7 一宿一飯の恩返し
祝1000PV達成!
いつもお読みいただきありがとうございます。
自衛隊の基地で分けて貰った食事はカレーだった。具材がゴロゴロしたタイプで、”世界を渡る魔法”で大量の魔力を消費して空腹だった私は、数人前をぺろりと平らげてしまった。ごちそうさまでした。
その後、少し満腹でうとうとしていたところ、自衛官の山本さんにこの後の予定を聞かれた。
「もう一度”世界を渡る魔法”を使える魔力が貯まるまで、何日か地球に滞在したいと考えています。……やはりご迷惑でしょうか?」
「いいや、滞在するのは構わないとも。むしろ政府の関係者から、君と話し合いできる場を設けて欲しいと言われているからね。時間があるようなら、ぜひお願いしたい」
「えぇ、特に予定はありませんから、問題ありませんよ」
「それは良かったよ、早速伝えておこう。 …そうだ、滞在するというなら部屋が必要だろう。この基地の宿舎の空き部屋で良ければ用意できるが、どうするね?」
「いいのですか?! ぜひお願いします! お金の持ち合わせがないので野宿でもしようかと思っていたんですよ」
「それはやめなさい」
怖い顔で注意された。
地球なら魔物に襲われることもないから、別に危険なこともないのに。ちゃんとペンダントの中には旅の道具も一式入っている。入れっぱなしとも言うけど。
そんな感じで基地に泊めて貰えることになった私は、ありがたく厚意に甘えてその日はぐっすりと眠った。やっぱりお布団は落ち着くね。
~~~
次の日。
朝目を覚ますと外は土砂降りの天気だった。昨日まで雲一つないいい天気だったのになぁ。羽根が水分を吸って重くなるから、雨の日はあんまり好きじゃない。
少し重くなった翼と足取りですれ違う人に挨拶しながら、昨日カレーを貰った食堂に行く。すれ違った人は一瞬驚くけど、忙しいのかすぐにどこかへ行ってしまった。何かあったのかな?
「おはようございます」
「おはよう。 噂の天使さんは、ずいぶん寝坊助さんだね?」
食堂に着くと給仕係のおばちゃんしかいなかった。そんなに寝坊したかなぁと時計を見ると9時だった。うん、流石に緊張して疲れてたからね。
「皆さん、忙しそうにしてましたけど何かあったんですか?」
「大きな土砂崩れがあって災害救助の要請が入ったみたいだね、ほらニュースでもやってるよ」
寝坊助さんには特別メニューだ、と言って渡されたおにぎりを受け取る。おかずは残っていなかったみたいで塩おにぎりだった。
椅子に座ってモグモグとおにぎり頬張りながらテレビを見ると、「大型の台風接近、S県で大規模な土砂災害が発生」とテロップに書かれていた。
相変わらず日本は自然災害が多いようだ。リポーターは大雨の中、現地の中継をしている。土砂災害のあった現地は、今も降り続く雨で救助もままならないようで、とても大変そうだ。
「ごちそうさまでした。おにぎり、美味しかったです!」
食事をすませた私は、食堂を出て昨日話をした山本さんを探す。
一宿一飯の恩というし、私も救助のお手伝いにいこう。見て見ぬふりをするのも嫌だからね。
山本さんに「私も救助を手伝いたい」と申し出たら、案の定渋い顔をされた。
仕方がない。昨日会ったばかりの異星人をいきなり信用出来るわけがないよね。
「それでは、現場の方に私が行くことだけでも、伝えておいてください」
「待つんだティアラ!」
「山本さん、ごめんなさいっ!」
だから私は勝手に手伝いに行くことにした。
迷惑かもしれない、混乱させるだけかもしれない、信用されていないかもしれないけど、私は私のやりたいことをやると決めてるんだ。
それに私は魔神討伐の旅で学んだ。行動で示してこそ、人は信用されるんだ。
私は雨が降りしきる中、翼が濡れるのも構わず外に出る。
まずはこの嵐をなんとかしないと。
手を組んで膝をつく。長い髪が風にはためいて気が散るが、意識から外すようにして集中し、魔力を練ってイメージを膨らませる。
風を止めて雲を散らして嵐を払う。範囲は……めんどくさいから適当でいいや。とりあえず広い分には困らないはず。
……よし、出来た。
「”光よ、嵐を払え”」
私はエムニア語で魔法を紡ぐ。
イメージは強固に、詠唱はシンプルに、そして魔力は潤沢に。
これでだいたいなんとか出来るんだ。
私を包んでいた金色の光が弾けて空へ昇り、光の柱となって分厚い雲を貫く。
雲に開いた穴を押し広げるように、音が駆け抜けるような速さで黄金の幕は周囲へ広がった。
あとに残されたのは、宙に残る金色の光の残滓と雲一つない凪いだ空だけだった。
「……よし! では行ってきますね!」
空を見上げたまま呆けて固まった基地の人たちを残して、私は土砂災害の現場へと飛び立った。
災害救助は72時間がリミットと聞くし、急がないと。
気象庁「なんか急に台風消えたんだけど???」