恥ずかしいんですけど
とりあえずドットの海図を眺める。残りは一マスのタコか五マスの龍、先に相手にするのがどっちがいいかなんてはっきりしている。ただ、一応ショラゲンドールが戻ってきてから意見を聞こうと二人でしばらく待つことにした。ファイ子を椅子に座らせて俺は祭壇に座ろうとして吸い込まれたら大変だなと思いとどまり、近くの床に座り、ボーッとしていると、海図を眺めていたファイ子が
「えいなり……私、エネを吸い込んで、そしてエネを吸われてからですねえ……」
「……?」
「は、恥ずかしいんですけどお……」
「どうしたんだ?」
ファイ子はしばらくモジモジと俯いたりこちらを見たりして
「あの……もっと、あなたに触りたいし……触って貰いたい見てもらいたいって……そんなことをー」
「……ああ」
潔癖で偏った性癖が、エネの逆に偏った変態性癖を取り込んで中和され、地球人並みの感覚になりつつあるのかなあ……などと黙って考えていると
「なんかチリさんレベルで愚かですよねえ」
ファイ子が申し訳なさそうに言ってきたので
「……俺がそれになんて言うかわかってるだろ?」
「はい……でもお、えいなりにい、言って欲しくてえ」
ファイ子は椅子を降りてすぐ横にピタッとくっついて座ってきた。むき出しの長い両足を見ないようにする。
「チリは愚かじゃないし、ファイ子のその気持ちも地球人なら普通だと思うよ」
「……えいなりーだいしゅきい」
ファイ子は俺に長い両腕をまわして抱きついてきた。寂しいんだろうなとしばらくそのままにしておく。
「あー!」
「あー!なんやくっついとる!」
ファイ子に抱きつかれたまま寝ていたようだ。チリとショラゲンドールの言葉で起きる。見上げるとショラゲンドールはどっから取り出してきたんだよというほど、黒装束と黒頭巾で、完全にラン様だった。
チリは自慢気に
「私のショラちゃん!」
と俺に宣言してくる。ショラゲンドールも悪い気はしていないらしく
「わしも面白いは言われたことあるけど、かっこいいは初めてや!嬉しいもんやな!」
チリと肩を組んで笑い合っているのを見てホッとする。
寝てしまったファイ子をバーに連れていきソファで寝かせてから
俺が椅子に座り、チリとショラゲンドールとで画面に向かい合う。ショラゲンドール略してショラに
「あの、ショラさん。チリから聞いてるとは思うんですけど」
「ああ、タコの方にしとき。ただ最初から全力でいった方がええな。ニョツホスは性格悪いんや。わしも定期的に手足取られとる」
「アメーバに頭取られてたのは何だったのっ?」
ショラはチリに楽しげに
「あれはちゃうで。時折、座りが悪いいうてきてな。あえて頭外して貸しとるんやわ」
「でも石なんでしょっ?」
「そやで。石をパーくんに人型に剤ってもろとるんや。岩とちゃう、意思が宿った石やでっ!」
またドヤポーズしてきたショラにチリが腹を抱えて爆笑し始めた。
「らっ、ラン様はそんなことっ……言わなアハハハ!」
どうやらギャップが面白いようだ。ショラも満足げに
「チリちゃん最高やわー。地球人って猿やと思っとったけど、チリちゃん生んだだけでも大したもんやで」
と独り頷いて
「ほな、行きましょかあ」
と俺に言ってきた。俺は方向キーをドットのタコに向けて押す。




