倉石先生のお友達教育
ショッピングモール騒動後、翌日の朝。
昨日あんなに格好をつけていたひとみんが、私の家にやって来た。
「⋯⋯ねえ? 昨日のことがあって、ことねと打ち解けたでしょ? 特訓とか必要?」
「だってヨー。 神子様ったら、すっごくおっかなかったんだぜ。 あの状況で仲良くなんて出来るかよ、アァ?」
ひとみんが、私に凄んでくる。 もはや、はわわさんとは呼べないーー
「それで、まず確認したいんだけど。 どっちでことねと会話するつもり?」
「⋯⋯そうだよ! それが一番の問題なんだよ!」
ひとみが大声で、怒鳴るとカバンから制服を取り出した。 なんで?
「なんで、制服を持って来たの?」
「え? 昨日の神子様は、制服姿だったろ? アタイも合わせた方がいいかな? それに⋯⋯やっぱり、実践が大事かなぁと思って⋯⋯なんとか本性を隠さネェと嫌われるかもしれないだろ?」
「本性をね⋯⋯ 悪手じゃ馬鹿者!」
「なんで~ 教えてよ倉石~」
「しょうがないな⋯⋯本当に手がかかる教え子だね」
ため息を吐く。 ーーどうやら、彼女はまったくわかってないようだ。
私はことねについて、一番重要なことを伝える。
「⋯⋯ひとみん。 ことねはね、猫被りされるのが嫌なんだよ」
「アんだって! そうだったのか?」
「ミウミウもそれで失敗したんだよ?」
「なんということだ⋯⋯じゃ! アタイのファーストアタックは失敗だったのか⋯⋯⋯ヤッチまった!」
ひとみは、跪く。 私はそんなひとみの肩に手を乗せる。 ドンマイ!
「そうだったのか⋯⋯アタイはありのままの姿で、挑まないといけないツウ訳かよ⋯⋯ムリゲーだぜ」
「まあ、そう言うことだね。 次にことねに対する態度はどうするの?」
「当然、土下座して忠誠を誓うさ。 こんな風にな⋯⋯」
その時、部屋のドアが開いて彼女がやって来た。 そうことね本人だーー
ことねは制服姿である。 なんでだろうか?
「⋯⋯瑞稀、来たわよ。 ⋯⋯お邪魔だったかしら?」
ある意味で最高のタイミングだよ。
「おはようございます! えっと⋯⋯休日の制服姿! その⋯⋯」
「なによ! アンタもおかしいと思っているんでしょ? ⋯⋯言っとくけど学校に行く用事も特にないわよ」
「ええ? ⋯⋯それでは、お偉い方さんに会うためですね」
「ふん! そんな訳ないでしょ! 素直におかしいって言いなさいよ!」
「はい。 ⋯⋯このように。 そんな態度ではことねに嫌われてしまいます」
「オイ! ⋯⋯瑞稀、なんとかしろヨー! アタイは神子様と仲良くなりテェンだよ!」
「⋯⋯なんで、私の目の前でそんなこと言うのかしら?」
私を揺さぶりながら縋るひとみん。 ドン引きすることねーー
よし、最高の状況だね! 私がことねを見つめると、ため息を吐きながらも、ひとみに話し掛ける。
「⋯⋯貴方、私と仲良くなりたいの?」
「さあ! ひとみ。 正直に言おう!」
「えええ? 私は神子様とひとつになりたいです?」
「⋯⋯えっと? 瑞稀、彼女はなにを言っているのかしら?」
「うんうん。 素晴らしいですよ、ひとみん」
ことねの顔を見てごらん。 めちゃくちゃ引き攣っているよ。
「オイ! 神子様の様子が明らかに悪いぞ! 嫌われた! どうしよう~」
「貴方、そう言うことはわかるのね⋯⋯」
「ことね。 彼女に一言どうぞ」
「私には、高坂湊っていう。大好きな幼馴染がいるんだけど⋯⋯私が彼に向けている気持ちと同じ⋯⋯と、言うことかしら?」
「はい。 ⋯⋯そうです、同じです! 愛してます!」
「ふ~ん、そう言うことか⋯⋯」
ことねが思案顔をしている。 そうだろうね、私の勘は的中した訳だね。
私はことねと一緒に話しているからわかったんだ。 ことねは、湊のことを深く愛しているって。 ーー丁度、ひとみと同じようにね。
「いいわよ。 仲良くしましょうか? 私たち」
「はわわ。 光栄です! 神子様!」
「ハア。 ことねでしょ?」
「⋯⋯あっと。 ことね!」
抱き合う二人。 よし、クリアっと!
「さて、次はふれあい方だね!」
「え? ⋯⋯アタイ。 今日はもういっぱいなんだけど⋯⋯」
「二人は、これから仲良く過ごすんだよね? ⋯⋯楽しみだなぁ、戻って来たら二人が仲良くなっているの⋯⋯」
「⋯⋯アタイとことねが仲良く?」
「そうそう。 一緒に女子会とかして、キャキャするんでしょ? ⋯⋯その間に私とミウミウは、ご飯をバクバク食べておくから! ⋯⋯それと、高坂湊にも挨拶をしっかりしてね! ⋯⋯じゃないと、関係がおかしくなるから」
湊もことねのこと愛しているからね。 ちゃんと話し合いしてねーー
「⋯⋯そんな。 瑞稀! アタイを放置するのかよ! どうすればいいのか指示してくれるんじゃないのかよ!」
「実践あるのみだよ、ひとみん」
「なんだよ! どうすればいいんだよ!」
私は、ひとみの肩を叩く。 頑張れ! 実践教育だよ。
「ハア。 ひとみ、私を見て⋯⋯何か言うことないかしら?」
「休日なのに、固っ苦しい制服を着てるなんて変人カヨー⋯⋯えっとこれは違うんです! でもことねの私服姿がみたいです!」
「へえ。 そうなんだ。 やっぱりそうかな? 文化祭が終わってから、なんだか落ち着かなくて。 彩乃に相談したら、ニコニコしながらショッピングモールに連れてかれるし⋯⋯美羽や湊もさっき出た時、突っ込まれたし⋯⋯」
「そりゃ、当然だろ! ⋯⋯これは、その⋯⋯」
「じゃ今から、私のウチに来る? 一緒にダラダラしましょ?」
「ええ? ことね⋯⋯なんでアタイは抱っこされているんだ?」




