兄の背中
「すず、大丈夫だったか?」
怕維人から教えられたルームナンバーを頼り寮の自室に入ると、
そこにはフリフリのワンピースを着鈴の姿があった。
「うんっ!大丈夫だったよ。
運転してくれた人も丁寧で、椅子もふかふかだった。」
「そうか......それならよかった。」
怕維人曰く鈴が乗った車は坂道と渋滞が少ないルートを通っていたらしい。
そのため遅くなるから早めに出発したが..........
こっちのほうが遅かったとは、驚いた。
「あっ、滑り台!滑り台大丈夫だったか?」
ふと賢雄は自分が猛スピードで滑り、ずっこけた滑り台を思い出す。
体が弱い鈴にあの滑り台は危険だろう。
「えっ?.......滑り台?........何のこと?」
まるで自分が発した言葉が意味不明のように返された。
「えっ、だって、滑り台で地下ここに来たんじゃないの?」
「........お兄ちゃん、さっきから何を言ってるの?エレベーターの間違いじゃない?」
「はっ?........エレベーターで、来たの?」
「....................うん。」
賢雄の思考が疑問と怒りに染まる。
賢雄にとってもあの滑り台は怖い思い出TOP5に入るくらいだった。
それを滑らなくて済むというエレベーターがあるというのに.............
ここで賢雄は次怕維人あの男に会ったら一発お見舞いすることを決心した。
しかし、その決心は思いの外すぐに決行されることになる。
その男はドアをいきなり開け、言い放った。
「賢雄~!、俺らの学校は特殊だからもう入学式始めるぞ!」
手にはこの学校の制服みたいなのが握られている。
「ほら、賢雄!」
玄関から投げられた制服をキャッチすると、賢雄は言い放つ。
「ありがたいですけど........
妹から聞きましたよ。エレベーターあったんじゃないですか。」
2割怒りを混ぜながら怕維人に聞く。
「...?...........!!、あ~!」
最初は意味が分からなかった怕維人も、遅れて理解する。
「いや、あれには理由があってね......伝統なんだよあそこを通るのは。
健常者の入学生はあそこを通ることが暗黙のルールみたいなものなんだ。」
「その伝統で死にかけたんですが..........?」
「まぁ、俺じゃないからね。理事長に言ってくれよ。
そんじゃ!体育館集合だからな、遅刻だけはすんなよ!」
「あ、ちょっ!」
賢雄が制止する声を聞かずに怕維人は出ていく。
残された賢雄、鈴、制服。
その中、鈴が兄に声をかける。
「まぁ、とりあえず着替えてきたら?」
「.......そ、そうだな。」
◇◇◇◇◇
「うわ~!きれいな制服!」
着替えてきた賢雄に鈴が明るい表情を向ける。
「...........たしかに........制服のデザインはいいな。」
そう言い、賢雄は自分の着ている制服に視線を落とす。
黒色のブレザーに真っ白いワイシャツ、
その上に薄い黄色のネクタイが明るい雰囲気を出し、
青黒く落ち着いた色のスラックスが清楚感を醸かもし出している。
「私、その校章好きかも。」
「これ?」
鈴に諭され賢雄がブレザーについている校章を見る。
すっきりとした青に、桜型のものだ。
さすが国立といったもので、制服も随分手が凝っている。
「...........そういえば今何時?」
「ん?今は14時だよ、集合一時間前だからね。もう行っててもいいんじゃない?」
「うん。俺もそう思うけど.........」
賢雄は心配そうな目つきで鈴を見る。
「.......!あ~、私は大丈夫だよ。
なんか、ヘルパーさんみたいのが来るらしいから。」
「そうなのか?」
「だから、気にしないで..........
鈴はそう言うと賢雄を玄関まで押し出し、ドアを開ける。
いってらっしゃい、お兄ちゃん!」
「...........あぁ、行ってきます。」
鈴は感じる。
兄の背中はとても大きく、とても偉大であることを。
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