インドパシフィック合同軍編 第1章 インドパシフィック合同軍
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。
アメリカ統合軍インドパシフィック合同軍司令部が置かれる、アメリカ海軍太平洋艦隊管轄するアメリカ海軍横須賀基地に、ジョージア・ジョン・フォーリー大将が公用車で、正面ゲートを通過した。
「大将に昇進して・・・本国勤務かと思ったが、結局、アジア勤務か・・・」
フォーリーは、つぶやいた。
タイムスリップの準備は行われており、在日アメリカ軍、在韓アメリカ軍、在台湾アメリカ軍は、戦時下の編成が行われている。
在日アメリカ陸軍の施設、キャンプ座間を基幹に、第1軍団が本国から本隊が派遣され、4個師団が到着した。
在日アメリカ海軍も、第7艦隊が戦時編成下に置かれて、艦艇40隻から70隻に増強された。
在日アメリカ空軍も、在日アメリカ海兵隊も、戦時編成が行われている。
在日アメリカ軍施設及び敷地内の警備を任されている日本人警備員も、増員され、さらに娯楽施設の日本人従業員数も、増加した。
アメリカ統合軍インドパシフィック合同軍司令部が置かれた庁舎前に、公用車が停車した。
司令部庁舎の警備を任されている陸海空軍の憲兵(MP)が、停車した公用車の後部ドアを開ける。
「ジョージア・フォーリー大将ですか?」
公用車を降りると、1人の上級士官が、挙手の敬礼をしていた。
「そうだ」
フォーリーが、頷く。
「フォーリー大将の副官に任じられました。ルーク・スロット・レイトン大佐です」
「レイトン・・・これも神のお導きかな・・・太平洋戦争時、太平洋艦隊司令長官に就任したチェスター・ウィリアム・ニミッツ大将の幕僚であるエドウィン・トーマス・レイトンが情報主任参謀になった」
「神のお導きか、どうかはわかりませんが・・・エドウィン・トーマス・レイトンは、私とは血縁関係者になります・・・どちらかと言うと、悪魔の導きかもしれません」
「貴官も、なかなか言うでは無いか・・・」
「恐縮です」
「編成表には目を通したが、詳しい事を知りたい。書類の準備は出来ているか・・・?」
「サー、完了しています。執務室にデスクの上に置いていますので、ご覧ください」
「うむ」
「日本や韓国、台湾から派遣された連絡武官や文官は、到着しているか?」
「サー。到着しています。閣下がいつでも公務が出来るよう資料を纏めています」
レイトンが、眼鏡をかけ直した。
「それと閣下。第7艦隊第70任務部隊司令官、カーティス提督が、閣下が到着したら、面会をしたいと要望がありましたが・・・」
「カーティスらしいな。会おう」
「わかりました」
第7艦隊第70任務部隊第7空母打撃群司令官であるロイ・レイモンド・カーティス少将(1つ星)は、猛将提督として有名であり、日本、韓国、台湾の海上戦力とは合同演習を行い。その指揮能力と攻撃的な性格から恐れられている。
そのため日本国海上自衛隊の将からは、猛将と恐れられたハルゼー提督は、このような人物だったのか・・・と評価されている。
第7艦隊は、フォーリーが中将だった頃、司令官職についていた。
そのため、海軍に在籍している将官たちに関しては、ある程度に顔見知りである。
もちろん、陸軍、空軍、海兵隊にも顔はきく。
「カーティスとは部屋で会う。すぐに来るように伝えてくれ」
「了解しました」
フォーリーは、司令部庁舎に入るのであった。
「それで、私の今後の予定は・・・?」
レイトンが、手帳を開く。
副官から予定を聞き、カーティスとの面会時間を確保した。
執務室に案内されてから、しばらくしてからカーティスが部屋に入って来た。
ネイティブアメリカン系の肌の色をした、精悍な男である。
「空母がドック入りだと、やる事が無いな」
「まったくです」
「コーヒーを、飲むかね?」
「いただきます」
フォーリーが、執務室に常備されているコーヒーを淹れる。
部屋の中に、香しいコーヒーの香りが満ちる。
「閣下も、面倒な役目を引き受けましたな」
「なあに、誰かがやらなければならない。それに、この時代に残っても、退屈なデスクワークしかやる事がない」
「そうですな・・・今の時代、紛争こそあれど、大きな戦争は無い。軍人として生きるのであれば、大きな戦争を経験したい。それは武人の本望です」
「だが、その敵は、過去のアメリカ人だ」
「私たちとは違います・・・それに、戦争になるか、どうかも、わかりません」
カーティスの言葉に、フォーリーが頷く。
