握手会をしよう!
彼女たちのパホーマンスは最初、トラブル?がありながらも、無事に終わった。
観客も拍手でそれを祝っていた。 それは、演者たちもである。
私は、マイクでアナウンスしたーー
「さて、皆さん。 次は握手会ですよ!」
55、握手会をしよう
それを聴いた、舞台の真ん中にいた演者が、私の方を睨みつけた。
ーーそう。 このアイドル、握手会をしたことがないのだ。
そこで、私はこの場を用意したのだった。
観客たちはサプライズに大盛り上がり。
ーーまさか、拒否なんてしませんよね?
「アッカリンファンです!」
「えっと。 どうも⋯⋯」
「善子! 最高のライブだったぜ! さすが俺の彼女!」
「竜也! こんな大勢の前でアピールなんて大胆! 大好き!」
二人は、それぞれの並んでいるファンに応対していた。
対して、仁王立ちの顰め面でファンの前に立つ榊原さん。
いつものアイドルの姿ではなかったーー
「榊原さん。 笑顔で。 ファンサービス!」
「アンタね⋯⋯」
まずい! 彼女の小言が始める前に彼女にファンを近づける。
「⋯⋯あの。 ゆいゆいのファンです⋯⋯」
弱々しく声をかけたのは、小さな子供。 すると榊原さんは、彼女と同じ高さまで屈み、握手をするのであったーー
「ありがとう! ⋯⋯わあい、お母さん! お父さん! ゆいゆいから握手してもらったよ!」
嬉しいそうに、両親の元に帰る少女を、どこか寂しそうな目で見つめていたーー
「えっと。 榊原さん、すみませんでした?」
「⋯⋯⋯⋯」
公園のベンチで、榊原さんと二人きりで向き合う。 彼女はどこか呆れた表情で私を見ていた。
「ゆいゆい」
「え?」
「ゆいゆいって呼びなさいよ⋯⋯アンタ、あの時呼んでたでしょ⋯⋯」
「ゆいゆい、すみませんでした!」
「⋯⋯なにを謝っているのかしら」
私はゆいゆいの顔を見た。 彼女はどこか寂しそうに微笑む。
「お疲れ様。 アンタの仕事は終わりよ。 せいぜい残りの夏休みを過ごすといいわ⋯⋯」
そう言うと、ゆいゆいは立ち上がり、公園から出て行った。
私はーー
「⋯⋯えっと。 アンタ? なによ! ⋯⋯もう用事は済んだでしょ。 私に構わないでよ⋯⋯」
「嫌です! もう一晩泊まります! そして一緒に女子トークしましょう。 それだけでいいですから」
私は、今の彼女を放っておくことが出来なかった。 その時、チャイムが鳴る。
「⋯⋯もう、なんなのよ! ⋯⋯はいどなた?」
「こんにちは。 黒田です」
黒田さんだ。 なぜ彼女が来たかと言うと、私が呼んだからだ。 新田さんはリア充なので呼んでない。 今ごろ立川竜也と青春をしているんじゃないかな?
「アンタ! なにを考えているのよ!」
「あれですね。 二人が仲良くなるように、私が間を取り持ってですね⋯⋯」
「結衣! ごめんなさい。 私、貴方のこと、なにもわかってなかった⋯⋯なのに知ったフリをして、通訳気取りだったわ⋯⋯」
「うんうん、そうだったね! よし、みんなではっちゃけよう!」
「⋯⋯アンタは何様のつもりなの? ハァ。 来なさい! アンタたちに私の取り扱い説明を学んでもらうわ」
「⋯⋯えっと、突然お腹が痛くなってきちゃった。 帰りますね。 あとは黒田さんとゆいゆいの二人きりで⋯⋯」
「大丈夫。 トイレの中にいても聞こえるぐらい大声で説明してあげるから⋯⋯そうね、6時間講習でいかがかしら?」
そう言うと、ゆいゆいは私を満面の笑みで、鷲掴みにして玄関のドアを閉める。
『なるほど。 これが女子トーク。 不思議ですね』




