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裏への扉


キーンコーンカーンコーン‼

風通しの良い素晴らしい天気のなか、校庭にチャイムの音が鳴り響く。


「おっし!ちょっくら一本行ってくるわっ!」


そんなことを言い50メートルトラックをゆびさす男。

名は服部賢雄(はっとりけんゆう)という。


中学3年生である彼は今、体力テストを受けている。

とても活発で頭もまぁまぁな、いたって普通の.........ではない。


ピッ!笛の音と共に賢雄は走り出す。

彼の走りはまるで風を切るように速かった。

隣を走っていた友人は6メートルぐらい後ろにいる。

別に友人が遅いわけではない、賢雄が速すぎるのだ。


「賢雄、5.8な。」


賢雄がゴールすると、ゴールライン横の先生が賢雄にタイムを言った。

言ってる先生も先生だが、これが当たり前なのかしれっと言っている。

大体5.8秒は全国の短距離走でもぶっちぎりレベル。


そんなバカに足が速い賢雄。

彼の快進撃はまだとまらない。


その後の立ち幅跳びも325センチ、長座体前屈は78センチ。

もうお分かりだろう。

彼はこの宮下中学校で神童と呼ばれている男。

中1はもちろん、中2でも体力テスト全国一位を誇る。


「これで一通り終わった?」


一緒に種目を回った友人に賢雄は問う。


「あぁ、全部終わったぞ.....っていうか、相変わらずすげぇな。」


友人はそう言い賢雄が手に持っている記録用紙に目を落とした。

全部の項目がAの評価であり、このままいけば三連続全国一位もあるだろう。


「いや~今回どうかな.......なんか心配になってきたわ。」

「ふざけんなよ......俺がお前の記録だったらみんなに自慢しに行くわ。」


県有自身は、昔見させてもらったお手本の動画とかけ離れているため、

あまり自信がなかった。

それでも、友人は鼻息を荒くしているが、そこに体育教師から声がかかる。


「賢雄!お前もう最後のあいさつしなくていいから校長室行け!」

「えっ、俺なんか問題でも起こしました?」


そう先生に言われて焦る賢雄だが、心当たりは何一つない。


「いいから、行け!」


先生はそう言うばかり。


「あちゃ~、なんかしたか賢雄?」

「え~?俺何も心当たりがないんだけど......」

「まぁまぁ、胸に手を置きながら校長室でしかられて来い。」


そう言い友人は賢雄の背中を押し、カラーコーンを片付けに行ってしまった。


「行かなきゃ..............ダメなのか.......?」


賢雄は怒られると落胆している。

顔色は先ほどと違い、蒼白になっている。


顔色的にいかにも校長室より先に向かうところがあると思うが………


彼は昇降口で靴を履き替える。

その間も友人からのアドバイスを忘れずに、ずっと胸に手を当て自問自答。

しかし、ぶつぶつ言っている間にもう校長室の前まで来てしまった。


「なにも..............やってないよな?」


賢雄は自分に再度問いかける。


「まぁ、最近やったことは寄り道ぐらいだし怒られないだろ。」


そんな気持ちで賢雄はドアを3回ノックする。


「どうぞ。」


間髪入れずに返ってきたその声に怖気づくもゆっくりとドアを開ける。


「し、失礼します。」


顔をドアから少し出し中を覗くと

向かい合って校長先生と黒い服を着て眼帯をつけた

暗い青髪の細身の男が座っていた。

眼帯の男の後ろにはサングラスをかけた屈強な男が二人、仁王立ちしている。


「さぁ、服部君こちらに座って。」


校長先生に誘導され、隣の椅子に座る。

なんだか指導とは違う感じにびくびくしつつも賢雄は聞く。


「あの~..............僕はどんな用件で呼ばれたのでしょうか?」

「あっ、別に怒ってるわけじゃないよ、服部君。

 少し用があってね.......では後はよろしくお願いします。」


気遣ってくれたのか校長先生がしっかり目を見ながら話してくれた。

そして目の前にいる眼帯男に後を託す。


「....ん”っ、ん.......まずはごめんね急に呼び出して。」


咳払いをして話し始めた眼帯男はそう言って頭を下げる。

すると後ろの二人も同時の頭を下げる。

それに賢雄が驚いていると、眼帯男は話を進める。


「まず、自己紹介からだね......僕の名前は七里怕維人(しちりはいと)っていうんだよろしくね。」


明るく爽やかな声であいさつしてきた怕維人は賢雄へ手を伸ばす。


「あっ、よろしくお願いします。」


ワンテンポ遅れた賢雄が怕維人の手をつかむ。


「........うん。間違いないね。」

「?」

「あぁ、ごめんね。少し手の骨格を確かめたんだ。

 運動できる人の手の骨格は似ているからね。」

「..........はぁ。」


意味も分からないまま納得していると、怕維人は真剣な顔つきになり

積極的に話をしようと前のめりになる。


「では、少々話がずれてしまったけど本題と行こうか........

 突然だけど賢雄君、君の過去のデータを見たけど

 君は体力テストで二年連続で全国一位を取っているね?」


唐突にそんなことを聞かれ、頭が真っ白になる賢雄。


「?......はい。そうですけど........」

「君...........その力を人の役に立たせたいと思う?」


突然すぎて頭の思考が止まる。


「まぁ、役に立てるなら。」


そう賢雄があっさり答えると、場の雰囲気が変わる。


「うん。じゃあ質問を変えよう..........

