怒る田中ーー田中幸子視点
夏休みの休日、今日は珍しく両親が家にいる中、チャイムの音がした。
「ごめん幸子。 ちょっと出てくれない?」
「うん。いいよ」
私は、勉強の手を止めてインターホンの前に立つ。 すると、出て来たのは私のノートを持ち帰った、あの憎き生徒会長の倉石だった。
「倉石で~す」
「そうですか。 おかえりください」
私は動揺を悟られないように、出来るだけ平常心で答える。
「どうしてですか! 田中書記!」
「⋯⋯我は、仕事とプライベートはわけるタイプだからだ」
「そんな! 冷たいですよ!」
頼むから、今日は帰ってーー そんな私の願いは、一番最悪な形で裏切られた。
倉石は手に持ったカバンの中から、見覚えのあるノートを取り出すと、朗読を始めるのであった。
「我、此処至るは至極の⋯⋯」
「え! ちょっと待って! ここじゃ駄目! 近くの公園行きましょ! そこで、じっくり話し会おうじゃないか!」
「そうですか! よろしくお願いします!」
アイツ! なんでこんなことを! 私は怒りで腑が煮えくりかえる。
「⋯⋯どうかしたの? 幸子?」
「知り合いが来たから、出かけるね⋯⋯」
「あら、そう⋯⋯」
「大丈夫。 お昼までには帰ってくるから」
「よかったわ! じゃご馳走を作って待っているわね」
「ありがとう、お母さん」
「お姉ちゃん出かけるの?」
「うん。 出かけるよ」
「お姉さん。 何をしに行くの?」
「ちょっと、悪者退治かな?」
「わあい、お姉ちゃん格好いい!」
私は、玄関に向かいアイツに会う。
ーーよくも家族がいる前で堂々と、私のノートを朗読してくれたな! 絶対にそのノート、返してもらうからな!
そして、公園に着いた私たちーー
「⋯⋯⋯」
おい! 何か話してよ! なに気まずい雰囲気出しているのよ! 気まずいのは私の方でしょ!
私がイライラしていると、ノートを取り出した。 私はノートと倉石を睨みつける。 すると、彼女は考え込んだと思いきや、突然ニヤニヤして私の方を向く。
私は、彼女の反応に恐怖を覚えながらも、応答を待つしかない。
「ワルザベスよ、今宵は、特別な夜になるだろう。 共に祝おうぞ!」
「え? 何? 今夜、なにかするの? 私も付き合うこと確定?」
「ふ、当然だ奏者よ! 信仰者と奏者はセットだぞ! 我ら、エターナルパーフェクト教団の集会だ!」
ーーこいつ。 この後に及んで、まだ私のことを馬鹿にしてくるの?
そんなことより、早く返しなさいよ!
ーーその時、突然横から女性の声がした。 私は、慌てて振り返ると、そこには川端ことねがいた。
「瑞稀ちゃん。 こんにちは! 元気?」
「あ、ことね! こんにちは、偶然だね」
「えっと、夜にみんなで集まるの?」
「うん。 今日は生徒会のみんなで集まる予定なの、生徒会の二学期に向けたレクリエーションだよ」
そう言うこと? 私は呆れながら声を出す。
「あの⋯⋯それならそうと、最初から言ってくれませんか? 私も、貴方に合わせたくても、ボケられないじゃん」
「田中先輩は、普段はそう言うキャラじゃないんですか?」
「え? 私、いつもそう言う人だと思われてるの? あれはパホーマンスだって! ⋯⋯もしかして倉石、私をそう言う人だと思ってたの?」
「あれ? ワルザベスはそうじゃないの? 私てっきり⋯⋯」
ーー私はとんでもない勘違いをしていたらしい。




