降りるよー
「いや、神社壊れてたよな」
「何がですかあ?記念写真とりましょー」
俺は首をかしげながら、賽銭を入れてお参りしたあと、社をバックに、俺とファイ子で写真に収まる。ナニコは少しずつ角度を変えて撮るとカメラをファイ子に返した。そして暇そうにしている女児の手を繋いで
「おっけー!ちゃんとついてきてねー!」
と誰もいない背後に向かって元気よく行って女児と石段を降り始めた。一瞬気になったが、それよりも、ナニコと女児の姿が消えるとファイ子が俺を抱きしめて
「……好きですう」
と唇にいきなりキスをしてきて、全て今まで気になっていたことは吹っ飛んでしまった。
ファイ子は舌を俺の唇につけて、一瞬迷った雰囲気になったあと顔を離し
「あのお……えいなりは……私の体液があ、入っても……」
独特の言い回しをしてきた。
「ファイ子、ナニコさん達が見てる」
石段から戻ってきたナニコと女児がジッとこちらを見てきていた。ファイ子は慌てて
「あっ、あとにしましょうー」
麦わら帽子で赤くなった顔を隠す。
バス停でまたバスを待っているとナニコが
「あ、あのさー……彼氏ってどうやってつくるの?」
ファイ子に近寄ってボソボソと尋ねる。
ファイ子は不思議そうに
「ナニコさん、からかわないでくださいー」
ナニコは唸ったあとに
「……本気で聞いてるの」
ファイ子はクスクス笑って
「私も、えいなりと付き合っていませんよー?」
「うそだー!キスしてたの見たし!」
女児もウンウンと頷いて俺を見てくる。
「い、いや、何ていうか……」
俺が認めるのを期待した潤んだ瞳のファイ子の視線が一番痛い。誤魔化しているとバスが来て逃げるように乗り込む。
当然のようにファイ子は隣に乗ってきて
「えいなり、幸せですねえ……」
ウットリと言ってくる。その後ろではナニコは無口な女児に
「ミイちゃん私さーモテなくてー。付き合ったことないの」
などと真剣に相談しだした。何となく俺たち以外乗っていないバスの扉が閉まるのが遅い気がしたが気のせいだろう。
誰も待っていないバス停をいくつか通り過ぎてバスは停車する。料金を支払って降りると、目の前には舗装されていない比較的広い山道が上に伸びていた。背後ではバスが出発して去っていく。
「お墓参りだー!」
全く疲れの見えないナニコは女児を背負って高速で駆け上がっていく。苦笑いしながらファイ子に手を繋がれて後を追う。
山道をしばらく上がると、何段もある集団墓地が見えてきた。ナニコは全く迷わずに、最上段も最も高い位置にある大きな墓石の前で俺たちを待っていた。女児も隣で飴を舐めている。そしてナニコはその「山根」と書かれたら墓石を音もなく横にずらすと、その下に現れた縦穴を指差し
「降りるよー!この先なのです」
と言ってきて、神社参拝と同じく普通の墓参りだと思っていた俺とファイ子は驚愕する。




