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誰かのためにできること


ガタンッと規則的に揺れる電車。

怕維人の下痢が治り、賢雄たちは富山地方鉄道に乗り立山駅を目指していた。

いろいろとトラブルあったが、ようやくここまで来た。


良治の言うとおりだと立山駅に着いたら

近くの『グリーンビュー立山』というホテルに泊まるらしい。

それを聞いてほっとした賢雄。

電車内でどのような部屋か考えようとしたところ........


[ち、近い..........]


蜂と体と体がぶつかるぐらいの距離になっていた。

そもそもこの電車自体が混みあっているため、座るとこうなっていしまう。

できるだけ蜂に触れないように、気を付けていたところに

その蜂自身から声をかけてくる。


「...........せまくない?」


その暗い青色に染まった瞳が賢雄を見つめる。

それはまるで常にだれかを心配しているような感じの色合い。


賢雄自身もわかっているが.........わかっているが!


「.............」


無視をして顔をそらしてしまう。

当たり前だ。

威勢がこの距離で語りかけてきて、挙句の果てに見つめてくる.........

思春期の男子にはこれほど恥ずかしいことはないだろう。


そんなこんなで無視する賢雄を不思議に思い、蜂は賢雄の肩をたたく。


「..........ぅ.....」


今度は変な声を上げて、肩をぶるると振るわせる賢雄。

ここでもし夕夏だったら、面白がってしつこくしてくるが......


「...........寒いの?.......」


蜂が首を傾げながら尋ねてくる。

おそらく「そんなに身震いして、寒いの?.......大丈夫?」と言いたいのだろう。

そう予測した賢雄はそれだけでも返事をしようと顔を向けようとすると........


「…………ん?」


ばさぁと上から何か覆いかぶさる。

疑問に思っている賢雄が、それを取って見る。

その正体はもこもことしたコート。

明らかに女性用だ。

そしてそれは見覚えがある。

そう、今隣にいる蜂のものだ。


「えっ..............」


賢雄が驚いて蜂を見ると、彼女は確かにコートを脱いでいた。


「えっ、ちょっ、何して........」

「着てて。」

「えっ?」

「着てていいよ。」

「わ、悪いよ!それに、蜂だって寒いでしょ?......ほら。」


サクッと畳んで返そうとする賢雄。

しかし、それを止める蜂。


「風邪はダメ。」


たった5文字でありながらも思いが伝わり、申し訳なくなる。

この状況をどう打破しようか考えていた賢雄に、一つ作が思い浮かぶ。


「じゃあさ..........」


そう言いながら賢雄は自分の身につけているマフラーを蜂に掛ける。


「これでおあいこだろ.........?お前にも風邪をひかれたら困る。」


そう顔を赤めながら言う賢雄を蜂はじっと見る。

じっと見た後、


「.........ふっ、ふ。」


我慢できずに吹き出してしまった。


「な、何だよ。」


さらに恥ずかしくなる賢雄がぶっきらぼうに言うと、蜂はスマホを見せる。


『カッコつけなくても良いんだよ?』


メモ帳に書かれているその文は賢雄の心をずだずたにする。


「........。」


黙り込んでしまう賢雄。

それに釣られて2人の周りの空気が静かさをまとう。

聞こえるのは電車内に響く周りの話し声だけ.......

そんな状態が十数秒続いた。

居心地が悪くなったのか分からないが、ここで蜂が口を開く。


「...........なんで?」

「えっ?」


唐突に言われたなんで?という言葉。

その三文字が賢雄を思考の渦に巻き込む。


「なんでって..............何が?」


賢雄が蜂に問うと、蜂はスマホを取り出しポチポチと文字を打っていく。

普段は紙でやり取りしているため新鮮さを感じる賢雄。

そして、打ち終わったのかスマホの画面を見せてくる。

そこに書かれていたのは.........


『何でこの学校に入ったの?』


という文が簡潔に書かれていた。

その文は、なぜ賢雄はパケットを目指しているのか.........

そうとも読み取れる。


この話題は蜂にとっては「今日いい天気だね。」ぐらいのテンションなのだろう。

しかし、賢雄にとってはあまり話したくはないことだった。

誰が言えるだろうか、復讐のために入りましたと........

とても胸を張って言える内容ではない。


「.........う~ん......カッコいいからかな?」


賢雄は苦笑いをしながら答える。

言ったところで何も変わらない。

そのため、言う必要性が全くない。

これは自分の中に秘めておこう。そう思ったが.............


「..........噓つき。」

「へっ?」

「絶対うそ。」

「.............何が?」


賢雄はそう言って首をかしげていると、蜂は人差し指を賢雄の鼻に押し当てる。


「イタっ、ちょ、なにして.........」



「..............ごまかしてる。」



少し潤った青い瞳が賢雄の目をじっと見つめる。


「ご、ごまかしてなんかないよ!」


そう弁解するが、蜂はもう確信してしまっている。

そのため左手で賢雄、右手で自分を指すと.........


「........ペアだよ。」


四文字、たった四文字つぶやいた。

しかし、その言の葉は賢雄の心に深くつきささる。

まるで賢雄の心を葉の先でくすぐるように.......


蜂はその間も賢雄をじっと見つめる。

見つめて、見続けている。


「.......言って。」


最後にひと押しそう言う。

ふわっとした優しい言葉の数々、それらが賢雄の心をもみほぐしていく。


「.............はは……笑うなよ?.......たいした話じゃないんだ.......」

「うん、それでも........」


賢雄は話し始める。

崩れた過去とこれからの未来のことを..........


◇◇◇◇◇


賢雄は話していた。

永遠と感じられるバスの中をさまようように話す。

その一つ一つを隣にいる少女は優しく相槌を打ちながら聞いていた。


「........な?.......たいした話じゃないだろ?」


すべてを話した。

家族のことWITAのこと、そして今までの自分のこと。


中学校でやった心の授業のようにはいかず、

話しても心は軽くなるどころか、重くなっていた。

そんなどこか暗い表情をしている賢雄を蜂はじっと見つめる。


「.........尊敬する。」

「.............そうか?」

「うん、とても.........」

「復讐なんてみっともないと思うけど........」


賢雄は申し訳なく思いながらそう言う。

しかし、蜂は考える。


「そこじゃない。」

「.......どういうこと?」


蜂の言った言葉に疑問を抱いていると、蜂は素早くスマホに打ち込む。



『家族のために頑張っていることだよ。』



蜂は考える。

朝早く新聞紙を配り、自分も学校があるのに妹の世話をして、

さらには寝る間も惜しんで公立の学校に行くための勉強を続けた。

蜂自身には到底できないことだ。


そもそも持ち合わせている物自体が違うのだろう。

そんなことを考えていると、自分がばかばかしくなってきた。


「.........そ、そうか?」


恐れながらも賢雄が聞いてくる。


『うん、賢雄は頑張ってる。』


蜂はそう言って賢雄の背中をポンポンと2回優しく叩く。


「はは、ありがとう。」


賢雄が小っ恥ずかしく言う。

女の子に励まされるなんて、賢雄にとってはこれが最初のことだ。

そんなことを考えるとさらに恥ずかしさに拍車をかけた。

その姿をじっと眺めていた蜂は、少しためらいながらも話し出す。


「..........賢雄」

「ん?」

「..………あのね、わたし......」


蜂も話す。

まるで自分の過去を紐解くように......


よかったら評価よろしく。


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