姫様の戸惑い
「ぐ⋯⋯シュシュ。 上、下、右」
「焼きそば、たこ焼き、ラーメン⋯⋯」
「瑞稀、美羽。 ⋯⋯二人とも起きなさい」
「ぐ、うぇ? 朝?」
「ああ、ことね。 いただきますわ!」
「痛。 ⋯⋯今はもう昼休みよ。 美羽、私に噛みつかないで」
そうか、もう昼休みかあっという間だなぁ。 寒! そろそろ、教室に暖房をつけないと駄目じゃない?
「ご飯、ご飯! ですわ〜」
ミウミウは、歌を歌いながら教室から、出て行く。
ーー最近、昼休みになると、笑顔で飛び出して行くミウミウ。 どこに行っているんだろう?
「瑞稀。 ご飯食べなさいよ、じゃないと体が持たないわよ」
「えっ。 うん、ありがとう」
今やすっかり馴染んでしまった、学校の姫様。 たしか、二学期の始めは、クラスメイトが驚いていたよねーー
そう言えば、私が最後に『ことね』と話したのはいつだっけ?
私が体調不良だった時かーー
「⋯⋯『ことね』は、もういないのかな?」
「はあ。 ⋯⋯だからそれは、私が一番聴きたいわよ」
そうだよね、本人が一番心配だよね。 生まれた時から、ずっと一緒だったんだから。
「私が寂しくて、泣きそうな時⋯⋯『私』はいつも励ましてくれた。 ⋯⋯今だってそう。 なのに、最近あの子が遠く感じるの⋯⋯どうしてかしら?」
胸に手を当てながら、考えることねは、空を見上げながら問いかけている。 私は、その答えを見つけることは出来なかった。
「ふふふ。 校内バイキングは最高ですわね。 後は蛇口ジュースがあれば、よかったのに⋯⋯」
「ミウミウ。 また、変なこと言ってるの? ミウミウ一人でそんなこと出来る訳ないでしょ」
「クスクス⋯⋯ですわ」
突然、笑い出すミウミウに狼狽える私。
「⋯⋯瑞稀。 私には、協力者がおりますのよ。 それもたくさん! ですわ」
「なんだって! ⋯⋯買収したのミウミウ?」
「まあ! 瑞稀ったら、物騒ですわね。 私はただ、一声かけただけですわよ」
そう言うと、私の方を見て自慢気に笑うミウミウ。 するとそこへーー
「ああ、美羽殿〜。 忘れ物です〜」
「あれ? えっと⋯⋯はわわさん?」
「吉澤ひとみです」
「ひとみん! どうしたのだわ!」
「美羽殿。 こちらデザートです!」
そう言うと、はわわさんが取り出したのは、巨大なホイールケーキだった。
「わぁ。 いただきます〜 美味しいですわ」
「それは、よかった⋯⋯」
「美羽⋯⋯コイツに手懐けられたのね」
姫様が、つまらないものを見る表情で、はわわを一瞥しました。
「はわわ。 みこ⋯⋯川端さん、初めまして。 吉澤ひとみと申します」
「ことね。 モグ、ひとみんはいい子ですわよ。 モグモグ」
「⋯⋯そう。 貴方にとってはね」
なんだろう、この雰囲気? 私はお邪魔みたいだから寝ようかな?
「⋯⋯瑞稀。 なに寝ようとしているのよ。 起きなさい」
「⋯⋯え、いやだよ」
「倉石さん。 川端さんの言うことに従いなさい」
「えぇ? どうしようかな?」
「モグモグモグ。 ご馳走さまですわ! ふふふ、瑞稀⋯⋯この方こそ蛇口ジュース計画の協力者ですわよ」
なんだって! 私は姿勢を正してはわわさんを凝視する。
「君か! なんてことをしてくれたの! お陰でミウミウが調子に乗ったじゃない!」
「全ては⋯⋯の意のままに」
なんかぶつぶつ呟いて、こっちを見なさいよ!
「別に⋯⋯この件で貴方と会話する気持ちはありません⋯⋯」
「なんですの? 私はただ蛇口ジュースを設定したら『ことね』が喜ぶと思って⋯⋯実行しようとしましたのに」
「⋯⋯はあ。 美羽、たしかに『私』は喜ぶでしょうね、その蛇口ジュース」
「ですわ!」
「⋯⋯神子様信仰会に継ぐ。 今すぐに蛇口ジュース施工開始だ」
『全ては神子様のために』
え! なにこの集団? どこに隠れていたの? え、ちょっとやめて蛇口を破壊しないで! 駄目!
「⋯⋯まあ、瑞稀にとってはいい目覚ましかしら?」
「わぁ! 蛇口ジュースですわ! ⋯⋯これで私の夢の学園生活が達成されましたわね、オホホホ」
ちょっと、なんなんですかあの集団! どうしようこれーー
私は、完成した、蛇口ジュースの前で跪くのであった。




