

彼女の眼はずっと賢雄の口元らへんに集中していて、

なかなか目を合わせてくれない。


そこに素早く怕維人が入り込むと、手で何かごにょごにょと動かし始める。

その、ごにょごにょが終わると蜂はクスッと笑い、紙に何かを書いた。

そしてペンを置き、紙をこちらに向ける。



『私はもともと生まれつき耳が聞こえません。』



「えっ?」


驚いた。変な感じはあったものの、恥ずかしがっているだけかと思った。


「あ、ごめんなさい。その、失礼なこと言って.......」


賢雄はすぐに謝るが、言い切るより先に蜂に紙を突き付けられる。


『全然気にしていただかなくて大丈夫ですよ。

 今のは私のせいでもあると思うので...

 あ、話していただく際には確実性があるため、

 ここに書いていただくと助かります。』


賢雄は自分のペンであわてて書く。


『すいません。本当に気づかいのない発言をしてしまいました。

 ところで蜂さん。耳が聞こえないというのはどのくらいなのでしょうか?』


賢雄が書き終わると、蜂が答える。


『全く、0です。耳の鼓膜が最初からないので..........

 あ、けど6文字以内ならまともに話せると思います。』


そう書き蜂はペンを置くと


「こんなふうに。」


賢雄の耳元でささやいた。


「うわっ!!.........びびった~。」


驚きと恥じらいで囁かれた耳を抑える賢雄。

その反応を見てくすくす笑う蜂。

おかげで賢雄の顔と耳は真っ赤に染まっている。


『喋るのお上手ですね。』

『はい、一音一音に集中することで、

 皆さんと同じくらいの発音くらいにはなれますよ。

 ですが、6文字が限界です。』

『それでもすごいですよ』


そんな風に書いていると、怕維人が手を叩くと同時に足を床に数回たたく。

振動による蜂への対応だろう。

この人、気が使えたんだと賢雄は考えを改める。


「だいたい自己紹介ぐらいまで行けたかな?

 ここでちょっと謝っておきたいことがあって..........

 俺まだ知らない人とかがいるのに、

 よゆーで行動とサポートの説明のこと飛ばしてたわ。」


確かに何だろうとは思っていたが........


「ちょっとざっくりと説明するね。

 まず、パケットで仕事をするにつれて二つの役職があって、

 まず一つ目が行動役。これは戦闘とか体を動かす系だね。

 二つ目はサポート役。行動役を支えながら調査、

 任務中とかだったら案内とか助言とか、そこら辺の仕事。

 で、今は行動役が4人、サポートが4人ね。

 えっと、服部[男]、吾車[男]、長部智[女]、穀瑠(こくる)[女]で4人。

 そして、石鳥[女]、鳳翔(ほうしょう)[男]、夜蝶(やちょう)[女]、静函(せいかん)[男]でこっちも4人ね。

 みんな大丈夫?理解できた?」


まぁ、大体は分かった。

つまり、賢雄のサポートは蜂だということだ。


よろしくとあいさつしようとした賢雄。

すると、左肩からトントンとたたかれる。

目を向けるとそこには紙をこちらへ向けた石鳥の姿があった。


『頑張ろう!!』


大きな文字でそう書かれていた。

子供かよ。そう賢雄は思う。


今日は少しこの学校とみんなのことが知れた。

それをうれしく思う反面心配にもなった。

本当にここでやっていけるのか、と。


だが、この言葉を見た瞬間、蜂の思いに触れることができた。

まるで、賢雄から過去のしがらみをすべて取っ払ったように。

賢雄はそれを感じると、無意識にペンを持ち書いていた。

書く言葉はもちろん........


『お互いにな!』


ちょっとキザっぽい感じがしたが、思いが伝わればそれでいい。

そう思っている賢雄に声が降りかかる。

それは六文字以内でしか喋れない女の子からだった。



「やるぞ、あいぼ!」



「......はは、う忘れてるし。」


満面の笑みを浮かべる相棒に俺はグータッチで返した。


◇◇◇◇◇


「あの怕維人先生?」


みんなが帰宅した放課後の教室に賢雄と怕維人の姿があった。

賢雄の用事はただ一つであった。


「なんか教えてもらわれてないこと多すぎじゃないですか?」

「へ~、フォイグザンポ~?」

「例えば『五法』とかですよ...........なんですかあれ?」

「う~ん。『五法』はね、パケット隊員を多く輩出する名家五つのことを指すんだ。

 吾車家、穀瑠家、鳳翔家、夜蝶家、で最後の静函家。

 この5つの家は幼少期からパケットになるための特殊訓練を積んでる家なんだ。

 だから、パケットの本部からの信頼も厚くて、推薦生徒権があるんだよ。」

「すいせんせいとけん?」


いきなり出てきた意味不明の単語に賢雄の顔は険しくなる。


「この学校に推薦入学する生徒を選ぶ権利のことだよ。」

「へ~、それはすごいですね。

 でも、それじゃあなんで怕維人さんのほうが推薦の権限が強いんですか?」

「..........どゆこと?」

「......どうして怕維人さんが推薦生徒権を3つも持ってるんですか?」

「う~ん。なんでだろうね?先生だから?」


顔をかしげながら人差し指を顎に持ってくる怕維人。

そこに賢雄が詰め寄る。


「ごまかさないでください。気になるんです。」

「ちぇー。...........はぁ、えっとね。それは俺が強いからだよ。

 あっ、自画自賛とかじゃねーぞ。そこんとこはき違えんなよ。

 漫画とかによくいる最強キャラ枠だからな。」


「..............えっ?あなたが?」


「そう俺が。」


学校の方は明らかに適材適所という言葉をご存じないのだろうか?

もし、この人が最強なら先生にすべきではない。


ていうか、こんな人が最強なら、この国終わっただろ。

いや、確かに強者感はあったけどさ..........


「気のせいかな。今ものすごくひどいことを言われた気が........」


ちょっと疑問そうにしている怕維人に言い放つ。



「この学園、安全性大丈夫ですか?」



モールス信号を使っているシーンがあるので、是非解読してみてください。

トン=ツー タッ=トン


よかったら評価よろしく。


不明点やアドバイス、感想、アンチコメも受け付けてます。

皆さんの意見をぜひお聞かせください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