 君が将来その力を役立たせたとして、()()()()()()()()()?」


「えっ?」


室内の空気が凍る。

目の前の男は今『死』というワードを出した。

冗談?賢雄はそう思った。


「えっ、ちょっ、やだな~そんな冗談。

 僕あなたのこと知らないですけど、そんな冗談とか好きなんですか?」


賢雄がおかしくなってしまった場を濁そうとする.......が、


「うん。...........マジだよ。

 もう一回聞くよ?..............()()()()()()()()()()()()?」


空気がさらに重くなる。

怕維人から浴びせられる目線に賢雄は恐怖を感じる。

まるで応答次第では息の根を止められてしまうほどに。


「.........そ、そんなのできるはずない。だって僕には家族がいるし、友達もいる。

 僕だったら家族や友達が死んだらとても悲しいですし、

 僕は第一優先に身近な人の幸せを大事にしたい。

 人を助けて、誰かが悲しむならそれはもう()()()じゃありません。」


賢雄が真っすぐ、勇気を振り絞り叫んだ。

すると、怕維人の真剣な表情が崩れ、笑みがこぼれる。


「..............そうか。そんな選択肢もあるね……うん。いいよ、合格だよ。」

「..............?」


怕維人から言われた突拍子もない合格という言葉。

その言葉に賢雄の頭は混乱に陥る。


「ごめんね。ずっと君のこと試してたんだ~。」

「えっ?どういう.........」


急ににこやかな顔になった怕維人に賢雄が言う。


「これは入学テストみたいなやつでね、それに今、君は合格したの。

 まぁ、君の場合は推薦入学だから関係ないけど...........

 改めて僕の名前は七里怕維人。国立パケット専攻養育高等学校で先生をしてるよ。」

「...............ぱ、ぱけっと?」


今まで聞いたことのない単語に賢雄は困惑する。


「あぁ~、説明してなかったね。

 PCT、平和調査組織.......通称名、パケット。

 この世界で起こりうる日本に関係する問題を未然に防ぎ解決する組織さ。

 その組織のメンバーとなるための教育をする学校だよ。」


怕維人はペラペラしゃべりだしているが、賢雄は全く状況が読めていない。


「あの~、えっと、つまり、ぼくにその学校に入れと?」

「そうそう!吞み込みが早くて助かるね。」


怕維人はにこにこしているが賢雄はまた質問をぶつける。


「.......先ほど言った、問題を事前に防ぐって具体的には.......?」

「う~んとね。わかりやすいのはね..........

 あっ、2001年に起こった同時多発テロって分かる?」

「あ~、あの飛行機がビルに突っ込むやつですか?」

「そうそう。そのテロなんだけどほんとは4件じゃなくて

 23件起こるはずだったんだ。」

「23件⁉」


賢雄は眼を見開き怕維人を見る。

おかしい。そんなことは教科書に書かれていない。


「で、まぁ被害は出ちゃったけど4件に抑えたっていうやつかな。」

「それって日本関係なくないですか?」

「いや、バリバリ関係あるよ。」

「そうなんですか?」


そう賢雄が疑問に思っていると、怕維人が続ける。


「うん。アメリカがそれで没落すると経済が回らなくなって恐慌が起きるからね。

 あと最悪の場合ロシアが攻めてきて、第三次世界大戦もあったね。」

「そ、そうなん.......ですか?」


スケールがだんだんとでかくなり、脳が回らなくなってくる。

しかし、わかったことが一つある。

怕維人この男が言っていることは本当だ。

そして、もう一つ.......


「.......その任務を参加した人の中に、生きて戻れない人もいますよね.......」

その言葉を出すと怕維人の顔が曇る。

「.......うん。大勢いるよ。」

「そう....ですか。」

「でもっ!」


そう言って怕維人は立ち上がる。


「俺らがお前たちを絶対守り抜く、そして見届ける!

 卒業し、お前らがパケットで働き始めるその日までな!」


そういうと親指を立ててグットポーズを作る。

しかし、はっとした怕維人は話を続ける。


 「........まぁ、とりあえず大丈夫だよ。俺の視界内だったら絶対死なねぇよ。」


怕維人は恥ずかしそうにゆっくりと座り、一つ咳払いをした後に賢雄に問う。


「賢雄君、君の才能は申し分ない.......ぜひ入学を考えてくれないか?」



「..............い、いやです。」



賢雄は下を向き、暗い表情で答える。


「僕には......!」

「あぁ、いい!全部言わないでっ!」


賢雄の話を遮り、怕維人が耳をふさぐ。


「まぁ、なんだ?......

 家庭の事情とかもあるし、まだ5月だからいきなりっていうのもね。

 君には僕と違って時間はたっぷりある。

 君の人生だ。君が自分の道を決めたほうがいい。

 それでもっ!もしっ!興味がわいたら......」


そういうと怕維人は紙を取り出し、何かを書いた。


「はいっ!これ俺のTEL番!電話してね。」

電話番号を賢雄に渡すと怕維人は立ち上がり......


「それでは失礼します。」


挨拶をして校長室から去っていった。


「........先生、失礼します。」


用がなくなり、居心地が悪くなった賢雄は退室しようとドアを開ける。


「待って、服部君!」


その背中を校長先生が呼び止める。


「..........君の事情も分かっている。

 それでもっ!ぜひ考えてみてくれ!」

「..............検討しておきます。」


そう言い、賢雄はドアをゆっくり閉じた。

ドアからは寂しそうなきしむ音がしていた。


よかったら評価よろしく。


不明点やアドバイス、感想、アンチコメも受け付けてます。

皆さんの意見をぜひお聞かせください。

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