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漫研

放課後は、チリが立ち上げチリが部長の漫画研究会へダラダラと向かう。校舎裏の古い物置小屋が部室だ。

当然、ファイ子もついてくる。

壊れそうな錆びた扉を開けると、すでに来ていた3名の1年生が俺たちいや……ファイ子を見てくる。すぐに前髪を鼻まで垂らして怪しい雰囲気を醸し出している華奢な影山が俺を押しのけ、ファイ子の前に立ち

「ファイ様今日も麗しゅう……」

上半身を折り曲げ、恭しく挨拶するが、ファイ子は鼻を摘んで、シッシッっとあっち行けと言うように、嫌そうに右手を上下に振った。影山は嬉しそうに横に退く。そうなのだ。ファイ子信者がうちの高校には少なからずいる。信者共によるとミステリアスで美しいから好きになったらしい。誰かこいつを引き取って欲しいのだが、ファイ子が信者を気に入ったことは未だに無いので、微妙なコミュニケーションが毎日俺の目の前で繰り返されるだけだ。


教室くらいの大きさの物置小屋に入る。

壁沿いに並んだ、雑多に古い漫画が並べられた本棚の、その脇の壁との隙間に手を突っ込んで、部員が隠している同人誌を5冊ほど引っ張り出した。当然,、全てエロ本だ。内容は純愛から鬼畜まで、上手い絵から落書きレベルまでバラエティーに富んでいる。机に置いて、椅子に座りパラパラとめくって読んでいると、横に座ったファイ子が、サッと俺の横から一冊取り去って、高速でめくって読み終え、深くため息をついてきた。


「哀れですねえ……」

どこかで聞いたような見下したいい草をしたエリンガ人に、俺は同人をめくりながら、とくに考えずに

「もしかして二次元の楽しみ方ががわかんないとか?」

ファイ子はしばらく沈黙すると

「そんなことはないですがあ……これは……さすがにい……」

いつもより声が小さい。ああ、わかんないのか。と俺が放っといてやることにしたところで、チリがタイミング悪く部室に入ってきた。


同人誌を真面目に眺めるファイ子にチリは驚いた顔をしたあとに、何か気付いた悪い表情になると、こちらににじり寄ってきて

「ファイ子ちゃーん。ネトラレツンデレ公女ものが好きなの‐ー?」

ファイ子は表情を変えずに

「この同人誌のタイトルは亡国の聖女ですがあ」

チリはニヤニヤしながら

「だーかーらー高潔に生きてきた公女ニーサが、愛する旦那の聖騎士長オグニアスを親戚でもある暗愚王オベリウスに同性なのに寝取られて、愛する母国も滅びつつあり、でも悔しいけどネトラレにかんじちゃって、そんな退廃した状況全てにダメなのについ嬉しくなってデレてしまうって本でしょっー?」

とマニアックすぎるファイ子の見つめる同人誌について流暢に解説してきた。

ファイ子は無表情になり

「治療が必要な精神病者を性的に略取しているとは思わないんですかあ?」

チリはしてやったりといった表情で

「エロ目的の二次創作物だけどっ?しょせんは絵よ。現実と絵の区別もつかないのー?」

と言い放った。ファイ子は絶句して俺を見てくる。いや巻き込まないで。といった表情を作って見ないふりをしつつ、いずれ部の規則で同人誌持ち込み禁止にしようと心のなかで固く誓った。

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