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転生天使の異世界交流  作者: 水色みなも
第二章 交流準備
29/43

閑話 天使のアキバ散策 その1

予約投稿になります。

お待ちいただいている間、よろしければ閑話をお楽しみください!


 国連本部でスピーチをした日から数日後。

 私はホテルでぐったりしていた。


 あれから毎日、会議、会議、会議、会議だったのだ。


 いや、エムニア側の人が私しかいないから、私が出席しないといけないのは分かってるよ?

 でもね、流石に毎日8時間以上もずぅーっと会議はどうかと思うの。

 天使族がタフとはいっても、精神的にはたぶん地球人とそんなに変わらないと思う。


 私も最初は真面目に会議に出席して話を聞いたり、意見を言ったりしていたけど、後半はほとんど居眠りしてた。なんで寝ちゃダメな場で寝るのって気持ちいんだろうね…。


 そんな風に、明らかに疲労が溜まっているのが伝わったのか、伊達さんがどうにか調整してくれて、私たちは丸一日お休みをもらうことになった。

 ありがとう伊達さん…!


 それでお休みはもらえたんだけど、外出はダメ出しされた。


 なんでもアメリカでは私の身の安全が確保できないからだそうだ。


 そういえば、アメリカでは私の訪問を快く思わない人もそれなりにいるんだっけ。

 それなら仕方ない、何かあったらアメリカにも迷惑がかかっちゃうしね。



 ニューヨークでの滞在先である高級ホテルの高層階。

 そんなことを考えながら、ぼーっと窓の外を眺める。


 この部屋は壁一面ガラス張りなので、ニューヨークの夜景が一望できる。


 高級ホテルの一室から都市の夜景を眺めるなんて、なんだか映画でありそうなシチュエーションだ。


 「……まるで籠の中の鳥ですね」


 私は夜景を見下ろしながら物憂げな顔でポツリと呟いてみた。


 こういう、普段だったら絶対あり得ないシチュエーションに遭遇すると、ちょっと小芝居をしたくなるのは私だけかな。


 「ティアラお嬢様……」


 はっ!

 そうだった、この部屋には円華さんも居たんだった!


 ホテルの室内での円華さんは基本的に私が声をかけない限り、静かに扉付近で待機している。

 あまりにも静か過ぎて、そこにいることを意識しなくなっちゃうんだよね…


 声のした方を振り返ると、円華さんが申し訳なさそうな顔をしていた。


 「窮屈な思いをさせてしまい申し訳ありません。 今、警備体制の見直しやアメリカ国内の反対派を抑えようと動いているそうですので、もうしばらくの辛抱ですわ」


 「いえ、私こそわがままを言ってすみません。円華さんとお出掛けしたかったのですg—」


 「いきましょう」


 「え?」


 「お出掛け、いきましょう。すぐにお召し物を準備いたしますわ」


 「あの、円華さん??」


 円華さん、すごいウキウキで部屋を出ていったんですけど??

 あ、衣装ケース持って戻ってきた。




~~~




 ということで、ニューヨークでの滞在先の高級ホテルをコッソリ飛び出して、やってきました日本のアキバ。


 何でアキバかって?


 円華さんが「ティアラお嬢様の行きたいところにしましょう」と言ってくれたので、お言葉に甘えました。


 娯楽の中でも、サブカルと言ったらアキバかなぁと思って。

 前から興味はあったけど、機会がなくて一度も来たことがなかったんだよね。


 うん、今日ここに来れただけでも、魔神討伐の旅をがんばって良かったと思えるよ…。



 それはそうと、すごい人混みだ。

 たしか今日は平日だったはずだけど、そんなの関係ないくらい人が多い。


 メイドに、ゴスロリ、和服、それに外国からの観光客もたくさん見かける。

 これだけ人種も服装も入り乱れていれば、天使が一人くらい紛れ込んでもバレないでしょ。


 とはいえ本当にバレたら大騒ぎになるので、ちゃんと変装はしている。 


 今日の私は、長いダークブラウンの髪を金色のリボンで一つにまとめてポニーテールにしている。

 服装は水色のセーラー服風のワンピースで髪型と合わせて夏らしい恰好だ。

 背中には羽根をモチーフにしたアクセサリつきの丸いリュックサックを背負っている。


 ワンピースはただの(と言っても天使族の私が着られるように特注品らしい)服だけど、リボンとリュックサックはマーロィにお願いしていた特注の変装魔法具である。


 リボンには髪色を変化させる魔法、リュックサックには翼の収納する魔法がかけられていて、お忍びには最適だ。

 マーロィには、お礼に何かお土産を買っていこうと思う。


 「お嬢様、そのお姿も大変可愛らしいですわ」


 「ありがとうございます、円華さんもなんだかいつもと印象が違いますね」


 円華さんも、今日はメイド服ではない。

 とはいってもホワイトプリムとエプロンドレスを外しただけなんだけど。

 今はシンプルな中に品の良さを感じる紺色のワンピース姿だ。うーんお嬢様。



 ちなみにアキバまでの移動は、私が円華さんをお姫様抱っこして空を飛んできた。


 前に全力で飛ぶと周囲に影響が出る、と言ったけどあれは正確にいうとちょっと違う。


 正確には「転移の補助魔法具に魔力を補充している状態」での全力なら、なんだよね。

 転移魔法は膨大な量の魔力を必要とするから、その補充も大変で、10日で満タンにするにはだいたい私の魔力の自然回復分の8割から9割を注がないといけない。


 だから、魔法具への魔力補充をストップして100%の魔力が使えるなら、隠蔽状態(ステルス)を維持して周囲へ影響を与えず、飛行機で数時間の距離を数分で移動することだってできる。


 ふふん、魔法に関しては私はちゃんと出来る子なんだよ!




