10 初めての会談 その2
本日は2話目の投稿です。
こちらはちょっと短めです。
会談の次の話題は、異星人の私を正式に紹介するための記者会見についてだった。
私に関連する日程調整や確認は、伊達さんたち特殊案件対策室の担当らしい。総理や教授はやっぱり忙しいのか、次の予定があると断って会議室を出て行ってしまった。
それなので、今は伊達さんを中心に予定を詰めているところだ。
「それでは3日後、国会議事堂で行う記者会見でティアラさんを正式にエムニア星からの来訪者として紹介させて頂こうと思います」
「はい、分かりました。当日は国会議員堂の中庭から飛んでいけばいいんですよね?」
「えぇ、あの巨大な魔法具と一緒に飛んできてください。先日ティアラさんが東京に出現した際、あれを目撃した方は大勢いました。ですが政府としては確認中との声明しか出せておりません。国民の皆様には、そろそろ種明かしをするべきでしょう」
「うっ、あの日はすみませんでした……」
「いえいえ、細かな場所の指定は出来ないのでしょう? 仕方がありませんよ」
伊達さんはそう言ってくれたけど、すごく疲れた顔をしている。確かに呼び声の魔法を使って転移位置を設定する都合で、どうしてもざっくりな場所の指定しか出来ないのは事実だけど…。
私が申し訳なさで唸っていると、伊達さんは苦笑しながら次の話題にうつった。
「それでティアラさん、次に地球に来られるのはいつ頃になりそうでしょうか?」
「えぇと、はっきりとは言えませんがエムニア星に帰ってから10日以上は後になると思います。転移するために魔力を貯める必要がありますので」
「先ほど仰っていた巨大な魔道具のことですね。出現場所については細かく指定できないとのことですが、どのように指定しているのか伺っても?」
「はい大丈夫ですよ。 ”呼び声”という魔法で地球の方に魔力で呼びかけて、返事を返してくれた方を目標に位置を決定しています。ですので、私が呼びかけた時に伊達さんや対策室のどなたかに返事をして頂ければ、一応、近くに転移することは出来ると思います」
私もまだ使い慣れていないので、明言出来ないのは勘弁して欲しい。もう少し練習出来れば、今よりはましな精度になると思う、…なるといいな。
私がそう答えると伊達さんは眼鏡に手を当てて考え込んでしまった。
何か問題があったのだろうか。もしかして不特定多数に声をかけるのはマズイとか…?
心配になった私はそろそろと声をかける。
「どうされましたか?」
「いえ、場所の大まかな指定が出来ることはありがたいのですが…。 呼び声に応じるにしても、その…タイミングなどが分かればありがたいな、と思いまして」
あー、なるほど。そうだよね。
10日以降にそちらに行きます。だけど、行くタイミングは分かりません。そんな条件を言われたら、10日目以降はずっと待機してなくちゃいけない事になるよね。
流石にそれは申し訳なさすぎる…。
あっ! そうだ!
「ちょっと待ってくださいね! いいモノがあります!」
私は自分の翼を目の前に持ってきて、羽根を一枚取る。
翼から離れてもキラキラと私の魔力で輝くその羽根に、一つの魔法を込める。
「”我が身の欠片を依代に、写し身よ、ここに形成せ”」
私が魔法を唱えると、光が寄り集まって羽根を包む。
光がおさまると、そこには私を二頭身にデフォルメした手のひらサイズの小さなぬいぐるみが一つあった。
「よし、出来ました」
「ティアラさん、それは…?」
困惑したようにこちらを見る伊達さんに、私はアニメキャラのグッズみたいな「ティアぬい」を差し出して、使い道を伊達さんに説明する。
「これをどうぞ! 私の羽根を使って作った魔法具で、この子は私の魔力に共鳴して光ります。ですのでこの子を確認して貰えば、私が呼び声の魔法を使っているかどうかが一目で分かります」
元々は魔神討伐の旅で、通信魔法の使い捨ての受信機として使っていたものだ。私からの一方通行でしか連絡出来ないし少しかさばるけど、材料は私の羽根と魔力だけなので簡単に作れて便利なので重宝していた。ちなみに見た目は完全に趣味である。
「あ、ありがとうございます。ありがたく使わせて頂きます」
ぬいぐるみを受け取った伊達さんは何だかちょっと様子がおかしかったけど、これで次回来訪するときは事前に地球側が把握出来るはずだ。アポなしよりはずっといいはず。
「…使うって何に?」「伊達さん……」
何だか後ろからひそひそ話し声が聞こえたけど、もしかして伊達さんだけぬいぐるみを貰ってズルイとかだろうか。ちょっと恥ずかしいけど、簡単に作れるので他の対策室の人にもプレゼントしておいた。
エムニアにはぬいぐるみとか全然ないから、孤児院とか教会の子供たちにはそこそこ人気だったんだよね、ティアぬい。調子に乗って仲間にもプレゼントしたら、マーロィが使い終わったティアぬいを魔法具の中に入れていたのを見かけて涙目になったことがある。確かにほぼ魔力の塊だけどね…。
そんなこんなで、私はどうにか日本との初会談を無事に乗り切ることが出来た。
記者会見までの数日は、非公式の立食パーティーにお呼ばれしてお土産を貰ったり、伊達さんと打合せをして詳細のすり合わせをしたりして過ごした。
明日はついに記者会見の日。
これからの交流に向けての大切な第一歩になる、頑張るぞ!
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