ゆうしゃ
ファイ子に恐らくはエネの変態性癖がエネルギー源だった ちょうひっさつ も含めて詳細に説明すると、真剣な眼差しで
「第三層海の領海支配級が、定期的に弱体化する時期があるのですう……つまりこのアンノウンパレス、いえ、ツンツクボールが体表を削っていたのですね……」
「最後に弱体が確認されたのはいつだ?」
「2005年ですねえ……その前が2003年、観測データは10年分で少ないですが、2年に一度ペースですう」
チリが気付いた表情で
「2005年なら、お婆さんがギリ生きてた頃かもっ」
ファイ子も黙って頷き俺を見てくる。
「つまり婆ちゃんが、定期的にこれで、ガニメデ巨大生物の掃除をしてやってたと」
ファイ子は深刻な表情で
「この層海は、ケイオスと言って、物理法則が乱れる現象がよく確認されています。もしそれが、巨大生物の付着物由来のものならば、お婆さんは……」
チリが慌てた顔で
「私のニャンヒカルの部下が!ケイオス何とかって言ってた!」
ファイ子は立ち上がり
「ニャンヒカルはお掃除のされていないケイオス値の高い巨大生物に遭遇したのでしょう。えいなり、チリさん」
意を決した表情で、缶詰を食べている俺達を見下ろしてくる。
その後
トイレとかファイ子の服とか準備に手間取って結局、コントローラーを持って、椅子に座る頃には1時間近く経っていた。ファイ子は婆ちゃんが十年前くらいに着ていたのかもしれない、平均的な日本の女子のサイズの薄ピンクのキャミソールを一枚被っただけで、俺の横にいる。当然丈が足りないので、両足は丸だしで何か気になる。というか婆ちゃんは十年前も婆ちゃんなのにキャミソール?爺ちゃんに見せてたのか?ここで?もしかして二人で来てたのか?ファイ子……露出癖微妙に残ってないか?気のせいか?何か色々と気になるが、俺はコントローラーのスタートボタンを押した。
いつものドットの海図が広がり、チープな電子音が鳴り響く。ファイ子は興味深く画面を見つめ
「残り4体ですかあ」
「どうにか3体倒したからな」
「どれから行くっ?」
ファイ子は会場を見回し、ニマスに渡って紫紫に輝いている霧のようなキャラを指指した。
「特殊な藻が連なった生物ですう。二人の話から予測するに一撃かとー」
「ドットだと強キャラっぽいけどっ?」
チリが首を傾げると、ファイ子は自信満々で
「弱いと思いますよお」
と言い切った。
結果として、ファイ子の予測は正しかった。3D表示された紫の霧は、確かに、発光する紫の藻が複雑に絡みついたものでコマンドの ろーりんぐ を一回選択して突進しただけでバラバラに砕け散り、逃げ去っていった。画面には
おそぅじスコア100点 ゆうしゃ
婆ちゃんの多重コーラスがいつものフルオーケストラのBGMに乗って
「あなたはーゆうしゃよーゆうしゃよーわたしのたかゆきーわたしだけのあなたー」
と流れてきて、俺たち三人は元々このゲームをさせられていたのが誰だったのか、ようやく理解した。




