作り変える意味
ナニコのアナウンスが
「あーこれはもうーどっちが勝ったかわかりますねー解説のちょーろーお願いしまーす」
「曲がーアイドル忍者軍団のがー長かったのうー」
かすれた老人の声がそう言うとナニコが
「内容についてだよー」
「ようしらんいうたらー忍者についてもーうろおぼえじゃがー」
「うんうん」
「女忍者はくノ一なのではー?」
「……長老寝てていいよーごめーん」
「……ぐう……」
「ええと……勝者!ニャンヒカル猫撫で放課後クライマックス……じゃないほう!えへへっ……アイドル忍者軍団ですっ!」
一瞬ニャンヒカル達と俺とショラが喜びそうになってそして崩れ落ちる。ゴリラ達が動かない棒立ち子の周囲をウホウホ周りだした。
「もう勝ったから次の対戦でいいよねー?じゃーダンス対決は2回戦にしよー、ニャンヒカルなんとか戦隊は敗者復活リーグに行ってくださーい」
適当すぎるアナウンスに
「ニャンヒカル猫撫で放課後クライマックスだっ!」
ニャンヒカルはいきり立って、他のメンバーたちから押さえられていた。
美男子の係員から、スタジアム上層のとてつもない豪華な客室に俺たちは案内される。ソファにベッドに壁一面が窓になっていて、スタジアム内が一望できる。テレビモニターも何台も付いていて、リモコンでスタジアム内の様々な場所を見ることができる。とりあえず備え付けてあった果物をビキニのパンツに溢れるほど詰め込んだファイ子が、更にチリのズボンの中にねじ込もうとしていたので止めていると、モニターの画面をリモコンで変えて眺めていたショラが
「ニャンヒカルたちや」
彼らは何もない一室で車座になり
「敗者復活戦がまだある。まだ優勝の可能性は残されている。この世界から出るには優勝しかない。有能な私を信じろ」
などと話しているのが聞こえている。
「優勝より、直接ナニコちゃんに掛け合った方が出られるんやけどなあ」
「……なんでこんな待遇に差があるんですかね?」
ショラは苦笑いで、
「君がナニコちゃんの親戚やからな」
「一応、気は使ってくれてるんですね……」
そして更にリモコンのチャンネルを変えていくと、今行われているアイドルたちの歌合戦から、観客席の様子から、脱衣場、トイレの個室などそこいらんだろうという所まで見ることができた。当然俺は目を逸らしながらだ。そして何十とチャンネルを変えていくと「見つけたわ。明らかに違うな」
とショラがニヤリと笑う。画面には放送室のマイクや機械の上に乱雑に広げられたスナック菓子を食べて、ジュースを飲みながら、ダラダラと窓の外のグラウンドを眺めているナニコが映し出されていた。隣には安楽椅子にもたれて寝ている白髪と白髭が長い老人もいる。ナニコはすぐにこちらを向くと手を振ってきて
「勝って良かったねー」
と何と話しかけてくる。口の周りにはスナックの食べかすがついていて、両サイドが長い金髪に隠れた顔は更に幼く見えた。ショラは全く動じずに
「チリちゃんのお父さん治してほしいんやって言うてるで」
と返すと、ナニコは微妙な表情で腕を組み
「あー優勝したらやってあげてもいいかなー実はこの大会もさー」
「うん。そうやろな」
ナニコとショラは画面越しで頷き合い、そしてナニコが
「ごめんーもう試合終わったからねーアナウンスしないとー」
と言って、向こうを向いた。ショラもチャンネルを変える。俺が
「何なんですか?」
ショラは真剣な表情で
「この世界のベースは龍のパーくんの身体やろ?」
「そうでしたね」
虹色に光っていたとてつもなく巨大な龍だ。
「……体内をそっくりケイオスで作り変える意味ってなんやと思う?」
「……ナニコさんの趣味?」
ショラは苦笑すると、首を横に振り
「パーくんは病気や。それもかなり厄介なやつな」
と言った。




