突然の訪問者
結局両親は賢雄の前に姿を表すことはなかった。
車爆発の原因はエンジンにあったと調査で言っていた。
一日に二人も失ってしまった。
しかし、そんななかでも不幸中の幸いがあった。
それが鈴だ。
エンジンから一番離れて座っていた彼女は奇跡的に助かった。
しかし、一番は両親が運転席と助手席にいたことだと考える。
あの二人がいなければ爆破の勢いが鈴を襲っていただろう。
生き残った鈴だが、体にはやけどが残った。
また、やけどを負った体で抵抗力が落ち、病弱な体になってしまった。
今、鈴は家から一歩も外に出られない状態である。
しかし、一人になっていはlない。
賢雄は鈴を両親が残してくれた遺産だと思い、大切にしている。
そんなことを手を合わせながら考えていると、鈴が入ってくる。
「お兄ちゃん、ごはんまだ?」
「分かったよ。ったく、焦らせないでよ。」
キッチンへ行き、エプロンを付けた賢雄の視界にある紙が入る。
それは五か月前の怕維人の電話番号が書かれた紙。
それは冷蔵庫にずっと張り付けられている。
(誰かを守るために命を懸ける..........)
この紙を見るたび彼は考えていた。
あの時守れなかったものを、別のことで償いたい。
あの時何もできなかった自分を変えたい。
あの時、あの時あの時あの時あの時....................................
「お兄ちゃん?」
「えっ⁉.........あっ、どうした?」
妹に急に声をかけられ、驚いて振り向く。
「どうしたの?.........そんな苦い顔して?...........」
「................ううん。何でもない。献立を考えていただけさ。」
「そう?........それならすずオムライスが食べたいっ!」
「え~?昨日食べたろ?」
「また食べたいの!」
「しょうがないなぁ...............待っとけ。」
「うわーい!やった~!」
そうすると鈴はスキップしながら賢雄の視界から消えた。
「ふぅ~、やるか............」
賢雄は最後にちらっと紙を見ると、冷蔵庫から卵を取り出しボウルに割った。
一個ずつ丁寧に。
妹はそんな兄の姿を壁から心配そうに覗いていた。
◇◇◇◇◇
またもや時は過ぎ、1月になる。
お金がかからない公立の高校を志望とした賢雄。
そんな中でもアルバイトである新聞配達は怠らず、試験勉強に取り組んでいた。
[..........まだ、Bか.......]
賢雄はそう思い、模試の結果に目を向ける。
Bというのはこのまま現状維持で合格できるランクだったが、
賢雄はほぼ確実に受かるAでないことにショックを受ける。
仕送りをしてくれている叔父や、無理なアルバイトの応募を認めてくれたおばさんの
期待を裏切るわけにはいかない。
そもそもこの状況で高校に進学させてくれるというものがありがたいものだ。
賢雄はそもそも就職を考えていたが、叔父がそれにストップをかけた。
そのため、高校を目指しているのだが.........
「この高校やめようかな.........」
そう考えていたところに...........
「どうした?........高校選びで困っているのかい?」
雲を切り裂く風のような、すっきりとした声が部屋に響いた。
それは、8か月前に聞いたあの男の声。
「なんで、なんでいるんですか⁉...........七里さん⁉」
「やぁ!賢雄君おひさ!」
七里怕維人のものだった。
怕維人は賢雄の部屋のドアに身を預けながら、話を続ける。
「いや~、受験勉強に家事にアルバイトって大変だね~。
トリプルコンボじゃん!なにそれ俺だったら過労死すんな。」
「............どうして、ここが?」
学校から賢雄の個人情報でも聞いたのだろうか?
いや、それだったらチャイムを鳴らすはずだ。
家には鍵が閉めてあったはず.......
つまり、誰かが鍵を開けたということ。
賢雄自身が明けていないから、開けたのは...........
「ごめんなさい、お兄ちゃん。」
鈴が怕維人の後ろから顔を出す。
「すず........お前か?」
鈴は申し訳なさそうに首を縦に振る。
「お兄ちゃんがずっと見てた紙の番号に電話したの、そしたら.........」
沈黙が流れる。
数秒がたった後、沈黙を破る声が聞こえる。
「まぁ、とりあえずリビングで話をしようか。」
「あなたの家じゃないんですよ.......?」
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