あったんだ
「よし行こか」
ショラがそう言うとムキムキでバッキバキのファイ子とチリが
「はい!」「はい!」
と勢いよく言ってくる。俺はもう言葉が出ない。
海岸沿いにそびえ立つツンツクボールには乗らずに、俺たちは今にも沈みそうな小舟二艘にに兵士たちから案内される。俺たち四人と残りのアイドル忍者四人に別れて乗り込み、オールをそれぞれの乗り手の一人が漕ぎながら大海へ進み始めた。こちらはファイ子で、あちらは棒立ち粉だ。もう何か言う気もない。これは誰かの書いた設定だろう。
「おーおーてーてーしょぼーあきれうすあーぼーぼーしょぼー」
多分英語のような、謎のポップソングを背後の一艘の棒立ち子以外の三人が歌い始める。ショラは真顔で
「地球のニャンピーという女性アイドルバンドのヒット曲だそうや」
「どっかで聴いたことあると思った」
これも誰かノリで書いたのだろう。しばらくすると歌い切り、アウトロなのか
「おーおーてーてーしょぼー」
のフレーズが延々とリピートされだしたが気にしないことにする。
数時間ほど、晴れた空をおわらないアウトロの
「おーおーてーてーしょぼー」
を聞きながら進んでいると腹が減ってきた。
当たり前のように食料も水も一切積んでいない。釣具もない。ショラがオールを漕ぐのを止めると座って
「そろそろやわ」
と言った瞬間に波が高くなり、雷雨が降り出した。俺は必死に船の縁に掴まる。波は落差十数メートルになり、それを何度も乗り越えると遠くでは、海水を飲み込んでいく巨大な竜巻が見えてきた。
ああ……あれに巻き込まれるわけか……いや書くだけなら一行だけども!巻き込まれる登場人物の気持ち考えてないだろ!と背後に座るチリを見るが、相変わらずムキムキでバッキバキのまま、さらに竜巻をニヤニヤ見つめていたので俺は見なかったことにする。
当たり前のように俺たちの小舟は竜巻に近づいて巻き込まれ、当たり前のように吸い上げられていった。小舟からも放り出され、俺は竜巻の中を回りながら、このクダリいらねえだろ!どうせ死なんだろうけど無駄に怖いし、息苦しいって!と思っていた。
そのまま竜巻の上まで吸い上げられ、ポーンッと、上空に放り出されると、そこには青空の果てまで広がる大都市が浮いていた。いきなり隣に飛ばされてきたチリが
「モピタはあったんだ……」
と感動した顔で一言言って落下していった。やかましいわ!お前今、ムキムキのバッキバキではいかいいえしか喋れんだろ!設定無視してどっかのアニメで聞いたようなセリフ差し込むんじゃねえええ!と思いながら、俺も落下していく。




