表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/35

瞬見再現


「やぁ~!みんなおはよっさん!!」


朝の体育館は怕維人の場違いなテンション感に満たされる。

全員が眠たい目をこすりながら、怕維人に目を向ける。


「今日は前半と後半が入れ替わるからね。

 つまり、最初が射撃ね。みんな銃は持ってるかい?」


そう呼びかけるが、全員が当たり前のような顔をし銃を出す。


「よっしぃ!早速一人ずつ始めよう。

 あっ、昨日聞いたかもしれないけど、50点で課外プログラムね。」


怕維人が忘れていたように後に付け直すと、案の定で晋也から質問が来る。


「先生。............本当に50点なのかよ。」

「そうだよ。..........決して無理な目標ではない。

 自分たちがそれぞれの課題と向き合い、

 克服を繰り返すことができれば必ず突破できる。

 この訓練は忍耐性を鍛えることもできるんだ。」


そう言いながら、怕維人はリモコンを操作し始める。


「さぁ、まずはそんな君の番だよ。晋也。」


怕維人が晋也を指名する。

ゆっくりと前に進む晋也。

手は震え、足もちゃんと見ればしっかり踏み込めていない。

緊張しているのだ。

ゆっくりと時間をかけて台の前にたどり着くと、深呼吸をする晋也。


「大丈夫?」

「.......大丈夫だ。」

「この試験の結果で死ぬわけじゃないし、

 またあるから......そんじゃあ、よ~い.........」


ビィーという音が鳴り、晋也が勢い良く動き始める。

銃音が体育館に響き渡る。


[いつもより早い?]


賢雄は晋也の発砲音を聞いてそう感じる。

実際に30秒過ぎたあたりには28点だった。


パンッ!パンッ!音は鋭く、早くなる。

そして.......


ビィー!


「はい、置いて~。」


訓練終了の合図が鳴る。


「お疲れ~......記録はね、54点だったよ。おめでとう!」


54点、晋也は前より上げてきた。

顔を見るとほっとしたような歓喜の色が見える。


「よし!よし!やったぞぉ俺はぁ!」


一人が突破した。

これはほかの受験者からしたら、圧倒的な安心材料となる。

そのため.........


「いいねぇ!いいねぇ!今のところ7人連続50点達成じゃん!

 こんなに成功したのは11年ぶりじゃない⁉︎」


怕維人が満面の笑みで喜びをあらわにする。

あっという間に賢雄前の6人も合格した。

その6人はぎりぎりであるがは50点や、51点を取っていて、

全員が安堵の笑みを浮かべている。


「すごいよみんな!俺は君たちがやれる子だって気づいてたよ。」

段々と全員合格の希望が見えてくる。


だが、


「じゃあ、ラスト賢雄だね。」


怕維人が賢雄のほうに体を向ける。

『五法』達が喜びを分かち合っている中、

全員ががっかりしたような顔色で賢雄を見る。


「はぁ~、まじか、8人合格は無理だったか.......」


晋也は髪をかき上げながら冷やかすようにそう賢雄に向かって言い放つ。

しかし、そんな言葉を背に賢雄は台の場所まで移動する。

すると、心配したのか怕維人が声をかけてくる。


「大丈夫。落ち着け賢雄、怒りをコントロールするんだ。」

「.........?......怒ってませんけど?」

「あっ、そう?」


やはり、こういう時は何も考えずにリラックスすることが一番だ。

腕を振り、背を伸ばす。

あえて、深呼吸をしないことで自分の感情をコントロールする。

今現在1位は晋也の54点。

新美との約束を守るには絶対超えないといけない壁。

だが、それなのにも関わらずやけに落ち着いている賢雄。


「...........いいですよ。」


賢雄は今まで感じたことのない高揚感を抱えながら返事をする。


「おっし!分かった。.........よーい..........」


ビィー!という音が鳴り、賢雄が銃を構える。


ここから、体育館は伝説の1分間を送ることになることを、

1人を除いて知る由もなかった。


◇◇◇◇◇


ここはパケット高校[パケット専攻養育高校の略称]の職員室。

怕維人が先ほどの訓練のデータをパソコンを使って本部に送っている。


全員分のデータを送り終わり、天井を見上げる怕維人の頬に熱い刺激が走る。


「あんだよ.......お前かよ。」


顔だけを動かしながら見ると、そこにはコーヒー缶を持った新美の姿があった。


「なんだ?.......私では悪いのか?」

「いや、そういうわけじゃないけどさ........」

「なら、飲め。」


そういい、新美は怕維人の頬にコーヒー缶を押し当てる。


「あっ、つ!..........お前ふざけやがって。」


怕維人は新美からコーヒー缶をもらいながらつぶやく。


「.........そういえば今日はどうだった?」

「........?......どうって?」

「射撃訓練だ。」

「あ~、はいはい。そゆことね。」

「奴は、()()()()()()()?」

「..........ふ~ん。」


新美から問われた怕維人はニマニマと笑い出す。


「........な、なんだ?」

「いや、お前も気になるのかなってね?」

「........私が誰のこと言っているのか分かっているのか?」

「あぁ、もちろん........賢雄だろ?」

「.............」

「ほらビンゴじゃん!」


怕維人はパソコンをいじりだし、新美に賢雄のデータを見せる。


「........ふ、やはりこいつは()()()()か。」


新美はパソコンの画面をあきれるように見る。

そこには.........



『服部賢雄 射撃訓練  61点』



そこには、先日から60点上げた天才の結果がのっていた。


「.......なぁ、新美。」

「.......なんだ。」

「お前が俺を体育館によこしたのもこれが理由か?」

「...........なぜそう思う?」

「一回俺が賢雄にお手本を見せ、それを模倣(ダビング)させる。

 そうやって合格させようとしたんだろう?」


怕維人が新美に問い詰める。

すると新美は観念したように一言を発する。


「............さすがだな。」


そこまで言うと、新美はある数枚の紙束を置く。


「1年間でで50メートルが8秒後半から6.1に上がったバカがいるとうわさに聞いてな。

 その子の担任に体力テストのすべての項目の

 最高記録を出した動画を見せるように教育委員会を通して言ったんだ。」


すると新美は紙束をばらし、小6と中1のときの体力テストの記録を並べる。


「やはり、あいつは()()()()だったよ。」


怕維人は新美が出した記録用紙に目を落とす。

小6のときは50メートル以外は全て『C』評価なのに、

中1になったとたん全てが『A』にくつがえっている。


「..........服部賢雄.......生まれ持ちの記憶力の良さと洞察力、

 そして、ずば抜けた運動能力.......それらをもって可能になる.......



 一度見ただけで模倣ダビングが可能な、『瞬見再現(しゅんけんさいげん)』の持ち主。」



新美がコーヒーを飲みながらそう説明する。

怕維人も分かってはいたが、改めて聞き驚嘆する。

服部賢雄という男は末恐ろしい。

しかし、怕維人はコーヒーを飲み干し、隣にあるごみ箱に捨てるとこう言った。



「だが、まだ始まったばかりだ。生き残るか潰れるかはここから決まる。」



怕維人はそう新美に言い、パソコンを閉じた。


よかったら評価よろしく。


不明点やアドバイス、感想、アンチコメも受け付けてます。

皆さんの意見をぜひお聞かせください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