文化祭責任者挨拶
放課後、私は生徒会室ーーではなく、校長室にいた。
なぜかって? それは、これからの来客を迎えるのにここが最適だからである。
この部屋の主である、校長は既にそそくさと逃げ出した。
ーーまったく、あの校長は威厳がない様だ。
身だしなみよし! さあ、出迎えに行くか。 私は昇降口に向かって歩いていた。 その時、目の前に背広姿の二人組が現れた。 一人は、私を見た途端に鋭い表情を浮かべる。 もう一人はニンマリと笑顔を浮かべていた。
ーー私は回れ右で帰る。
「おい、生徒会長殿。 校長室はこっちだぞ」
「あ、はは。 そうですねぇ、失礼しました⋯⋯黒幕会長」
逃げられなかった。 私が名前を呼ぶと、横にいたもう一人が吹き出した。
「ププ。 黒幕⋯⋯」
「⋯⋯お前たち。 どいつもこいつも⋯⋯」
あれ? 凄く怒ってる? どうして?
「⋯⋯どうも、君には一度会ったかな? 黒田幕斗だ」
「えっ! 黒幕さんじゃないんですか?」
「そんなあだ名は、若人が勝手に呼んでいるだけだ」
「失礼しました!」
私は床にスライドするように、土下座した。
「お、おいやめろ。 こんな所でなにやっているんだ!」
「⋯⋯親父、ドン引きだ」
「そうね、瑞稀がかわいそう」
「陽介、明里。 どうにかしてくれ!」
「ぐははは、ウケる」
「⋯⋯改めまして。 生徒会長の倉石瑞稀と申します」
「黒田幕斗だ」
「初めましてお嬢さん。 今川太一と申します」
「今川幸子です」
「先生! なにやってるんですか?」
「これ? 旦那様に媚びているんだけど」
「幸子。 君は相変わらず、美しいな」
「太一様。 今日の晩御飯はカレーですわ」
「⋯⋯ほう。 それは、楽しみだ」
「それからデザートは⋯⋯」
なに、イチャイチャしているんだこの二人。 私は視線を外し、黒田さんの方を見た。 それにしても驚きだ。 黒田陽介前生徒会長と明里さんの父親だったなんて。
「私は、君の生徒会長としての資質に疑問がある」
単刀直入に言われた発言に、私は身震いした。 ーーたしかに、私は前生徒会長とーー或は、川端ことねと比べて、能力は著しく劣っているだろう。
わかっていた事実。 しかし、真正面に指摘されると堪える。
「⋯⋯まあまあ、黒田さん。 今日は、そんな話しに来た訳じゃないですよ。 そもそも、私たちには異議申し立ての権利はありません」
「そうですよ。 いくら、倉石さんがゲームで徹夜して、ふらふらで保健室に来る問題児でもね」
先生! 私に恨みでもあるんですか? 私の精神はボロボロですよ?
「えっと。 文化祭の話しをしましょ。 今の所、指示通りに遂行中です」
「ほう? 情報漏洩しているようだが」
ぎく! バレてる。 誰かバラしたの? 内部にスパイがいるなんてーー
私は今川先生を睨む。 先生は指先で自分を指す。
「瑞稀さん。 私じゃありませんよ」
「いや、普通に明里ちゃんからでしょう」
太一旦那が正論を言って来た。 やっぱりそうかーー
「あ、あれはですね」
「柳田健太が原因だそうだな。 ⋯⋯まったく、奴には世話を焼く。 秘密裏にしておけば良いものを⋯⋯」
この前のことで、思ったけど、やっぱり二人は争っているようだ。 私は巻き込まれないように、知らない振りっと。
「それ以外は順調、以上で報告終わりです」
「私に言っても仕方ないだろう。 今回の責任者はコイツだ」
私は、頭を移動させて、今川夫婦の方を向いた。 まだイチャイチャしているじゃん。
「じゃ、私は失礼する」
「私も失礼します」
「ちょっと、生徒会長。 お話し、しましょうか?」
「ひい」
逃げるのまた失敗だよ。 助けてミウミウ!