戦争回避のための工作は、当然、行われる。
若しかすれば戦争を回避出来るかもしれない・・・それは、日本側から提出された行動計画書だ。
「あの計画書には、目を通しました・・・いささか、楽観的思考な気がするが・・・」
「それは仕方ないだろう。やらなかったら、やらなかったらで、新しい時代の後世の者たちに非難される。我々も戦争回避を行った・・・そういう建前が必要なのだ」
「ですが・・・大日本帝国人たちが、我々を受け入れるでしょうか・・・?」
「それは先遣部隊として派遣される者たちの、能力次第だな・・・」
「閣下も、志願したそうですが・・・?」
「上層部からは止められた。インドパシフィック合同軍司令官が不在では、問題があるという事だ」
「・・・でしょうね」
アメリカ軍は、ニューワールド連合軍、ASEAN軍、NATO軍、サラームアライクム連盟軍、アフリカ連合軍、南アメリカ連合軍等の連合軍、連盟軍等の独立軍の上部機関として統合軍を派遣する。
インドパシフィック合同軍は、日本国自衛隊、韓国軍、台湾軍の派遣軍等の勢力の上部機関として位置付けられている。
発言権と拒否権があり、さらに自衛隊、韓国軍、台湾軍等との共同軍事行動と、アジア全域の安全保障を任されている。
ニューワールド連合軍を除く、それぞれの連合軍、連盟軍の上部機関として置かれているアメリカ統合軍は、それぞれの方面を管轄し、安全保障と下部組織の連合軍に加盟する軍と共同軍事行動等を行う。
実際、1940年代にタイムスリップするアメリカ軍は、陸海空軍海兵隊、沿岸警備隊を合わせれば常備軍100万人・・・予備役兵100万以上が投入される。
さらに民間の技術者や専門家たち等を合わせれば、その人数は500万人から1000万人に匹敵する。
「この規模を考えたら、我々は単に過去の世界に侵略するという事に、なっていますね・・・」
「確かに・・・な」
「ニューワールド連合軍連合海軍及び連合支援軍海軍は、かなりの数の空母を保有しているが、連合軍、連盟軍、合同軍に属するアメリカ海軍は、空母1隻若しくは無い状態だ・・・これで地球全域を勢力圏内に置けるか・・・?」
「それは私が判断すべき事ではありません。私は一介の空母打撃群の司令官です。その事に付いては、閣下たちが考える事では・・・?」
「愚問だった」
インドパシフィック合同軍司令部庁舎では、新設された日韓台の制服組と背広組で編成された、連絡調整隊が置かれていた。
日韓台の3ヶ国の軍人及び外交担当と国防担当の文民で編成され、インドパシフィック合同軍司令部及び司令官、その幕僚たちの補佐と、新設される統合幕僚本部と統合作戦司令部との連絡・調整を行う。
インドパシフィック合同軍傘下にも自衛隊、韓国軍、台湾軍等の派遣部隊が指揮下に置かれているのと必要に応じて自衛隊、韓国軍、台湾軍等の独立軍(自衛隊の場合は菊水総隊、破軍集団、防衛局長官直轄部隊)連合軍から派遣された部隊を指揮する事もある。
その際の指揮等も、担当する。
自衛隊側に派遣されている制服組は、将を長として陸海空の将補が3人、陸海空の1佐が6人、補佐として2佐又は3佐が9人、その下に運用スタッフや書類の作成等を行うスタッフが置かれている(スタッフは全員、下級幹部の自衛官たち)。
これとは別に、外務局総合外交政策部安全保障課から派遣された外交要員と、補佐スタッフ、防衛局防衛政策部共同防衛行動課から派遣された防衛事務官と、補佐スタッフが組み込まれている。
連絡調整隊の指揮官は、山浜政留空将である。
因みに自衛隊側の連絡調整隊は、空自から派遣された将であるが、韓国軍の場合は陸軍中将、台湾軍の場合は海軍中将が指揮官として置かれる。
連絡調整隊海上自衛隊班に、鶴井三秀3等海佐が配置されている。
新設されてから時間が経っていないため、莫大な資料を、纏めなければならない。
「え~と、これが編成表・・・これが配置表・・・これが自衛隊派遣部隊表・・・」
鶴井が、1つ1つ書類を確認し、仕分けをする。
「皆、少し休憩しよう」
連絡調整隊海自班・班長の門前実乗海将補が、デスクの椅子に深く腰掛けて、大きく息を付く。
「ある程度には整理出来たし、今から急いでも仕方ない」
門前の言葉に、海自班のスタッフたちが、一斉に背伸びした。
「日本の領土ではあるが・・・ここはアメリカの施設だ。軽食として、おにぎりではなく、サンドイッチが差し入れられた」
門前が、テーブルの上に置かれたサンドイッチを指差す。
