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裏での出会い


黒鳥居を潜り抜け、右に曲がると体育館はすぐそこにある。

最近建てられたか、塗りなおされたか知らないが

赤いペンキがキラキラと輝いていた。


二階建ての体育館で、入り口の前までたどり着くと、

関係者は上へ、新入生は一階へと書いている看板がたてられていた。


その通りに賢雄は一階入り口に垂れ下がっている赤白の横断幕を潜り、体育館の中へと入る。


「でっか!なにこれ⁉」


賢雄は入るなり、体育館の広さに絶句する。

目測で長さ80メートル、高さ40メートル。

明らかに賢雄が前までいた中学校の比ではないのだ。


周りを見渡していると、体育館の前方にあるモニターに目が行く。


『前から詰めてお座りください。』


普通は出席番号順だろと思いながら賢雄は体育館の前へ足を進める。


一時間前なので、一番前の列は全部開いていたが一番最初というわけではなかった。

賢雄は3番目だった。そして前の二人はどちらとも女子だった。


(.........き、気まずい......)


異性×入学式×声が響く広い空間=超気まずい。

この完璧な黄金の計算式が賢雄の頭で完成する。


隣との距離は約1.5メートルといったところ。

せめて1メートル弱なら何か話しかけられたかもしれない。


だが賢雄はこの微妙な距離が入学式を厳粛に行うという意味が込められていると、

自分の独自の見解を見出し、下を向きながら今後行われるであろう

自己紹介のテンプレでも考えようとしていたところ............


「あの~..........もしかして服部賢雄君?」

「.........?」


右隣に座っていた女の子が、響かないようか細い声で話してきた


「はい?そうですけど.........」


名前が知られているため知っている人かと思い、

顔をよく見るとそういうわけではなさそうだ。


「あの~......失礼なんですけど.....あったことありましたっけ?

「えっ!......忘れt........ん”んっ!....ううん。一方的に知っているだけよ。」

「.....?…....一方的?」

「あぁ、ごめん。ちょっと分かりづらかったよね。地元が一緒ってだけよ。

 けど、体力テストが連続で全国一位なんてみんな風のうわさでやってくるわ。」


賢雄は顔を赤らめる。


「そうか.......知っている方でしたか。」


しかし、恥じらいとともに緊張感がほぐれていくのを感じる。


「.....あなたの名前は?」

「えっ、ウチ?.......じゃない!私は........!」


じゃないという言葉があまりにも響いたため、二人は肩を浮かせてしまう


「あ、ごめん.....」

「だ、大丈夫。別に言いやすいほうでいいんじゃない?」

「.......ウチの名前は長部智夕夏(はべちゆうか)っていうの。....よろしく。」

「うん。こちらこそよろしくお願いします。長部智さん。」


黒い髪を後ろに流しているが、ところどころギャル感が抜けない女の子。

そう賢雄は解釈する。

と、そこに夕夏が腕時計を見ながら話しかけてくる。


「時間たつの早いね、後20分ちょいだって。」

「えっ?」


疑問に思った賢雄が、周りを見渡す。

見えるのは、無数に並べられたパイプ椅子のみ。


「.........?......どうしたの?」

「俺ら以外にもいるはずだよね?

 .............それなのになんでみんな来ないんだろう?」


その疑問に夕夏が便乗する。


「まぁ、気になるけどそのうち来るんやない?」

「そう、だよね?」


◇◇◇◇◇


全然来ない。

残り三分前である。

夕夏と話していたらこんなじかんである。


「えっ、もしかして三人俺らだけ?」


その言葉に夕夏は秒で否定する。


「そんなわけある?生徒三人なんて漫画の世界じゃあるまいし........?」


最後の感じに自信なさげを感じるが、賢雄も同じ気持ちだ。


そもそもこの学校は怕維人から聞くのが初めてだった。

もしかしたら、紹介制でめちゃくちゃ生徒数少ないんじゃないか?

そのような考えが賢雄の頭を駆け回る。


そんな時、ようやく待望していた音が背後から鳴る。

バタッ!という音がして横断幕が払いあげられ、複数の人影が現れる。



「うわっ、来たわこの場所.......もううんざりだな.......な、悠馬?」

「うん。まぁ、それに対しては俺もめんどくさく感じるよ........穀瑠さんは?」

「私はどうでも良い..........」

「ちょっと3人とも......もっと落ち着きを保ったほうがよろしいですよ。」

「.......い、いいよ、雛ちゃん。も、もうほっといたほうが......」



ごちゃごちゃ言いながら5人が入ってきた。

まるで遠足なようなノリで来ているが大丈夫だろうか?


