ニャ〜ン
次は5回戦のはずだが、お呼びがかからないのでダラダラと過ごす。チリは寝室に戻りると出てこなかった。そのまま夜になり、気づけば寝ていた。深夜にノックがされて誰も出ないので、俺がぼんやりした頭で出ると、制服を着た俺と同じアジア系の女性が
「5回戦はソロ対決です。お急ぎください」
と手を引っ張られて、有無を言わさず連れ去られる。
半分寝た頭で照明に煌々と照らされた深夜のスタジアムど真ん中に向かうと、なんと目の前にはセーラー服がボロボロのニャンヒカルが立っていた。
「なんだ、君か」
ギラギラした両目で見つめてくる。
「大会に戻れたんですね」
良かったなあとボーっとした頭で言うと
「いや私だけだ。ナニコさんの計らいで仲間たちは基地に返された」
「帰れなかったんですか?」
ニャンヒカルは猫フェイスをニヒルに笑わせると
「フッ。大会が終わるまでは私だけはだめだそうだ」
「あー余計なことするからかー」
思わず言ってしまうと、彼は闘争心をむき出しにして
「だが!特例で5回戦に上げてもらい!君を倒せば次の準決勝に出られる!いいか!覚悟しておけ!」
ニャンヒカルが凄んだ直後にナニコの欠伸がスタジアムに響いて
「ふあーっ……えっと猫まね対決でーす。頑張ってねー観客はほとんどいませーん」
と言われた。猫まね対決……。俺がと惑っていると四つん這いになったニャンヒカルがこちらを睨みつけ
「シャーッ!」
と猫の威嚇してきた。面倒なので
「ニャ~ン」
と適当に返すと、ニャンヒカルは首を傾げて
「ニャ~ン?」
疑問形で返してきた。適当に
「ニャニャッ」
と区切って返すと、何故かニャンヒカルは後退りして
「ニャニャ~ン」
怯えた表情をしてくる。すげえ猫真似うめえな、さすが猫。これは負けてられんと少し考えて、俺は以前爺ちゃんに習ったイメージを纏ってみることにした。
三メートルくらいの巨大黒猫になった俺は唖然とするニャンヒカルを見下ろしていた。ケイオスが濃いからか簡単に変化できた。低い猫声で
「ニャ~ン」
と鳴いてみるとニャンヒカルは
「ニャニャッ」
と怯えた表情で固まった。ここだなと前傾姿勢で
「シャーッ!」
と鳴くと、ニャンヒカルは固まって何もできなかった。眠そうなアナウンスが
「そこまでー。さすがお父しゃんのお孫さんですねーよくこんとんを使いこなしてましたー。えいなりの勝ちー二人とも寝ていいよー?」
ニャンヒカルは駆け寄って来た数名の美男美女たちから瞬く間に拘束具をつけられると
「では、大会終了まで拘束します」
そう言われながら担ぎ上げられて連れ去られていった。それを見送ったあと、イメージをほどいた俺は客室に一人でフラフラと戻っていき、また寝た。