「サンドイッチか・・・これだとコーヒーだな」
スタッフの誰かが、つぶやいた。
「残念ながら、備品の中には緑茶や麦茶は無い。あるのは紅茶とコーヒーだけだ・・・」
門前が早速、サンドイッチにかぶりつく。
門前の体格は・・・縦では無く横が太い・・・である。
仕事よりも食べる事をモットーにしているようで、海上自衛隊に入官したのも自衛隊の中で一番美味しいご飯を食べられるというのが理由らしい。
「うむ。この野菜・・・美味い」
ここにいるスタッフたちは、心中で・・・貴方にとっては何でも美味しいでしょう・・・である。
「どうした?食わないのか?なら、俺が全部いただくが?」
門前が、目を輝かせる。
「どうぞ」
門前の補佐として配置されている津々井勝男1等海佐が、代表して答える。
部下たちから許可をとると、門前は、サンドイッチにかぶりつく。
「あの~班長。もうすぐ昼食ですよ・・・」
「これは、10時のおやつだ」
部下からの指摘に、門前は答える。
なんども言うが・・・ここはアメリカ海軍の施設である。
当然ながら、サイズも量も、アメリカンサイズだ。
インドパシフィック合同軍司令部日本連絡将校部・部長であるビル・コンスタント・サンチェス准将は自身のデスクに座った。
インドパシフィック合同軍司令部連絡将校部は、大日本帝国陸海軍との共同軍事行動を行う時に、補佐する役目を持つ。
サンチェスは、アメリカの大学を卒業後・・・日本の公立大学に留学している。
日本文化にも精通しており、日本人の心理の理解もある。
北富士演習場で行われる先遣部隊のタイムスリップするグループの1人でもある。
「サンチェス准将。こちらが資料になります」
副官の中尉が、資料を手渡す。
「万が一に備えて、第7艦隊第76任務部隊第7遠征打撃群を、日本近海に待機させるのと、第7艦隊第70任務部隊第7戦艦部隊を配置させるとの事です」
「ほとんど敵地に近いから、な・・・いくら、問題無いと言っても、彼らを完全に信用するのは問題だ」
彼らが派遣される場所は、大日本帝国であり、1年後には過去のアメリカと全面戦争を始める状態である。
いくら敵では無い未来のアメリカ人とは言っても、簡単には信じてもらえないだろう。
第7遠征打撃群には、アメリカ海兵隊太平洋海兵隊第3海兵遠征軍で編成された第31海兵空地任務部隊が[アメリカ]級強襲揚陸艦[サラトガ]に乗艦している。
第1海兵航空団第331海兵中型ティルトローター飛行隊に所属するV-22B[オスプレイ]と、それを護衛する第331海兵戦闘攻撃飛行隊に所属するF-35B[ライトニングⅡ]が、大日本帝国の首都圏全域のどこにでも展開できる準備している。
さらに対戦車ヘリコプターであるAH-1Z[ヴァイパー]が、空地任務部隊の近接航空支援を行う。
そして、アメリカ本国で博物館に展示されている[アイオワ]級ミサイル戦艦[ニュージャージー]を現役復帰させて、アメリカ海軍太平洋艦隊第7艦隊第70任務部隊第7戦艦部隊に配置させた。
当初は空母の案もあったのだが、アメリカ海軍の原子力空母で編成されている1個空母打撃群は、1個だけで、大日本帝国を屈服させる武力を保有する。
大日本帝国陸海軍にいらぬ疑念を植え付ける・・・という事で、自衛隊、韓国軍、台湾軍の高級士官(自衛隊の場合は高級幹部)が、反対したのである。
「東富士演習場では陸軍の第1特殊部隊デルタ作戦分遣隊も配置されている。それにヘリ部隊も万一に備えた対応は万全だな」
「フォーリー提督から、准将も拳銃を携行するようにとの指示ですが・・・」
「私は必要ない」
「准将!」
「どうせ、銃を持っていても取り上げられる。それなら持っている必要は無い」
サンチェスは、資料に目を通す。
「大袈裟な警備や警護は必要ない。その結果、相手国にいらぬ疑念を持たれては困る」
「わかりました」
「銃を使わない戦争は、銃を使うよりも大変だ。対話だけで、どうにかしなければならない。まあ、F-35B統合打撃戦闘機があるから、能力で言えば・・・当時の第一航空艦隊が相手でも十分に対処できる」
「大艦巨砲主義者の集まりである旧日本海軍の軍人たちは驚くでしょうね・・・あんな小さな戦闘機が、戦艦2隻分の戦闘能力があるとは思わないでしょう」
インドパシフィック合同軍編 第1章をお読みいただきありがとうございます。
誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。
次回の投稿は6月15日を予定しています。