不思議な時間
女児をナニコは肩車して
「いくよー!」
無邪気に砂浜から国道の方へ歩きだす。俺はファイ子の顔を見ると
「心配無用ですう。それよりえいなり、手をー」
右手を差し出してきたので握ると
「……良いものですねえ」
と言いながら、ナニコの方へ向いて俺と歩き出した。
国道沿いの歩道を4人で歩いていく。
「仕事がー……忙しくてえ、でもえいなりの顔を思い浮かべたら頑張れましたあ」
海からの風がファイ子のワンピースを揺らす。
「どんな仕事?」
「……ニャンヒカルの後任の選定が進んでいてえ……私は拒否しましたー」
「ああ、捕まったから仕事全部クビになったんだな」
よく考えたら何も悪いことはしていないが、悪いことは企んでいそうなので自業自得かもしれない。ファイ子は海と山間にかけて広がる町を見回し
「この町、時空間異常が観測されていますねえ」
「……そうなの?」
「しかも、深刻ですよお……小中高の校舎には定期的に調査員が入っているレベルですねえ」
「婆ちゃん達が何か仕込んでるな」
俺でも気付く。
バス停でナニコはバスを待ち始めた。
俺とファイ子も手を繋いだまま、立ち止まって海風に吹かれる。
都会の人はわからないらしいが、田舎ではバスや電車は数十分は待つのが当たり前だ。そして定刻につかないことも多い。十分程度でバスが到着して、切符を取りながら乗り込み、エアコンの効いた車内の、後方の席にに固まって座る。俺たち以外に乗客は居ない。
バスが走り出して窓から、見える海と砂浜を眺めていると
「最高のデートですねえ……」
ウットリした表情でファイ子が肩に頭を乗せてくる。
「……」
すぐ横で二人並んで飴を舐めているうちの親戚の叔母さんと謎の女児は見えていないらしい。
とはいえ、余計なこと言うほど俺もガキではない。不思議な時間が過ぎていく。
桜塚神社前で俺たちは料金を支払い降車する。女児の分はナニコが支払っていた。石段を登り、小山の上の神社へとたどり着くと、境内も社も鳥居も全て破壊されて、石畳には大きな穴すら幾つも空いていた。
ナニコが
「あー……」
と残念そうに言いながら、右腕を上げると
次の瞬間には、全てが綺麗に直っていた。
「色んなものをね、重ねて組み合わせちゃったから、時々おかしくなるね」
ナニコはそう言うと、女児の手を繋いで社へと歩いていく。ファイ子は興味深そうに
「やはり、関係ありましたかあ」
と言ったあとに、古いアナログの使い切り携帯カメラを取り出して
「写真、撮りましょう」
と微笑んだ。