~~~




 私は円華さんと手をつないで歩く。

 

 ちょっと恥ずかしいけど、これは迷子対策だ。

 主に私の。


 私は別に方向音痴ってことはないんだけど、道が入り組んでいるうえに人が多いので、ちょっと油断するとすぐにはぐれそうになる。というか、すでに2回はぐれた。


 興味を惹かれるモノや人が多いのがいけない、私は悪くないと思う。


 手をつないだ円華さんの表情をちらりと伺うと、満面の笑みを浮かべていた。

 そんな風に幸せそうな顔をされると、なんだかこっちまで嬉しくなる。


 そういえば、誰かと手をつないで歩くなんて、ずいぶん久しぶりな気がする。

 最後にしたのは、前世の妹がまだ小さい頃だったかなぁ。

 …妹は元気にしているだろうか。


 「ティアラお嬢様?どうかされましたか?」


 「ううん、なんでもありません。あ! 次はあそこのお店を見てみたいです!」


 私は円華さんと二人で手をつないで、お店を見て回った。






~~~






 お金がない。


 いや、エムニアのお金ならペンダントの中にあるんだけど、日本円がない。

 つまり、このブルーレイボックスは買えない。


 うぐぐぐ。


 立ち寄ったお店で見つけたのは、まだ私が地球にいた頃、もう十数年前のアニメのブルーレイボックス。

 しかも未開封のものなんて次にいつお目にかかれるか分からない。


 今の時代、アニメを見るならサブスクがいいのかもしれないけど、ネット回線の届かないエムニアでは視聴できないんだよね。

 でもブルーレイボックスなら、再生機器があればエムニアでもアニメが見れる。

 ぜひ欲しい。


 「購入費用なら、わたくしが出しますわよ?」


 「いやっ、そういう訳には…! 人のお金で買うわけには!」


 円華さんの提案はありがたいけど、人のお金でグッズを買うのは、私の中のオタクが腕をクロスして首を振っている。

 趣味や娯楽は自分の力で手に入れてこそ、心から楽しめるというものなのだ。


 それはそれとして、今すぐ使えるお金は欲しい。


 手持ちの魔法具を売って、現金を手に入れるのはどうかな?

 …いやいやいやダメでしょ。


 私の持ち込んだ魔法具は国連に届ける約束をしたばかりだ。

 どんな影響が出るか分からないから、直接魔法具を売るのはやめて欲しいと言われてるし。


 バイト…はそんな急に働けるわけないよね。

 隙間時間にバイトするっていうアプリもあったような気がするけど、流石に異星人には対応してないだろうし。


 うーん、うーん…


 ブルーレイボックスを手に持ったまま、あれこれ頭を捻ってみたけどいいアイディアは浮かばなかった。

 

 …………仕方ない、今回は諦めよう。


 私は泣く泣く手に取ったブルーレイボックスを棚に返した。

 どうか次買いに来るときまで残っていますように…!


 そんな私を見かねたのか、店員さんが声を掛けてきた。


 「あの、そちらの商品ですが、数日でしたらお取り置きしておくこともできますよ?」


 「えっ、本当ですか?!」


 「え、えぇ。新作というわけでもありませんので。流石に1週間もお取り置きしておくことは出来ませんが…」


 数日、数日かぁ。

 数日以内に日本の、もしくは地球のお金を手に入れるアテは……残念ながらない。

 今はまだ魔法具と娯楽品の物々交換なので、現金でのやりとりはないのだ。

 交流がすすめば、いつかは手に入るかもしれないけどね。


 「提案ありがとうございます。 でも、ごめんなさい、数日以内にお金を用意することが出来そうにないので……また今度来ようと思います!」


 「そうですか、それは残念ですが仕方ありませんね…。またのご来店をお待ちしております」


 私は後ろ髪を引かれる思いで、お店を後にした。



 1時間以上、さっきのお店にいたみたいだ。

 スマホを取り出して時刻を確認すると、そろそろお昼時だった。


 「円華さん、そろそろお昼にしませんか? …と言っても私お金持ってないんですけどね」


 私は苦笑しながら円華さんを振り返った。

 目を瞬かせる円華さん。


 「ティアラお嬢様、お金なら伊達さんから活動経費を預かっておりますので問題ありませんわ」


 「あっ、そうだったんですね」


 なるほど、流石は伊達さん。準備がいいね。


 「もしかして、先ほどのお店で言ってくれた購入費用も?」

 

 「いえ、あれはわたくしのポケットマネーです」


 「え」


 「伊達さんから預かっているのはあくまで予備、ティアラお嬢様のお食事代やお洋服代はわたくしが支払うつもりですわ」


 流石にそれは申し訳なさすぎる。

 何から何まで円華さんに支払ってもらうのは、元男性としてプライドが…


 「推し活はわたくしの生きがいですので」


 円華さんは涼しい顔でしれっとそう言った。

 何となくそうじゃないかなぁ、とは思ってたけどやっぱりそうだったらしい。


 ま、まぁいいや。

 今はとにかくお昼を食べよう。


その2へ続きます。

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