ノート救出したい田中ーー田中幸子視点
「すみませんでした!」
私の前で土下座をする倉石。 公園にいる人たちが一斉にこちらを向く。
ーーどうやら彼女は、私が喜ぶと思って、あえてあの態度をとっていたらしい。
けど、そんなことよりも、今のこの状況をなんとかして欲しいよ。
「⋯⋯あの、倉石さん?」
「はい! 田中さん!」
「とりあえず、ベンチに座ろうか」
私は彼女をベンチに座らせた。
「田中書記。 私はとんでもない誤解を⋯⋯」
「うん、もういいから。 それよりも」
誤解だとわかったなら、早くそのノートを返して!
「そうですよね。 じゃあ仲直りを⋯⋯」
「いいから、早く返せ!」
「ひぃ!」
私は倉石からノートをひったくる。 あぁ、おかえり私のノート!
「⋯⋯あ。 え! 田中書記のノートだったんですね?」
「はぁ?」
「ひぃ!」
まったく白々しい。 そんなのとっくに知ってるくせに。
「すみません。 ノートをぶん投げてしまって⋯⋯」
「うん? 別に。 返してくれればそれでいいよ」
「よかった! それで、これからの話しですが⋯⋯」
ノートを取り返して安心した私は、油断していた。
ーー彼女、倉石瑞稀と言う人間に対してーー
「⋯⋯じゃあ、こちらにノートの写しがあるから、それを使ってレクリエーションをしましょうか!」
そう言うと彼女は、カバンから古びた紙束を取り出した。
写し? レクリエーション?
「⋯⋯なにそれ?」
「はい! エターナルパーフェクト様の復活の儀式ですよ? ⋯⋯著者本人ですから知っているでしょう? やっぱり古びた紙の方がいにしえより伝わる儀式! みたいで雰囲気づくりにはバッチリですよね」
嘘でしょ。 そんなことあり?
「その紙も渡せ!」
「なんでですか?」
「恥ずかしいからですよ! ⋯⋯あ!」
「え?」
しまった! なんでそんなこと言ってしまったんだ! どうしよう弱みを握られてしまった。 よりにもよってこの生徒会長にーー
「そんなことないです。 この文章はとてもいい文章でした」
「⋯⋯ぶん投げてなかった?」
「そう、それです! 感情を強く揺さぶる程に熱い思いがこもっていました」
そうかな? だとしたら嬉しいけど。
「私は思うんです。 田中書記、夏休みが終わったらどうなりますか?」
「えっと。 二学期が始まる?」
「そうです。 そして二学期が始まると私たちは忙しくなります。 そして、求められるものは、お互いのコミニケーション能力! だと思いませんか?」
「たしかにそうだけど?」
「そこでお互いのコミニケーションを高めるために、必要なことは何か? そうです! みんなで一致団結する機会です!」
倉石は熱く語り続ける、私は彼女の説得に理解を示し始めた。
「⋯⋯でも、私のノートが役に立つかな?」
「むしろ、最高な脚本です! 田中幸子さん! 貴方の脚本が私たちの絆を深めるのです!」
本当に! だとしたらとても嬉しいけど。
「では、そうと決まればさっそく積もる話しを⋯⋯観覧車が最適ですね」
「まあ⋯⋯そうだな。 気分転換に行くとしよう⋯⋯」
私はご機嫌になってしまったのだった。
『我らエターナルパーフェクト教団! 共に夜の祭壇へいざ参らん』
「よし、決まった。 完璧ですワルザベス! 我らに敵はなし!」
「ククク、今宵、闇に悪魔が降臨する! その時を座して待つがいい!」
「⋯⋯それにしても、観覧車の中って特別な気持ちになりますね」
「え? 倉石? まさか、私をここに誘ったのって⋯⋯」
「もうじき、てっぺんですね。 ⋯⋯ここで好きな人とキス出来たらな⋯⋯」
「はわわ⋯⋯。 なに言ってるの、そんなロマンチックなことしてる、バカップルなんて我らの敵よ! 本当、羨まけしからん⋯⋯」
「⋯⋯あれ? 田中書記も私と同じ考えなんですか?」
「⋯⋯倉石生徒会長もそうなのか?」
私たちは互いの目を見る。
そっか。 私たちは似た者同士だったんだ。
「よし! 我らが手を組めば敵なし!」
「はい! その通りです!」
私たちは観覧車が下に着くまで互いに微笑み合うのであった。




