わかるうう
「やっぱりー違うと思うんですよねえ」
「そうだそうだっ」
元ゴリラ勢たちがリリルルナの名前に異議を申し立ててくる。
「私はファイ子でーそちらはチリさんですよー?そこにリリルとかちょっとファンタジーすぎませんかあ?」
「うむっ!可愛すぎる!却下!」
「じゃあどうしたらいいんだよ!お前らも考えろよ!」
ヤケクソになってそう言うと二人はニターッと微笑み、まずチリが嬉しそうに
「ドブみぞおっちゃみ!」
そしてファイ子が
「ゲルドバス・ギャラメグロブというのはどうでしょう?」
俺が黙ってリリルルナを見るとキョトンとした顔で
「どちらも素敵なお名前ですわ」
と言ってきて、元ゴリラ勢たちは軽く舌打ちをするとヒソヒソと話し始めた。そしてファイ子が真顔で
「平等るな。タイラルナで、通称ヘラナさんでどうでしょうか?」
リリルルナ更に改めヘラナはファイ子に抱きつくと
「お姉様たちー好きーホント好きなのー」
と顔を白ビキニの胸の辺りに埋めていちゃつきだした。ファイ子は鳥肌を立てながらも何とか平静を装い
「よ、良かったです。さ、ヘラナさん我々との付き合い方を伝授しましょうー」
「うむっ。あっちで3人で話そうねっ」
ヘラナは二人に肩を組まれて寝室に連れ去られて行った。俺とショラはそれを見送る。
しばらくすると
「もおおおお!わかるっ!」
シャワーえお浴びたり、ルームサービスを食べたり、ショラとモニターを眺めたりしていると寝室からチリの雄叫びが聞こえてきてビクッとなる。ショラが心配そうに
「何か同意しとるな」
「大丈夫なんですかね……」
ミイラ取りがミイラになる。なんて言葉もあったと思う。
興奮した顔でチリが出てきて
「ヘラナちゃん、根暗ですごい日陰者だったんだって!」
「……うん」
見ればわかる。
「それがナニコさんが世界を変えたからテレビとか日本の文化見れるようになって!西瓜梨子にハマって!」
「……そうなんだ……」
チリは更に興奮して
「それでアイドル活動しようと思ったけど友達がいなくて!一人で練習してたらいつの間にか!影を操れるようになったんだって!もおおおお!わかるううううううう!」
ショラが不思議そうな顔で俺を見てくる。
俺は何でチリが興奮しているのか理解してしまった。
「忍者愛家族のモン君と同じかよ……」
チリがハマっている例の深夜アニメで、いつも捕まったりして、骸骨忍者師匠のラン様に助けられているぽっちゃり男子のサブキャラが悶々太夫……通称モン君なのだ。ちなみにモン君は影を操れるのだが、言い方は悪いがクソ雑魚なので、大きなお姉様達が大半の視聴者サービスのため、いつもフンドシ一丁になるまで敵からいたぶられて服を破られている。「何で!?今度こそいけると思ったのに!」といたぶられながら毎回悲鳴をあげるモン君はもはやギャグだが、チリ含む大きなお姉様たちはそんなドジっ子を懲りずに助けに来るラン様のお約束展開に満足感を感じるらしい。
「そう!わかる!?ガニメデにラン様と女モン君がいるとか!」
「……良かったね……」
興奮したチリにそれしか言えない。きっと痩せたヘラナをモン君に寄せる為に太らようとするんだろうな……と俺はその先の展開を予想できてしまった。




