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完全に間違いだった

漫研はなかった。チリガいないので当たり前だが。この世界の俺はどうやら、野球部の補欠部員らしく、人数が足りないときだけ試合や試合形式の練習に呼び出される感じらしい。そんなわけで久しぶりに放課後、野球の試合をして、硬球にビビりつつも二安打二四球レフト守備もノーエラーと上機嫌で部室で帰るために着替えていると、羽中島が

「おい、テルミ来てるけど」

微妙な表情で言ってくる。南河テルミ、ツインテールを金髪に染めてスカートを短く切っている高校で一番のギャルでヤンキーだった。だった、というのは俺の記憶では一年の終わりに中退しているからだ。

こっちの世界では辞めてないのかー。そっか、などと思いながら部室の扉を開けると

恥ずかしげに俯く、黒髪をツインテールにした美少女が居た。和風の鼻筋が通った涼やかな顔面と、俺の世界の化粧バリバリのテルミのイメージが重ならず戸惑っていると

「えいなりくんっ。今日全出塁おめでとう」

美少女は俺に抱きついてくる。

背後の羽中島を振り返ると、大変だなと言った表情で頷いてくる。

完全に意味が分からないので、美少女に

「ちょっと外で待っててな。マサシと今後の試合について打ち合わせが……」

と言いながら扉を閉めると、羽中島が俺を部室の奥まで手を引いていき

「遊びでテルミ脱ギャル計画とかやらんかったらよかったなあ」

心底後悔した表情で言ってくる。


戸惑いつつも適当に頷くと

「ほら、テルミがお前のこと好きすぎて目立つ為にギャルになったって知ったときは、超笑ったけど、お前への気持ちをさー」

真剣に凹んでいる羽中島にとりあえず相討ちを打つと

「恋心を弄んだのはマジで失敗だった。あっこまでストーカー化するとは思わなかった。すまん」

「ま、まあな」

何となく分かってきた。この世界の俺と羽中島と恐らく野球部員たちは、テルミの俺への恋心を利用して、ギャルだったテルミを黒髪、化粧無しの地味子に改造して遊んでいたようだ。そして本気になったテルミに手を焼いているらしい。

……控えめに考えてもアホだと思う。

俺ならやらない。

よし、ならば、俺が敵をとってやろう。

この世界の俺に制裁しつつ、俺も得をする良い方法がある。と思ったのが完全に間違いだった。




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