ミスは後々に首を絞める
「........うっ、」
青い顔をしている怕維人は手で口を押さえて、吐き気を抑える。
「なによあれ........あんなんが本当に自他ともに認める最強なの?」
その姿を見ていた夕夏が引いたような目つきで怕維人を見る。
その隣にいた賢雄も苦笑いで答える。
「ん~.....実際どうなんだろうね?」
どう見てもあれが最強だと思うことが二人にはできない。
◇◇◇◇◇
富山空港からバスに揺られること25分。
その25分の間で怕維人は車酔いをしてしまったのだ。
よりにもよってこの場所、富山駅は人通りも多い。
ずっと下をうつむいている怕維人を駅の窓から、または通りすがりに見る人々。
明らかに特殊部隊という秘密さを丸無視した公開処刑。
そこに良治に頼まれて薬を買いに行った妹の思礼が、
駅近くのドラックストアから帰ってくる。
「思礼!......薬買ってきた?」
「うん........はい、兄ちゃん。」
思礼は袋から薬を取り出し、兄に渡す。
渡された薬を慎重かつ素早く開けた良治は、怕維人に水と薬を飲ませる。
「........んっ、ぱぁっ....はぁ、生き返るぅ~」
怕維人完全復活。
あと数秒遅れていれば怕維人は口から虹が流れ出ていただろう。
「だ、大丈夫ですか?」
「任せろ、余裕の大丈夫モーマンタイだよ。」
「余裕ではなさそうでしたが..........」
しかし、その姿を見てみんなは安堵する。
そして駅のホームに向かおうとしたとき、
鳳翔が疑問の声を上げる。
「凄いですね.......こんなに即効性があるなんて。」
足が止まる。
みんなが鳳翔を振り向き、固まる。
普通、酔い止めには即効性は無く、一時間後くらいから効き始める。
しかし、怕維人は一瞬で治った。
明らかにおかしい。
みんなが恐る恐る視界に入れた物は...........
「..........えっ、私?」
「思礼、お前何の薬買ってきた?」
「え~と、たしか..........」
そう言って思零はポケットから薬が入っていた袋を取り出す。
そこに書かれていたのは.........
「あっ、下剤だって.......効きがいいんだね。」
ぎゅるるると怕維人のお腹がなった。
◇◇◇◇◇
賢雄たちが酔った怕維人の手当てをしていたころ。
「はぁ~あ”.........いつまでこのカメラ見続けてたらいいの.......」
ここは警察庁の全国治安維持部、別名PUC。
そこで、モニターとにらめっこ状態の女。
名前は凩紅葉。年齢は26歳のもうすぐアラサーというべきところだ。
そんな紅葉は先週からある場所の防犯カメラをほぼ不眠不休の状態で見ていた。
その場所こそ賢雄たちが行く、黒部ダム周辺地域の防犯カメラ。
約24台あるカメラを10秒ずつ切り替えながら見ていく。
目にも心にも悪影響がある仕事内容だ。
その業務内容にイラつきつつも、すきを見計らってスマホを開く。
「......ったく..........なにが『ブラックラーメンなう!』だよ⁉︎
.......あ”!?.....ふざけんのもたいがいにしろよ、あのバカ眼帯が.......」
しかし、あまりに大きい声だったので、
奥にいる上司から「紅葉!」という怒声が飛んでくる。
それを無視して、見ていたものは怕維人から50分ほど前に送られたメールの内容。
『ブラックラーメンなう!』という文言の下にはみんなとの
食事の画像が添付されている。
それを見て深いため息をついた紅葉は、またモニターに視界を移す。
何も変化のないモニター。
上からの命令で『怪しい集団』見つけたら、
すぐにパケットに報告せよと言われている。
だが、一向にそれらしきものは現れない。
めんどくさくなった紅葉が、この後どうサボろうか考えていたとき.......
ピロンッ!という軽快な音がスマホから鳴る。
奥からまた怒声が飛んでくる。
やっべ!と思いつつ、携帯の電源を消そうとしたところメールの内容が目に入る。
送り主は小早川新美、高校の時の先輩からだった。
その内容は........
『あの怕維人バカが下剤を飲んで腹を壊した。出発が遅れる...........すまない。』
新美らしい簡潔に書かれた文章。
それに紅葉は一週間ぶりに笑みがこぼれる。
『ざまぁ、って言っといてくださいw』
そう本音を返信する。
少し笑ったことで疲れが飛んだ紅葉はまた仕事を始める。
仕事に戻るまでの時間、およそ30秒に満たない短い間。
ここでモニターを見続けていれば何か変わったのだろうか?
彼女は気づかなかった。
カメラを横切る集団を............
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