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悪口

ファイ子は授業で発言しない。

先生たちも絶対に当てない。

なぜならファイ子の学力は地球人で言えば博士号レベルだからだ。高校には趣味で通っているらしい。本人にそう聞いたので事実かはしらない。ちなみに、この定員割れを起こしている田舎の高校に通う異星人は、ファイ子だけだ。


いつも、この異星人は、二階にあるこの教室の窓際最後尾の席……つまり俺の席の後ろで、黙って頬杖をついたまま、俺の背中に延々と性的な視線を浴びせかけてくる。


俺はもうこいつには慣れたが、あの手この手を尽くし、ファイ子の隣の席に最近移動してきたチリはそうではないらしい。

「ちゃんと教科書開いてよっ」

「あんたもうちの生徒でしょっ?」

などと俺の背中しか見ていないファイ子に絡みまくり、俺はそっちのがうるさくてしかたない。

気弱な先生の授業だと、むしろファイ子に気を使い、チリの方に注意をして、真面目な生徒たちから反感を買っている。


俺は、昼食を屋上の古びたベンチでいつも食べる。

学食に行くと食べもしないのにしょーもないこの異星人が必ずついてきて、他の生徒の邪魔になるからだ。

当然、今もベンチの俺の隣にはファイ子が座っている。

「チリさんは知能が低いですねえ」

いきなり暴言を吐いてきて、食べていた焼きそばパンを噴出しそうになった。

「勉強もせずアニメばかり見て、運動もせずお菓子ばかり食べ、太り気味なのは明らかでしょう?」

さらに暴言を重ねてきたので少し考えてから

「大事な友達なんだけど」

と返すと、ファイ子は立ち上がり

「宇宙は広く過酷ですよお?チリさんでは対応できないのでは?」

両腕を横に広げて、ニコッと笑いかけてきた。

「悪いけど、何言ってるのか分からない」

と返すとファイ子は青空を見上げ、爽やかな表情で

「彼女はいつ、同人誌の処女作を描くのです かあ?いつも構想だけですよねえ」

「お前が意外とチリのこと見てるのだけはわかったわ」

ファイ子はなぜか少し不満げに俺を見下ろし

「怠惰なチリさんは、あなたに見合わない」

見たことのない真剣な眼差しでそう言ってきた。俺は、また焼きそばパンを噴き出しそうになる。

なんとか飲み込み

「もしかしてチリに嫉妬してんの?」

と返すと、ファイ子は一瞬固まってから

いつもの余裕ある表情に戻り、そのまま黙って俺の隣に座り直した。

次の瞬間、少し離れた場所にある屋上から階下に続く扉がバタンッと、けたたましく開けられ、小柄なチリがイノシシのような勢いでこちらに走ってくる。

そして俺達の目の前で肩で息をしながら急停止すると

「私の悪口言ってたでしょっ!」

ファイ子に向けてビシッと指をさし言い放った。俺は爆笑しだして、ファイ子は黙って横を向く。



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