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一途の希望

通信は賢雄と晋也が何もしゃべらないまま終わった。

しかし、2人からしたら蜂が考えた作戦は筋が良く通っていた。

そして、理解する。

そのキーは自分たちなのだと......


「ケヒッ、あともうちょいか?」


マスク男がニヤリとマスク越しに不気味に笑う。

もうちょいとは、ケーブルカーの終点だろうか?

このままでは不味いが........

それは作戦がなければの話だ。


マスク男は安堵したのか、座って水を飲み始める。

運がいいことに賢雄たちに背中を見せている。


[[キタッ!]]


チャンスを確信した二人は、左右のの壁に尻を引きずりながら移動して

手首にまかれている布をコンクリートの壁を使って擦り始める。


2人に巻かれている布はマスク男が言っていた通り金属繊維でできている。

金属繊維を使用した布は強度が上がり、普通の布と比べて明らかに強固になる。


だが、それに対して弱点が存在する。

それは()()()()が存在することだ。

金属(鉄板など)のままだと時間がかかるが、

金属繊維となると話は変わってくる。

そのため素早く曲げられたり、ねじられたりすると簡単に切れる。

このアイデアを蜂は手をこすり合わせることで得たのだ。


たが、金属繊維と言っても合金を用いている。

なので、

多少は音がでるが、解こうとして暴れているようにしか見えない。

そして、マスク男のこの布に対する謎の慢心によりこちらを注意していない。


[けど........硬いっ。][クソがッ!.......確かに自慢するほどではあるぜ.......]


一生懸命にこすっても、多少手を動かせるようになっただけである。

けど、それで十分。


賢雄は晋也の後ろに回り込むと、布の結び目を探し始める。


[なに、しやが.........]


晋也がもどかしさに体をよじろうとすると、

その時にはもう手は自由の状態となっていた。


[はっ?.......こいつ一体何を......?]


晋也は目を丸くして驚く。

なぜならこれほど強固な結び目は、

何か特殊な結び方をしていると思ったからだ。


賢雄には体が不自由な妹がいる。

その妹に靴ひもを結ぶ練習に付き合わされていた時、

からまって妹自身で解けなくなった紐を代わりに解いてあげていた。

その経験が生きたのか、賢雄は後も簡単に解いてみせた。


[早くっ!気づかれる前に...]


賢雄がそのような意図の視線を晋也に送る。

それに気づいたのか、晋也は賢雄の手首に飛びつく。

後ろで両手に触られる感覚に少し動揺しつつも、賢雄は全力で腕を上げる。


ジャージ越しにアスファルトが賢雄の体を蝕む。

ザラザラとした表面。

そこに2人のジャージの擦れる音が反射する。


[早くっ、早くっ!]


賢雄は聞こえるはずもない心の声を吐露する。


晋也は賢雄のように何かを解くことは得意ではない。

だが、助けようという意志は有り余るほどにあった。

たとえそれが憎っくきライバルだったとしてもだ。



突如、何かが切れる低い音が賢雄の耳に届く。



「えっ?」


あっけに取られて不甲斐ない声が布越しから空間に響く。

恐る恐る後ろを振り向くと、そこには...


「……‼︎」


最初は暗いためよく見えなかったものが段々と形を成し、

賢雄の目がそれをとらえる。

鈍い赤色の水が下へと流れている。

それは、晋也の両手から溢れ出ていた。

賢雄はもう一度大きく目を見開く。

目の前にはボロボロになった手をブルブルと痙攣させている晋也。


そう、晋也は賢雄の手首に巻かれていた布を手で取り除いたのだ。

もちろん合金製の金属繊維を引きちぎるのは不可能である。

だが、結び目を軸に解くように引きちぎることは可能だろう。


[し、晋也っ!.....手、手が...!]


ところがその行為は晋也の手に多くの切り傷をつけていた。


「んっ、はぁ!.....晋也っ!」


賢雄は自分の口元を覆っていた布を解くと、晋也の両手首を掴む。

震えが止まらない晋也の手。

それを生身で感じるとともに賢雄の背中には冷や汗が流れる。


「......んっ、はぁ!....い、いっでぇ.......何見てんだっ、早くするぞ‼︎」

「け、けど、お前その傷......!」

「大丈夫、こんなん切り傷だ。」


口元が自由になったことで話せるようになった賢雄は

会話をするため晋也の首の後ろに手を回し、結びを解いた。


晋也の心配をした後、賢雄はマスク男へと意識を向ける。

男は誰かと連絡をとっているのかスマホを耳元に当てていた。

先程の会話も小声で興奮していたため声が響いてしまった。

それでも気づかれなかったのは電話していたからだろう。


「晋也....見て、チャンスだ。」

「あっ?」


賢雄は晋也の肩を叩き、マスク男を指差す。

そんな晋也は疑問に思いつつも、

賢雄の指す方向を見てマスク男の現状と蜂の作戦を重ねて思考する。


「おしっ、今すぐ取り掛かろう.....」

「ざっけんなぁぁぁぁ!!!!」


賢雄が深夜に呼びかけた途端、晋也が布をしならさマスク男をぶっ叩く。

不意をつかれたマスク男は目測7mほど吹っ飛ばされる。


「つってぇ‼︎.......なにっすんだよっ‼︎てか、どうやって解いた⁉︎」

「ちっ!なんで気絶しねぇんだよ...」


「な、な、何してんのぉぉぉ⁉︎」


賢雄が戦闘中だと言うのに白目を見せて卒倒する。


ぶっ叩かれたマスク男は、マスク越しで見てわかるほど顔が赤く染まり、

体をプルプルと振るわせていた。


[あっ、終わったー。]


勧誘が心の中でボヤく。

明らかにチャンスを逃してしまった。


「えっ、ちょ、待って、本当に何してるの?」

「はっ⁉︎......だってここで倒しといたほうが後々楽だろ?」

「いや、そうだけども‼︎」

「て、てめぇら.....」


くっだらない会話に意識が入っていた2人の間に光が通り過ぎる。

それは速く、鋭い。

2人はそれに見覚えがある。


「ケヒッ、ふざけんなよお前ら.....」


マスク男の腕には2人から没収した銃が握られていた。

銀色に輝く弾丸が賢雄たちを襲う。

不ここはトンネルで遮蔽物が無いため狙われ放題。

しかし、不幸中の幸いで晋也がやったように布を

鞭のようにして反撃することはできる。


「あぁ、もう!晋也のせいで全部が崩れかけてるからね。」

「うるせぇ、お前がチンタラしてるのが悪い。」


ケンカの一歩手前まで来ている2人。

いつ殴り合ってもおかしくは無い。

すると、そこへ...


【.......2人とも。】

「「あっ...」」


イヤホンから蜂の声が出される。

その声は低く、硬い。

明らかに怒ってるのが感じ取れた。


「ふ、ふざけんなよ!晋也のせいで怒られそうになってるじゃん!」

「はぁ⁉︎なんで俺なわけ?」

【2人....来るよ。】


2人は蜂の言葉を理解して身構える。

そして、それに反応するように銃声がトンネル内に響き渡る。

直線上で飛んでくる銀色の光を飛び退いてかわす。


「ケヒッ、お前らふざけんなよ......」


マスク越しでもわかるそのさっきを受けながらも、

2人は正々堂々、真正面からぶつかり合う。


確かにこの時の2人は逆境だったが、それを感じさせない何かがあった。

よかったら評価よろしく。


不明点やアドバイス、感想、アンチコメも受け付けてます。

皆さんの意見をぜひお聞かせください。

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