生徒会長立候補演説前半
「お待たせいたしました。 ただいまより、公開演説を行います、エントリーNo.1 二年 榊葉結衣」
「は~い!」
司会者に呼ばれて登壇したのは、金髪のロングヘアーの女性だった。 彼女は、トテトテとのんびり登壇場に現れる。
18、榊原結衣に会う
彼女は、アイドルである。 休日はライブで忙しいはず、なのに生徒会長選挙に出るなんて! どんだけ元気なの? 私には、到底真似出来ない。
ーーしかも彼女は他にも仕事があるのだがーー
「みなさん~、こんにちは!」
『こんにちは』
『あれ? おかしいな〜 みんな! 声が小さいぞ! もう一度~ せ~の!』
『こんにちは!』
「よく出来ました! みんなのアイドル! 榊葉結衣だよ~! みんな、気軽にゆいゆいって呼んでね~」
『うわー』
「アタシが~、生徒会長になったら~、毎日が~、バライティで~満たされて~⋯⋯幸せな日々が〜」
え? 歌い始めた? 選挙ってそんなのありなの? みんな感動してるし、ライブ演説なんて反則だよ!
「わあ! ゆいゆいの生歌だ! いい席で聴けるなんて幸せだな!」
「グブ」 (ゆいゆい? なんですのそれ?)
「ことね。 わかるよ! 最高だよね!」
「ブ!」 (私だけ知らないのですわ!)
生徒達は、彼女の演説を聞いているのだが、内容が頭に入って来なかった。 彼女は歌に乗せながらダンスを披露したからだ。
「⋯⋯でね~、アタシ~、ね~、とっても~、そうだった~、の~」
「榊葉結衣さん、演説の時間終了です」
「あ、そうなの~? みんなまたね~!」
生徒たちの拍手の音が響き渡る、体育館の盛り上がりは最高潮だ!
「はぁ、よかったなぁ」
「本当に生徒でよかった」
「ブグ!」 (⋯⋯あの? 意味がわかりませんでしたわ)
ーーたしかに、ゆいゆいのライブとしては最高のステージだったが、榊原結衣としての生徒会長候補演説としては、正直微妙だった。
つまり、私にはまだ、勝ち気があると思った。
「⋯⋯え、No.2 二年 立川竜也」
「はい」
続いて呼ばれたのは、神妙な面持ちの男性。
19、立川竜也に会う
彼は芸術家であり、その独特の世界観は、一部の根強いファンを生んでいる。
ーーそれにしても、凄い気迫! 今日にかける気持ちが強いのね。
「みんなさん、こんにちは! ⋯⋯僕はこの場を借りて、告白したいことがございます。 ⋯⋯新田善子! 付き合ってください!」
「え! ⋯⋯ちょっと竜也! 大勢の前で告白なんて! なんてロマンチックなの!」
「俺は昔から、お前のことが好きだった 幸せにする! ⋯⋯返事はどうかな?」
「そんなの決まってるじゃない! よろしく! 竜也!」
「みんな! 俺たちを祝ってくれ! ありがとう!」
20、新田善子に会う
彼女は、榊原結衣と同じくアイドルだ。 私は今、とても興奮している!
「どうしよう! 瑞稀ちゃん! 私、心臓がバクバクだよ!」
「⋯⋯安心して、ことね! 私も今、同じだから!」
私は、ことねと熱い抱擁を交わす。
「ブグ」 (なんですの? 公開告白ですわ!)
私は、他人の恋愛を見ると吐き気がするタイプだが、それは相手が『他人』だからである。
そう、私は彼の作品のファンであり、彼女のファンである!
推しと推しがくっつくことが、とても嬉しかった。
そして、嬉しいことに、ことね姫様もそのタイプのようだ!
私は体育館を見渡す、生徒達の中にはショックを受けている人が大勢いた。 たしかに、推しのアイドルが付き合うのが嫌なファンもいるだろう。
私だって道を歩くイチャイチャカップルに舌打ちをいつもする。
「ブ」 (なんでわざわざここで? 意味不明ですわ!)
今のミウミウもその気持ちなのだろう。 私はことね姫様と抱き合いながら、ミウミウに向けてウインクをした。
「グブ!」 (貴方! ことね様から離れるのだわ! なにを、私に向けてアピールしていますの! 私は別に悔しくありませんわ!)
ーーおやおや。 ミウミウ本音が漏れてるよ! そんなにことね姫様と仲良くしたならすればいいのに、まったく頑固物だね。




