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過去への後悔


あっという間に7か月が過ぎた。

赤や黄色が目立っていた校庭の木々の葉も全て落ち、

外は厳しい寒さをまとった風が通るようになった。


「ただいま。」


全身を防寒着に包まれている賢雄が家に帰宅する。


「おかえり、お兄ちゃん。」


玄関の扉を閉めると廊下横の扉からこえがする。


「おい、すず!ちゃんと休んでたか?」

「うんっ!しっかり、羊を数えてたよ。」

「そりゃそうか、ならよかった。」


洗面所で手を洗いながら、会話をする。

彼女の名前は服部鈴(はっとりすず)

現在小学4年生である。

茶髪の髪を後ろにまとめていてとてもかわいらしい少女だ。

しかし、顔にはやけどの跡があり、それが目立ってしまっている。


「おなか減ったろ?.....ちょっと待ってて。

 お父さんとお母さんに挨拶してくるから。」

「はぁ~い。」


手を洗い終えると、まっすぐ両親の部屋へと行く。

ゆっくりとふすまを開け、部屋の中に入る。

そして部屋の隅にある座布団に座り、手を合わせる。


「ただいま、父さん、母さん。」


チーンという音が消失感をあおる。

賢雄達の両親は賢雄が小学5年生の時に亡くなった。

父と母は同じ会社に勤めており、よく共に仕事をしていた。

そう、本当なら2人とも今でも共に仕事をしているはずだった…………


◆◆◆◆◆


ある日のことだった。

まだ、このアパートじゃなく普通の一軒家で過ごしていた時。

父と母が有休をとり、お出かけでもしようと言った。


「さぁ、どこがいい?どこでもいいぞっ!」

父にそう言われた賢雄は答える。


「よこはまっ!横浜行きたい!」

「あら~、横浜?少し遠くない?」

「すずも、よこはまぁ~!」

「よ~しっ!分かった。横浜に行こう!」


父は自由な人だった。

その日することをその日に決めるぐらいなのだから。


「じゃあ、準備するわね。」


母はそんな父の自由を理解し、尊重する人だった。

それは子供から見ても分かるほど二人は仲良しだった。

そんな2人が.........


準備を終え、しばらくすると父が駐車場から車をとってきていた。


「おっしゃ、いくぞ!乗れ~!」


母はトランクに荷物を詰め込み、助手席に乗った。

一泊するので、着替えが入ったバックはかさばっていた。

そんなバックを見て、賢雄は思い出す。


「あっ.........父さん、母さん、俺忘れ物したわ。」

「何忘れたんだ?」

「ゲームだよ。すぐ取ってくる。」

「あっ、多分勉強机の上にあるわよ。」


賢雄は自室に向かって走り出した。

階段を駆け上がり、自室に入る。


「あった!」


自身の勉強机の上にあるゲーム機に目が入る。

それを手につかむと走りだす。

しかし、焦りすぎたのか階段を踏み外し転げ落ちる。


ドンッッ!!!!


「イってぇ~......」


幸い足や手はけがを負っていなかった。

だが、立った瞬間に足首に痛みが走る。


(なんだ?ひねったのかな?)


そんな風に考え、びっこを引きながら玄関のドアを開ける。


「母さん、ごめんっ!......足ひねちゃ............た?」


言葉が詰まる、いや、出てこない。

出てくるはずがない。


皮膚から脳に伝わる、熱いという異常。

今は12月、熱いわけがない。

皮膚とともに目からも伝わる情報。

賢雄はそれを排除しようとする。

しかし、ショックで思うようにできない。


当たり前だ、なぜなら................




さっきまで自分以外の家族が乗っていた車が燃えているのだから。




車から激しく上がる火。


「父さん?.......母さん?.......すず?」


全員呼んだが返事が返ってこない。

いつ?爆発音もなしに?


(まさか.......あのとき?)


そう、不幸にも車が爆発する音と

賢雄が階段から転げ落ちて尻もちをつく音が同時だったのだ。

そのせいで気づくのに遅れてしまった。


家族が........

目の前の熱が思考力を奪う。


(............救急隊)


遅れて出てきたその言葉に賢雄は焦る。

彼はリビングにある固定電話のところへ走ろうとする。

が、痛みがそれを邪魔する。


「がぁ....はぁ、はぁっ!、はぁっ!」


素早くまた一歩また一歩と動かす。

リビングにたどり着き固定電話を探す。


「ない、いつものとこにっ!」


固定電話のスタンドに電話がない。

火事場の馬鹿力とやらは脳にまで働くのか、急に思い出す。


「..............ホテル。」


そう、母がホテルの予約をするために電話を使っていたのだ。

賢雄は覚えのあるキッチンへ向かう。


「あった!」


冷蔵庫の隣の棚に、それはあった。

賢雄は乱暴につかむと......


「あれっ⁉......110?.......119?」


賢雄は混乱するが学校の授業を思い出す。


「レスキューのキューだから119かっ⁉........いや、そうだった気がするっ!!」


震える手でボタンを押していく。


プルルルル!


不幸中の幸いなのか消防とつながることができた。


「はい、火事ですか?救急ですか?」

「火事です!お願いしますっ!両親と妹を助けてくださいっ!」


その後覚えていたのは耳をつんざくサイレン音と

煌びやかな赤いランプの光だけだった。

よかったら評価よろしく。


不明点やアドバイス、感想、アンチコメも受け付けてます。

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