蜂の思案
賢雄と晋也はいまだに視線を固定したままだった。
ケーブルカーの光は消えてしまった。
そう、もうここは漆黒の中である。
(クソがッ!どうなってるんだよ⁉︎まだそんなに時間経ってねぇだろうがッ!)
晋也が心の中でボヤく。
だが、心では違う。
先程まで見えていた生命線が絶たれ、絶望感と焦りが押し寄せてくる。
だんだん感じる感覚ーー
死
場数を踏んでいる晋也でも、震えが現れ始めた。
その状況はサングラスを通して蜂にも伝わっていた。
[このままだと.....まずい。]
コミュニケーションが取れず、何もできない。
サングラスは行動役の状況が知れるだけで、
こっちから何か出来るわけではない。
まさに打つ手無しの状態。
[どうにかして2人に作戦を伝えないと......]
蜂は深い思考の沼に入り浸る。
この状況を打破しなければ、確実に2人は大変なことになる。
[なにか、何かっ!?]
こうして蜂はサングラスから送られてくる情景を再度よく見る。
周りのコンクリート壁、ケーブルカーの電線、左右の蛍光灯.......
絶対に何かあるはず。
物事には無限の使い道がある。
それを蜂の友達、夕夏は示した。
彼女は様々なものを武器として扱える。
そして賢雄の話では黒板消しを使用したらしい。
その視点は明らかに自分とは違うものだ。
[夕夏ちゃんの視点で!物事をどのように使うか.......
考えろっ!絶対に突破策があるはず。]
蜂はそう考えるうちに、手を組んでしまう。
自分でこれが癖なのかは分からない。
しかし、その癖はあることを蜂に与える。
「............なんか寒い。」
今は三月下旬。
今日の最高気温は25度。
そのため、良治は冷房を入れていた。
さっきまで車内に5人いたのでちょうどよかったのためが、
ある作戦のためワゴン車内には蜂ただ一人。
[集中できない.......冷房を切ろう。]
蜂は思って冷房を切る。
そして、両手をこすり合わせる.......
[......?.........あれ?]
蜂は何か引っかかる。
そして、再度手をこすり合わせる。
[..........暖かい。]
そう思った、のも束の間。
[あっ、あれ?....!!....こっ、これ‼︎]
蜂の頭で勝利の方程式が組みあがり始める。
それはより強固に、完璧になっていく。
[来た........これだ。]
蜂は自分の考えを頭の中で何度も趣味レーションをした後、
パソコンをものすごい速さで打ち始める。
ピッ!【うわっと、何なに!?】
ピッ!【.......どうした?】
ピッ!【蜂さんですか!?.........どうしましたか!?】
ピッ!【うわっ、何?......蜂?】
ピッ!【............びっくり。】
ピッ!【........通信だ、2人とも。】
ピッ!【う、うん。】
ピッ!【石鳥さんから.....?】
蜂がしたこと、それは全員への一斉通信だ。
「新美さん!.......すっはぁ........良治さん!」
【どうした?】【何ですかっ!?】
「進捗をっ!」
【......怕維人の言う通り上へに3人で向かっている.....あと41秒でつく予定だ。】
【私は今は単独で登っています。蜂さん以外のサポート役の人も登っている所です。】
「分かりました.......。」
恐らくダムに向かっているんだろう。
それならこっちの作戦とつじつまが合うかもしれない。
【おい、石鳥蜂。】
蜂の考えている最中に、新美の重く冷たい声が耳元に響く。
それはいつもの口調より、より冷酷さを含んでいた。
【全体への一斉通信........その重みは分かっているな?】
「.........はい、もちろん。」
普段パケットでは一斉通信は滅多にしない。
なぜなら通信をしている間は全員の動きが止まるからだ。
それでも行う時は全体への呼びかけなどの重要な時だ。
通信の中でも重みが違う。
しかし、それを知ってもなお蜂は止まらない。
それをイヤホン越しに感じ取った新美は蜂に語りかける。
【ならいい、何か作戦があるのだろう?】
「........はい。」
【じゃあ、話せ。】
「わかりまし――」
【えぇぇ!!......蜂、上に行ってないの!?】
邪魔が入った。
重要な場面でも空気を読めない。
そう、あいつだ。
【怕維人........お前は.....】
【えっ!?けど俺言ったでしょ!?全員を上連れてけって。】
【蜂さんは状況把握のために残したんです。】
【あっ、そうなの?じゃあ、いいや。】
この男、ホントに何がしたいんだか.......
「......いいですか?」
【あっ、うん!OK!!】
「............今から......ふぅ、話すのは....げほっ、机上のく........うろんかも
......すぅ、しれません。でも、救うの.........すぅ、これしかない。
これは.....すぅ、げほっ、怕維人せんせ.........の作戦を........
おっ、行いつつ、前衛の.......二人を開........げほっ、ほうするもの......です。」
蜂は息が詰まりつつ、涙目になりながらも言い終える。
そして彼女は話し出した。
◇◇◇◇◇
【なるほど、確かに机上の空論というだけのことはある。】
【けど、どれか一つが崩れたら成り立たなくなりますよ?】
どうやら新美と良治は蜂の案に否定的らしい。
しかし、やらなければいけないことがある。
「.......お願いです.......」
蜂は再度、癖で手を組む。
その言葉に感化されたのか、一人の男が賛成を示す。
【いいじゃん!やったろうぜっ!!】
怕維人だった。
その声には信頼と自身であふれていた。
【怕維人ッ!!】
【だっていいじゃん?】
新美の怒声を、怕維人が一声で消し去る。
そして、怕維人は全員に告げる。
【ここまでピンチなんだぜ?やるっきゃねぇだろ?】
【........だが、】
【チッチッチー、違うよ新美。やるの!】
【......分かった。】
新美が渋々賛成を示す。
それを聞き取ると怕維人は高らかに叫ぶ。
【じゃあ、勝ちに行こうか。】
一斉通信の人[上から]
怕維人
新美
良治
夕夏
思礼
悠馬
尚弥
雛
よかったら評価よろしく。
不明点やアドバイス、感想、アンチコメも受け付けてます。
皆さんの意見をぜひお聞かせください。




