初の子
ワープしてきた先で
「お姉様ー……」
ヘラナはそう言うと頬を膨らませて横を向いた。チリは苦笑いして
「ごめーん」
爺ちゃんは腕を組み
「チリちゃんの想いが勝っただけじゃ」
ヘラナは頷いて悔しげに
「もっと曲に磨きをかけねば。タカユキさん、西瓜梨子のプレミアムデビューレコードはまだ手に入りませんか?」
悟りきった達人そのものだった爺ちゃんは急に焦った顔になり
「マフオクで20万はのう……セインも十五万が値引き限度というとるわ」
ヘラナは真剣そのものな眼差しで爺ちゃんに詰め寄り
「タカユキさんならわかるはずです!レコードの手触り!デザイン!それらも西瓜梨子の一部なのです!学ばねば」
「……うう、ヘラナさんのお母さんは何ていうとるかな……?」
ヘラナは得意げに
「ナニコお母様は長期出張で剣と魔法の惑星を救いに行ってますわ!私を見ている暇はありません」
確かに大作RPGの世界に籠もりっきりだ。そして確かにヘラナの親になったと言っていた。爺ちゃんはボソボソと
「そろそろわしを祖父と認めてくれんか?」
「絶対違います!あの美しいお母様がタカユキさんの子のわけがありません!」
爺ちゃんは髪の無い日焼けした頭を触りながら
「母親の遺伝子が強いんじゃ」
爺ちゃんはそう言って黙り込んだ。
公園のベンチで四人で休憩して、近くの雑居ビル内のヘラナの家に向かう。
中には所狭しとCDやレコードやゴスロリ服などが置かれて、吊るされていた。
ヘラナは得意げに
「全て、向こうの世界から持ってきたものですわ」
「百万どころじゃなさそうだけどっ?」
チリが尋ねると爺ちゃんが
「わしが買ってやっとる」
「爺ちゃんさー……買いすぎだろ」
俺の生涯合わせても絶対こんなに小遣いもらって無い。爺ちゃんは申し訳無さそうに
「ナニコの初の子だと思うとな……あの子が産んだわけでないにしても、どうしても甘くなってのう……」
チリはヘラナに詰め寄って
「おじいちゃんだと今すぐ認めて!じゃないと逮捕させるよ!」
何の罪になるんだよ……という脅しをかけた。ヘラナは本気でビビって
「も、もしかして……援助交際になるんですの?」
2007年の今はもう廃れつつある言葉を出してきた。チリは確信に満ちた顔で頷いて
「おじいちゃんをヘラナちゃんのパンツを買った罪で逮捕させる」
「わし……?」
「お姉様……何でタカユキさんを……」
「そしたらヘラナちゃんが困るし!」
えっと多分、それくらいでは捕まらないと思う。チリワールドでは捕まるんだろうが……。ウブなベラナは本気で戦慄して
「チリお姉様……賢き方だったのですね」
「校内模試二十位の私には勝てんしっ」
「さ、さすがです……」
うちの田舎公立高校の模試で二十位取ったからってなんてことはないのと 、その二十位が実は下から二十番目なのは俺は知っているが友達の名誉のために聞かなかったふりをする。ファイ子の知能の高さが恋しくなる会話が繰り広げられつつある。




