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最後のピース

「ケヒッ、お前らふざけんなよ......」


銃口から溢れ出る白煙が辺りに緊張感をもたらす。

ほぼ丸腰の2人の背中に冷たい風が通り抜ける。


「動くなよお前ら、動いたら撃つからな。」


脅すように銃をチラつかせるマスク男。

それに対して2人はお互いを一瞥する。


刹那、2人は互いの手を押して反対方向へと走り出す。

いきなり動いたこと、反対方向に行動していること。

この2つがマスク男の銃に迷いを生む。


右に動いた賢雄、左に動いた晋也。

場所が違えど、目的は同じ。


「.....蛍光灯!?」


左右にある蛍光灯、それをどうするかは反射的に理解できた。


「ケヒッ、叩き割って暗闇にするつもりか⁉︎」


人間、特に子供が考えていることはすぐにわかる。

動作、癖、視線、全てが次の行動へとつながるピースになっている。

それを組み立てていけば、行動はパターン化されてくる。

そうなると話は早い。


[やられる前に潰す!]


マスク男は銃口を手負いの晋也へと向ける。

そして、人差し指をゆっくりと引き金にかける。


「じゃあな、ガキ。」


引き金を引く。


パンッという乾いた音が響き、銀の弾丸がそのあとを追う。

弾丸は晋也の背中へと一直線で飛んでいく。

そして命中......


するはずだった。


まるで待っていたかのように、壁を蹴り晋也が宙を舞う。


「ケヒッ?」


弾丸は壁に当たり、鋭い傷を残す。

結果として深夜には当たらなかった。


だが、


「ケヒヒッ!残念だったな。飛んだお前の負けだ!!」


物体は一度飛ぶと、軌道修正ができない。

なのである程度落下地点は予測することができる。


マスク男は予想を立て、落下地点に銃を向ける。

この銃の構造的にMAXが19弾。

それが2丁。

まだまだ余裕がある状態だ。

しかし、一度躱わされたという現状が

マスク男の不安という感情に拍車をかける。


「今度は確実に!」


足さえ撃ち抜いてしまえば、あとはどうとでもなる。


ところが、いつになっても晋也が降りてこない。


「はっ?」


マスク男が上を見上げる。

そこには......


「ふ、ふざけんなよ?」


トンネル中央に通っている電線。

空中に飛んだ時にそこに布を引っ掛け、

ブランコの要領で頭上を超える。

賢雄と晋也が考えたアイデア。


ブラフ。


目標のものに一直線で向かっているかのように見せかけて、

本当の目的を隠す。

賢雄と晋也はわざと視線を蛍光灯に向けることでマスク男を欺いたのだ。


「まっ待て!」


こうなったら予想もクソもなくなってくる。

目だけが晋也を追う。

その向かう先には………


「し、しんやぁぁぁ‼︎」

「わかってるわ、ノロマぁぁ‼︎」


同じように電線に布を引っ掛けた賢雄がいた。

賢雄も同じように宙を飛んでいる。

まるでサーカスの空中ブランコのように近づく2人。


「ま、まさか?」


マスク男の額に汗が滲む。

焦った男は2人が重なるポイントへ銃口を向ける。

男にとってそれはまるでスローモションのように見えた。

再度引き金に手をかける。


「「もう一度ッ‼︎」」

「ッ⁉︎」


賢雄と晋也の掛け声が重なる。

近づくとともに2人は足を互いに向ける。

互いの足が向かう先は、もちろん互いの足。

つまり…


「「いっけぇぇぇ‼︎‼︎」」


足裏と足裏が重なり、二人同時に蹴る。

さっき手でやったことを足で行った、ただそれだけ。

だが、足の筋肉量は腕の筋肉量より多い。

そのため、先ほどより速い。


「こ、こしゃくな”ぁ……」


足のリーチでタイミングが早まり、撃つチャンスを失うマスク男。

これにより動揺と焦りが生まれる。

銃口はガタガタと震えて標準がまともに合わなくなってきている。


(しかし、あいつらの目的はなんなんだ?)


さっきから何かしようとしているのはわかるが、

急に走りだしたり、飛んだりするなど撹乱するばかり。

もしかしたら時間稼ぎが作戦かもしれない。

ダムに行って作戦に加わった方がいい気がするが、

それはしない方がいいとマスク男の思考が止める。


(もし、こいつら自由になってケーブルカーに戻った場合……

あの怕維人バケモノがフリーな状態になってしまう。

それはなんとしてでも避けておきたい。)


なんとしてでもここでこの2人を殺さないといけない。

そんな責務がマスク男の中で芽生える。


しかし


そんな思考は次の瞬間消え去ることになる。


バチッ!

