ピンチとチャンス
「で、あんた誰?」
怕維人が大男の喉元に銃口を突き付けながら言う。
その言葉は軽くも重くも聞き取れる言葉で、余計大男の恐怖心をあおる。
「はっ.....お、俺が何者かって?」
「そうだよ、あんた........っていうか、まじであんた等は何なんだよ。」
怕維人は見えるはずもない目で冷たい視線を向ける。
「マジで見えてんだろそれ........」
「どう思ってくれても結構だよ。」
大男が時間稼ぎをしようとしているのを見抜いた怕維人は、
淡々と話を終わらせる。
(早く捕縛したほうがいいか。)
パケットには敵を捕縛する、特殊なテープが任務前に支給される。
しかし、怕維人はそのスピードを生かすように少しでも体を軽くするため、
賢雄と晋也にテープを預けている。
怕維人は大男から目を離さずに、
後ろにいるであろう賢雄と晋也に背中で話しかける。
「賢雄、晋也、捕縛テープ使ってこいつ巻いて。」
「............」
「.......あぁ、そういうこと.....」
怕維人は何か察したように、次の言葉を言う。
「おい、うちの生徒放せ。このペストマスク野郎。」
「けひっ、ホントに耳がいいんだな。」
まるで死を呼ぶ医者のような恰好をしている男は、
賢雄と晋也の口をテープで塞ぎ、首に注射器を押し当てている。
「おっと、そこから少しでも動いてみろ。
かわいい生徒のドロドロの状態とご対面したいのか?」
「ん”んっ!ん“ん”んぅん”!!」
「ふふ、何言ってるかわからないよ、2人とも。」
怕維人は靴でコンコンと床をたたいて状況を把握する。
大男は以前と変わらず、マスクの男は車内から出ようとじりじりと動いている。
このままだと、2人は連れていかれるだろう。
「はぁ、ガチだっるい........」
そう言って怕維人は耳につけているイヤホンを、
賢雄と晋也とのグループ対話に切り替える。
『聞こえてる二人とも?』
『『!?』』
『あぁ、今は喋んないでバレるから。』
『...............』
『今から俺が言うことにYESなら靴で床をたたいて、NOなら何もしないで。』
怕維人が言うと、後ろからコンッという音が2回響く。
『very good!........そんじゃあ、今は電車の外?』
「コンコンッ!」
『なーるほーどね........下に戻ってるのかな?』
そう告げる怕維人の声に靴の音は反応しない。
(上か?..........下に向かわないってことはダムに仲間でもいるのかな?)
そんなことを思いつつ、怕維人は集めた情報を使って、
今の状況と対策を瞬時に組み上げていく。
(まずもって最初は、賢雄たちの保護かな。
そして相手はたぶん5人......その内の3人はたぶん上?
今すぐ向かったほうがいいけど........)
怕維人はそこまで考え、目の前にいる大男を見据える。
(こいつを野放しにするのは.........リスクがでかすぎる。
新見たちを戻して対応してもらったほうがいいか?
いや、さすがにそれは...........)
怕維人は深くため息をつく。
そして、チラッとケーブルカーの前方を見る。
窓ガラスや、天井が破壊され無惨な形となったケーブルカー。
しかし、前方はしっかりとケーブルとつながっていた。
「ははっ。」
怕維人は笑う。
この状況を全部ぶっ壊す、ある手を――
「ど、どうした?いきなり笑いだして、精神異常ってやつか?」
「........だんだん時間の稼ぎ方が雑になってるよ。」
怕維人はサラッとそう告げる。
こんな困った状況だが、たぶん皆が何とかしてくれるだろう。
こうして、怕維人は自分の手をイヤホンに当てる。
「あ~あ~........おっ、聞こえてる?
みんなのアイドルである、怕維人だよ~ん。
俺さぁ、今動けないからそっちに頼みたいことがあるんだけど.......いい?」
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