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変な宇宙人から好かれすぎてて困ってるんですけど!(トーキング フォー ザ リンカーネーション後日談 エンディングルート1)  作者: 弐屋 丑二


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あいしてーる

「お、お前ら正気に戻ったのか……」

二人は同時に頷いて、そして同時に急に耳まで真っ赤になると

「私のパンツからあ、干し肉を、出したのわあ……あれは深い理由があ」

「う、食べて喜んでたっ……おえええ」

二人はゴリラのときの記憶もあるようで、しばらく頭を抱えて悶絶したあと

「チリさん、忘れましょうう!」

「そ、そうしようっ!」

ファイ子は意を決した表情で

「ナニコさん!ギターギターギターベースドラムキーボードのフルバンドを要求します!」

さらにチリが

「マイクスタンドもつけてっ」

というと、少し間を置いて、十数人の美男美女が楽器とアンプを物々しく運搬してきた。


瞬く間に、動かないヘラクレスヘラートヘラリに向けて,、バンドセットが組まれると、奏者がそれぞれ楽器を持ち、その中心にファイ子とチリがマイクを持って立った。そしてファイ子は

「ナニコさん!私の頭の中で組み上げた、各楽器のタブ譜と譜面を奏者の脳に転送してください」

アナウンスでナニコが

「ちょ、ちょっと待って……えっとベースは四弦のだよね……ギターは……」

などとブツブツ言ったあとに

「よ、よーし、できたよー」

ファイ子が頷いて

「リハーサルします!」

と音を出すと明らかに何かおかしい。ベースラインをギターは弾いていて、ベース奏者は低い音で無理やり和音を奏でている。キーボードのような和音をギターが奏で、あっているのはドラムとコードをかき鳴らしている一本のギターだけだ。

ナニコのアナウンスが悲しそうに

「ごめーん」

謝るがファイ子は首を横に振り

「いえ!むしろ良いアンサンブルです!じゃあ行きます!」

チリモわかった顔で頷いて二人同時に

「えいなりと私たち!」

とタイトルコールして、俺は座り込みそうになる。


いきなり今までのオルタナロックなリハーサルはなんだったんだよ、な感じの1970年代くらいのアイドルポップスなイントロが大半が間違ったパートの演奏で流れると、そのままAメロになだれ込み

「ひどい男がいるのよー」

とファイ子が古いアイドルポップスのメロディで歌い、チリがコーラスで

「ひどいひどい、ほんとそうだ」

またファイ子が

「どっちが良いか選ばないのー」

そしてチリが

「おんなのてきだ、わるいやつだ」

その後は交互に掛け合いで

「でもでも好きなのー愛してるのー」

「ほんとすき、ずっとすき」

しばらく二人が間奏にのって踊る。斜め後ろから見ている俺は目を逸らしたい。この古き良きノリも含めて、めちゃくちゃ恥ずかしい。いきなり二人のユニゾンで

「えいなりーどっちを取るのー?今すぐ選んでねーでもー二人は親友ー」

どうやらサビに入ってしまったらしい。俺の名前も出てきて、もはや羞恥心で鼻血が出そうだ。さらにサビは二人それぞれのパートに別れて

「ずっと三角関係の方がーいいのかな?でもーあなたにー触りたいー」

「たくさん撫でられてーあなたをー撫でてーアイロンみたいにー丁寧にねー」

「抱っこしてー抱っこしたーいのー」

そして二人がユニゾンで

「あいしてーる」

と歌い上げてなんとか歌パートは終わり、俺がストレスの限界で身体を震わせていると、アウトロで急に全楽器が元の担当であろう譜面に戻るという奇跡が起こった。今まで感じたことのないような不思議な高揚感と浮遊感に包まれたまま、曲は終わり、2分ほど誰も動かなかった。


静けさを打ち破るような

「傑作じゃあああ」

という長老のアナウンスの後にナニコが

「すごいねーこれはもう、どっちが勝ちか明らかですねー」

ホッとした声を出す。ずっと動かなかったヘラクレスヘラートヘラリはゆっくり顔を上げてファイ子たちを睨みつけると

「そんなの認めない。そんな古くさいラブソングなんて!」

と声を上げたところで虹色の光に包まれた。

ナニコのアナウンスがノリノリで

「びょーきはしょーどくだーごおおおお」

と楽しげに言って、完全にヘラクレスヘラートヘラリや背後の影のバンドなども光に包まれた。ずっと腕を組んで黙って見ていたショラが

「早くも解決やな」

と言ってきて、俺もこれで帰れるわ……と大きく息を吐く。虹色の光が目の前から次第に消えていき、ファイ子とチリ、バンドメンバーたちも安心してハイタッチを交わし始める……いや、交わし始めたところだった。

「あ?あれー?」

ナニコのアナウンスがスタジアムに鳴り響きさらに長老が

「残っとるのう」

俺達も目の前の光景に固まる。そこには、リボンも服もメイクも全て剥ぎ取られた、痩せた全裸のヘラクレスヘラートヘラリが薄い胸と細い股を手と腕で必死に隠し、涙目で、こちらをキッと睨みつけていた。

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