「⁉︎」


突如、周りが暗くなり静寂が訪れる。

前後左右の感覚が消え失せ、

まるで大きな箱の中に放り込まれたような気分になる。


聞こえるのは自分の吐息とガチャガチャと銃の中の弾が擦れる音のみ。

二人を完全に見失い、どこから攻撃してくるかわからない状況。

恐怖と不安が腹の内から湧き上がる。


いや、もしかしたら逃げるために停電を起こしたのかもしれない。

勝手な先入観は身を滅ぼしかねない。

こういう時こそ周りをよく見る観察力が大事なのだ。


(一体どこへ…………ん?)


突然、マスク男の視界に不自然なものが入る。

それは…


「ひ、光?」


遠くで輝く一筋の光だった。

ここで蛍光灯の全部が消えたわけではないのかという疑問が生まれる。

だが、自分自身がコレを否定する。

ここのトンネルの蛍光灯で使われているのは直接回路。

どれかが不具合を起こしたら全てが消えるようになっている。


だから、


「ケヒッ!そこかガキども?」


マスク男が握る拳銃から乾いた音が鳴り響く。

どうせあの二人が暗闇でも行動ができるように

ライトでも持ってきていたのだろう。

そうじゃないとありえない。


だが、マスク男の耳に違和感が流れ込む。


カンッ!

「……?」


音に不自然さを覚える。

人間でも蛍光灯、弾がどちらに当たってもならない音が聞こえたからだ。

人間だったら鈍い音が、蛍光灯だったらガラスが割れるような音が聞こえるはずだ。

しかし今聞こえたのは厚い鉄板に弾かれたような音。

明らかに違う。


まさか男がそう疑問に思い、もう一度光を見ると.....


「なんか、大きくなってねぇか?」


少しな変化だが、光が近く強くなった。


「はっ、お、おい、なんか....」


さらに、またさらにと光が近くなる。

その後、光は1つから左右2つへと変化していく。

そしてさらに大きくなる。


「お、ふ、ふざけっ‼︎.......ガハッ!」


突如、ものすごいスピードで接近した電車に弾き飛ばされる。

例えると並のジェットコースターが突っ込んでくるぐらいのスピード。


「ぐっ、オェッ!」


痛さで蹲りながら顔を上に上げると、

目の前にはこの状況を作り出した元凶がいた。


「......!!!...な、なんで、なんでここに...?」


目の前には車体前部のライトを光らせているケーブルカーが鎮座していた。


(なんでだよ⁉︎.....おかしいおかしいおかしいっ‼︎

なんで200mも離れてたものがここにいる⁉︎)


額に汗を滲ませて横腹を苦しそうに抑えるマスク男。

すると、何やらコツコツとした靴の音が聞こえてくる。

耳を傾けると、何やらケーブルカーの中かららしい。


「お、おい!だ、誰かいるのか?」


マスク男がケーブルカーにそう問いかける。

ところが、ケーブルカーは答えない。

ただ凛としてそこに居座っているだけ。

代わりに答えたのは.....


「おっつかぁれさーん!.....って、あれ?骨折れてる?」

「.......ケヒッ、さぁ、どうだろうな?」


ケーブルカーから降りてきたのは青黒い髪をかきあげる男の姿。

その男の顔には眼帯があった。


「七里.......怕維人....!」

「うぇ!俺ってやっぱり有名人?」


人差し指を自分自身に突き立て、

嬉しそうに両頬を上げる怕維人の後ろから2人の人影が現れる。


「この、クソガキどもが......」


賢雄と晋也だった。

今にもこの3人を殺したいところだが、身体が言うことを聞かない。

場所的に肋骨が折れたことを悟ったマスク男は、

2人に向けて銃を投げつける。


「うわっ!」

「ケヒッ、返してやるよ。」

「いや、そもそもお前が奪ったんだろうが.....」


手が痺れてしまいもう銃の標準も合わせられない。

そんな状態のマスク男はふとあることに疑問が湧いた。


「ケヒッ、どうせ刑務所にぶち込まれるんだ。

 教えてくれ、お前らが俺らをどう出し抜いたか...」

「いいけど....多分俺からじゃ説明できないから」


怕維人はそう言うと、スマホを取り出して何やら操作をする。

最後に画面中央部を押すと、電話の着信音が鳴り始めた。


「外部からの入れ知恵か?」

「うーん、半分正解って感じかな?」


すると怕維人はスマホをマスク男はと向ける。

その画面に映っていたのは....


【いいでしょう.......すぅ......教えますよ。】


ビデオ通話で映し出された蜂の姿があった。


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