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銀に煌めく手錠

脱衣場で水気を拭き、下着を変えて自室にヨタヨタと戻る。もういい、もうたくさんだ。俺は寝るんだ。どうにかベッドにたどり着いて横たわるとそのまま寝てしまった。


テルミと遊園地でデートする夢を見ていた。とても幸せな気分で起きる。

窓からは鳥の鳴き声と朝の光が入ってくる。

幸せな気分は一瞬で吹っ飛んだ。制服姿のチリとファイ子が腕を組んで見下ろしていたのだ。まだ帰ってなかったらしい。

「お、おはよう」

上半身を起こすとチリは鋭い目つきで

「忘れなさいっ」

と言ってくる。ファイ子も頷いている。

俺の考えていることは丸わかりだろう。

「いや、助けにいかないと……」

「ダメ、もう一人ライバルが増えたら、絶対面倒になる」

俺はついベッドに立ち上がり

「でも嫌だろ!高校の元同級生が俺をオカズに毎日自家発電してるなんて!」

二人に吠えた。

チリは固まり、ファイ子は確かにーといった感じで深く頷いたので、そちらを見ると

「それは止めるべきではありますねえ。現在の弱った彼女からすれば、無用なエネルギーの放出ではありますしー。回復すれば私としても観察対象が一人外れて楽になりますからねえ」

「そもそも何でテルミのプライベートまで監視してるんだよ」

ファイ子は意外そうな表情で

「自分を傷つける可能性が高い方ですよお?何かあったら緊急搬送せねばなりませんしい」

「……一応、気にしてやってはいたんだな」

ファイ子は説得できたようなのでチリをジッとみると

「うー。オナ禁させるだけだからねっ」

渋々納得してくれた。

高校は都合の良いことに今日は土曜で休みだ。


2時間後には俺たちはテルミの家の前に立っていた。……いや、立っているはずだったのだが、

郊外の山に囲まれた閑静な団地の端にある、二階建てのどこにでもあるような造りの家は、幽霊屋敷のようにガラス戸の向こうの障子が破れ放題で、庭はセイタカアワダチソウが高々と伸びているほど、草木で覆われている。

どう見ても、人は住んでいないだろう。

自信満々でこの場所を教えてくれたファイ子を俺とチリは黙って見つめる。

「……おかしいですねえ。つい昨日まではここだったのにい」

どうやら本気で困惑しているようだ。

「……やってしまったかもしれません」

いつの間にか背後に立っていたエネの言葉にビクッとなりつつ振り返ると

高校の制服姿の彼女は3人分の銀に煌めく手錠を持って立っていた。

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