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行動の証明


「皆さん。今日は私が担当します。」


怕維人の真剣な話がみんなの頭の中で反芻される中、

座学の理科が終わってパケットの授業が始まった。


今日は体を動かす訓練などではなく、普通の知識的なものらしい。

それを教えるのが今教室の前でチョークを握っている男。


やつれたような顔で目の下にはクマがある、

いかにも限界感を感じる細身の男。


その男は全員が教室にいるのを確認して話始める。


「簡潔に自己紹介を......名前は穀瑠良治(こくるりょうじ)

 『五法』の一角、静函家の育ちです。そして.........」


良治は言葉を詰まらせると、驚きの言葉を発した。



「........そこにいる、穀瑠思礼こくるしれいの兄でもあります。」



全員が教室の端にいる思礼を見る。

その当事者である思礼は兄を軽蔑するような目つきでずっと見続けている。


「...........というわけです、よろしくお願いいたします。」


そう言うと良治は、深く頭を下げる。

そして頭を上げると.......


「少し、教材を廊下からとってきます。」


良治が廊下へ消えていき、また戻ってくるとき

腕には広辞苑級の厚さをした八冊の本を抱えて出てきた。


「.....ふぅ、.........では一人一冊どうぞ。」


その状況に全員が戸惑う。

あれが教材?

そう思いながら席を立ち、取っていく。


「おっも!.......バカ重たいやん!」


そう声を上げたのは晋也。

彼はようやく自分の机にもっていくと、椅子に座り一息つく。


「はぁ、はぁ、.......なんだよこれ?」

「........教材です。」

「んなこたぁ知ってるわ!」


晋也が良治につっこむ。

賢雄も持ってみるがなかなか重たい。

体感5キロはあるんじゃないだろうか?


それを賢雄も運び終わると、その前を蜂が通る。

重たそうにしていて、明らかな千鳥足........


「あっ.......」


蜂は教材により前が見えなかったため、賢雄の机の脚につまづく。


「やべっ!」


賢雄はあわてて蜂の体を支える。


「大丈夫か?」

「うん。...........ありがと。」


賢雄は本拾い上げ、蜂の机に置きながら声をかける。

見た感じ、けがはしてないようだ。


「大丈夫ですか?」


心配した良治が声をかけてくる。


「はい。」「はい、平気です。」


二人が声を返すと、良治は元の場所へと戻る。

二人がそれぞれの座席に座るのを確認すると、説明を始める。


「まず最初にこの本は、行動役とサポート役のすべてが詰まった本です。

 私が教えることはこの本の中からでしかありません。

 あっ、置勉は可とします。......重いのでね。

 .......え~、次に1265ページを読んでください。

 .......開きましたね?

 ここページから300ページ先まで、ずっと得物のことが書かれています。

 ここに書かれていることは特に大事なことだらけです。

 皆さんは明日から富山で仕事ですよね?

 ですから、それまでにこの3()0()0()()()()()()()()()()()()()()()()。」



ん?

えっ?

い、今なんて?



「もう一度繰り返します。

 この300ページを明日までに頭に叩き込んでください。」


賢雄はここで全員の顔を見る。

全員がへのへのもへじみたいになっているのがみて取れる。

全員が理解できていないのだ。

そんな中良治が話す。


「流石に無理だと思う人もいるかもしれません。

 しかし、絶対に将来あなた達が覚えててよかったと思う日が必ず来ます。

 ………パケットの仕事はみなさんの思っているより危険で冷徹です。

 何人も人を殺します、しかし何人もの人を救えます。

 自分の枠の中の人たちを守るために、枠の外の人を殺すんです。

 この教材はそのためのものです。」



そう言うと、良治はみんなが持っているテキストを片手で持ち言い放った。



「みなさんはもうこの業界に入ってしまったのですから……………」



◇◇◇◇◇


ガチャと賢雄がドアを閉める音が聞こえる。


「………ただいま。」


寮の自室に戻ってきた賢雄。

それをいつもより落ち着いたテンポで鈴がやって来る。


「おかえりなさい、お兄ちゃん。」


鈴がそう言うが、賢雄は黙り込んだまま下を向いている。

昨日の件だとすぐ思う鈴。


謝りたい。


その言葉が先行するあまり、鈴は兄に言う。


「……お兄ちゃん。」「……鈴。」

「「⁉︎」」


兄弟が顔を見合わせる。

そして、



「「……ぷっ、はははは!」」



お互いが思っていることは一緒。

言うタイミングも一緒だったのだ。


「ごめんな…鈴。」


賢雄は申し訳なさそうに顔を下に向けてしまう。

だが、鈴はその顔を掴み上へと向ける。


「ううん、もともと私が悪いから気にしないで……

 そうだっ!今日ね、森さんが夕ご飯作ってくれたの。

 でね、作ったのがカツ丼だって、ふふ、森さんって変なの。」


いや、変じゃない。

知っていたら誰だってそれを作っていただろう。


「………鈴。」

「何、お兄ちゃん?」


悩みが消え去った明るい笑顔を賢雄へ向ける。

それに少し言うのをためらったが、賢雄は思い切って言う。



「明日から兄ちゃん富山に行くんだ。」




◇◇◇◇◇


空港特有のアナウンス音が響き渡る。


「さぁ、みんなは集まっているかな?」


怕維人はみんなの顔を見渡す。

すると、みんながみんなテスト前に一夜漬けしたようにクマが濃くついていた。


「ヘイヘイ、ガイズ!そんな体調じゃ、任務なんて夕飯後になっちまうよ。」


そう自前のサングラスの下から目を覗かせる怕維人。

そこに申し訳なさそうに良治が声をかける。


「あの〜、怕維人さん……実はですね………」


〜〜〜


「はぁ〜?……あのクソ本を覚えさせたのか⁉︎」


怕維人は驚いた目で良治を見る。


「申し訳ありません。」


すぐさま謝ると、そこに庇うように新美が入り込む。


「怕維人。元はというとお前がギリギリに言ったのが原因だろう。」


そう言って明らかに怕維人に非があると断定する。


「………ぐっ…」


まさにぐうの音しか出ないとはこのこと。

怕維人は新美に痛いところを突かれて瀕死の状態だ。


「………良治、気にするな。」

「はい、ありがとうございます。」


そう言って素直に新美に感謝する良治。

すると新美は賢雄達のほうを向く。


「瀕死の相棒に変わって私が指示を出す。

 が、……………ついてこれなければ置いていく以上だ。」


そう言うと全員を引き連れて搭乗口へ向かう。

一夜漬けのせいか搭乗口が変に見えてしまう。

まるで任務に立ちはだかる悪魔が口を開いているような錯覚に陥る。

だが、一歩一歩を踏み締め進んでいく。



全ては自分の行動が正しいと証明するために……………



よかったら評価よろしく。


不明点やアドバイス、感想、アンチコメも受け付けてます。

皆さんの意見をぜひお聞かせください。

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