「ん?......前から詰めろだってさ、さっさと座ろうぜ。」


最初に言葉を発していた赤髪の明らかに陽キャ感キラキラな男が、

ほかの4人に指示通りに座るよう呼び掛ける。

言われた4人は返事をして座っていった。


「.........ねぇ、賢雄君。」


そんな5人を見ていると、身をこちらに乗り出し小声で

俺に話そうとする夕夏の姿があった。


「なんか、あいつらいけ好かなくない?」

「まぁまぁ、初見で決めるのは......」


たしかに場違いの雰囲気を感じるがそんなに気になることでもない。

その5人も今は黙っている。

最低限のモラルと価値観は持っているらしい。


「ねぇ、アンタ今あの人たちのこと酷く思ってなかった?」

「........ううん?ぜんぜん。」


夕夏に問われた賢雄だが、無自覚なのか平然と答える。


「そう?けどさ..........見て。」


そう言って夕夏は賢雄に腕時計を見せるように手を伸ばす。


集合時間ぴったりになっていた。

賢雄は時計を見た後、音をたてないようにゆっくりと顔を上げる。


......それと同時に体育館に聞きなじみのある声が響き渡る。


「あ~、あ~、てすてす。きこえてる~?」


その声の主は、あのおちゃらけ怕維人のものだった。


怕維人は壇上でマイクを持ち俺ら八人に語りかけている。

まぁ、先生だから当たり前か、と賢雄は思った。


「いや~お集まりいただきました()()()()()の皆様、

 本校にお越しくださりありがとうございます。只今より会式しま~す。」


そんなあいさつで始まった入学式。怕維人はさらに話を続ける。


「俺のスカウト者三名に、パケット常連の名家『五法』から一人ずつの指名で計8名。

 これから元気にやっていきましょー.........はい!拍手!」


だだっ広い空間に線香の火のような

今にも燃え尽きそうな勢いの拍手の音が響く。


「..........ありがとうみんな、ノリがいいね.......

 あっ、えっと、この8人は推薦者なので、推薦者クラスに入ってもらいます。

 そして、え~と、行動志望が4人、サポート志望が4人のため........」


怕維人が話していた時、それは起こった。


「あぁ、分かった。早く済まそうぜ。」


切り裂くように、怕維人の話を邪魔するように入ってくる声。

あの最初の赤髪のものだ。


「せんせー、結局言うと、俺らは()()()()()とは

 別のクラスで別のカリキュラムで行動すんだろ。」

「.........まぁ、そうなるね?それがどうしたの吾車晋也(わぐるましんや)君?」


吾車と呼ばれた男は、椅子から立ち上がり怕維人を見上げる。


「だからか?.......普通の奴らを除いての推薦だけの入学式を行う理由。」

「察しがいいね。さすが『五法』の名家出身なだけあるね。」


普通合格者を抜いての入学式?

ふつうそんなことをする学校があるだろうか?


「........まぁ、俺たち教員側の見解は普通と推薦の差別化をしておきたいんだ。」

「なんでそこで差別するんだ?」

「..........今は話すべきじゃないね。場所と時が改まってからかな?

 さぁ、俺も話がしたいから座った座った。」


そう言われて不服な表情を浮かべながら吾車は座った。


確かに、不思議ではあるが納得はできる理由。

差別化をしたほうが後々なんかよいことでもあるのだろうか?


ここで賢雄はあることに疑問を抱く。


[.......けど、普通だったらそういうのって喜ばないか?

 なんであいつはあそこまで不満なんだ?]


そんなことを考えながら、賢雄は吾車が座るのを見る。


壇上の怕維人もそれを確認すると再度話始める。


「まぁ、言うことないし、いろいろかっ飛ばすけど.......

 俺の自己紹介をしよう、みんな知ってると思うけど俺の名前は七里怕維人だ。

 新しく1年推薦クラスを担当することになった。一年間よろしく!」


そう言い終わると、ぺこりとお辞儀する。

数秒頭を下げた後、顔を上げた怕維人はみんなに呼びかける。


「そんじゃま!早いけど教室いこっか?」


全員にそう呼びかけ、体育館から本校へ続く昇降口に向かう。

賢雄と夕夏はスピード感に取り残されつつも怕維人の後を追った。


よかったら評価よろしく。


不明点やアドバイス、感想、アンチコメも受け付けてます。

皆さんの意見をぜひお聞かせください。

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