朝日が指す部屋で
東の空から上がってきた太陽が賢雄の目をくすぐる。
それによりばたっと起きた賢雄だったが、時刻はまだ5:45分だ。
周りの男子達を見るとまだ全員が眠っていて、
カーテンを開けるのも気が引けた賢雄は洗面所に行こうとする。
辺りを見渡すとまるで修学旅行状態なのか、
バックなどが散乱していて足の踏み場がない。
賢雄は幼稚園の頃にやったケンケンパのように飛びながら避ける。
やっとのことで賢雄は辿り着くと、
鏡の前に置いてある自分の歯磨きを手に取る。
水でよくすすぎ、毛を整えてから磨き始める。
これが賢雄の朝のルーティン。
例えばプロ選手が大会の時に落ち着くためにする独自のルーティンがあるように、
人は動きを習慣化させることでいつも通りのパフォーマンスをすることができる。
賢雄にいたって意識はしていなかったが、
ここでそれが功を奏して無駄に落ち着いている。
そのため、目の前の鏡はいつも通りの賢雄を映し出す。
「……………寝癖やば。」
歯磨きを咥えながら寝癖を直そうと、クシを探す賢雄。
そこへ横から手が伸び、クシを差し出す。
「こ、こ、コレかい?」
タジタジして言葉に詰まりながらも、賢雄にクシを渡した男。
静函尚弥。
マッシュの髪が揺れて見え隠れする目が物語る、隠キャ感。
この特殊な人たちが集まるパケ校(パケット高校をさらに縮めたもの)で、
唯一平凡そうな見た目をしている。
「ありがとう、静函君。」
賢雄は片手を立てながら感謝する。
「き、気にし…なくても…いいよ。」
そう言って、賢雄の隣で歯を磨き始める尚弥。
その顔は……………
「…………緊張してる?」
「えっ⁉︎」
意図せず出た大声に遅れて口を塞ぐ尚弥。
「そ、そうみ…える?」
「う〜ん、なんかビクビクしてる感じがしたから。」
賢雄はそう言ってありのままを伝える。
実際に今の尚弥は手先が震え、どこか遠くを見ている。
サポート役ではあるが相当緊張しているのだろう。
「……大丈夫?」
「あ、ありがと……けど…そ、そんな心配し…なくていい。」
前を向きながら答える尚弥。
常時ビクビクしている尚弥だが、今回はさらに磨きがかかっている。
そんな状態な尚弥でも覚悟は決まっているように見えた。
それは目だ。
遠くを見ているようでも、覚悟が決まった目をしていた。
言うならば、家で怕維人に入学を誘われたあの時の賢雄のようだった。
「…………が、頑張ろうね。」
尚弥からそんな言葉が投げかけられる。
こんな時に言う言葉はただ一つ。
「…………うん!」
その声によって残りの二人も目が覚めた。
◇◇◇◇◇
「おはよっさん!……さぁ、みんな、準備はできてるかい?」
そんな声がホテルのロビーに響く。
ホテル内で朝食を済まし、
チェックアウトしたところで怕維人が声をかける。
「ようやく今日が本番って感じだね。
先生は昨日夜更かししてるけどみんなはしてないよね?」
何してんだよと思いながらもみんなは返事をする。
その返事を聞いた怕維人は話を進めていく。
「今日は行動とサポートで別行動をとっていく。
行動の方は俺と新美が指示をとって、サポートは良治が指示をとるから、
わかんないことや、緊急事態は絶対に頼ること、いいね?」
そう怕維人が言うと、二人が前に出てきてみんなを見渡す。
「じゃあ、早速だけど行動役はこれつけようか?」
行動役の4人が怕維人の手の中にある4組のワイヤレスイヤホンを見る。
黒く光沢があるため高級感を感じるが、
怕維人はそれを一人一人に向かって投げつけ、話を続ける。
「このイヤホン万能でマイクついてるから、
両耳にこれをつけることでそれぞれのサポート役との会話や、
個人やグループでの連絡が可能になるからね。」
確かに見てみると、イヤホンの横にマイクにある
あみあみのようなものがあるため、これでできるのだろう。
「続いて……」
まだ続きがあるように怕維人は言うと、
バックからサングラスのようなものを取り出す。
「なんですかそれ?」
賢雄はサングラスを指でさして質問する。
今から行くところは日当たりが強いわけではないので、
サングラスは関係ないと思うが……………
「チッチッチ、賢雄くん考えが浅いね。
これは見た目はサングラスだけど、少し違うんだ。」
怕維人は賢雄に言うと、タブレットを取り出し画面を見せる。
そこにはサングラスから見える景色が映し出されていた。
「ったく、賢雄。サポート役が指示を出すって言うのに、
その状況がわからないと何もできないでしょ?
だから、これをつけてサポート役と視覚共有をするってわけ。」
ちょっと怒られてしまった賢雄が黙り込んでいると、
夕夏が怕維人に質問を投げかける。
「じゃあ、服は?……服はどうするわけ?」
夕夏の発言にみんながハッとする。
確かに今、賢雄たちは私服だ。
なんか専用の服でもあるのだろうか?
「えっ、ジャージ着ればいいでしょ。」
「えっ、ジャージでいいの?」
思わず夕夏がそんなことを聞いてしまう。
「だって、あのジャージって結構研究されて作られてんだよ。
どうすれば人体が最も動きやすいかってね。
実際に、男女で少し構造違うんだよ。」
生徒の驚く姿が楽しいのか、怕維人は喋りながら笑っている。
「とりま、着替えてきなよ。」
全員にそう言うと、怕維人はトイレを指差す。
「さぁ、トイレに行っといれ。」
ロビーに極寒が訪れた。
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