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インドパシフィック合同軍編 終章 1 優しい噓 前編

 みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。

 大日本帝国東京府高嶺村。




 

 後に、市町村合併により高嶺市となる地域のとある屋敷に、日本共和区統合省保安局警察総監部陽炎団警察国家治安維持局防衛部外局外部0班班長である桐生(きりゅう)明美(あけみ)警視は、足を運んだ。



 


 本来なら、日本共和区に籍を置く日本国民は、大日本帝国人の一般人とは、現時点では可能な限り接点を持たず、素性を隠しておくのが決まりなのだが、桐生は自分の持つ様々なコネを使い、特別に許可をされて、その屋敷に向かったのだった。


 そのコネの最たるものは、大日本帝国の国家元首であり現人神でもあらせられる、今上天皇陛下に直接謁見(不法侵入)をし、実現をさせたのだった。


(別に、どうでも良かったけれど・・・ご先祖様の名は、まあまあ使い勝手が良いなぁ・・・帝の御母堂様であらせられる皇太后殿下は、太閤殿下の姉君の御血筋の方でもあられるから・・・)


 という、少々不敬な事を考えたりしながら、門の前に立つ。


 ギィィィィィ・・・と、音を立てて門が開かれると、そこには整った衣服に身を包んだ中年の男が、一礼をして立っていた。


「お待ちしておりました。当家の執事を任されております、東鬼(しのぎ)(こう)(ぞう)と申します。桐生明美様でいらっしゃいますね。大奥様がお待ちでございます」


 東鬼の挨拶に少し笑みを浮かべて、桐生も深々と頭を下げる。


「突然の訪問を、快くご承知下さった事、大変嬉しく思います」


 普段は、アホっぽい事も平気でするが、幼少時から一通り礼節は弁えている桐生である。





 奇妙な懐かしさを感じる廊下を通り、座敷に案内されると、そこには白髪の上品な老婦人が、姿勢を正して座っている。


「いらっしゃいませ。座ったままで失礼を致します。このところ、足腰が弱くなりまして・・・」


 上品な佇まいと同じく、上品で心を落ち着かせるような柔らかい声音だ。


「お初にお目にかかります。突然の、押しかけるような訪問を、快く受けて下さった事、痛み入ります。ありがとうございます。大奥様の弟の玄孫の、桐生明美と申します」


 敷居の前で正座をし、手を付いて礼をしながら丁寧に謝意を述べる桐生に、老婦人は笑みを浮かべる。


「ささ、どうぞこちらへ。未来からの、お客人様」


「失礼します」


 桐生は、立ち上がると老婦人の前に座った。


「正直に言って、信じていただけるとは思ってもいませんでした」


「まぁ、普通でしたらね。ですが、宮内省の方が態々こんな一般人の所に、訪れて来られて、私に会いたいと言っている人がいる。しかも、その人物は、アメリカへ渡った私の弟の玄孫であるなんて、冗談でも言わないでしょうし、仮に貴女が詐欺師であっても、こんな馬鹿馬鹿しい嘘なんて付かないでしょう?・・・それに・・・」


「・・・それに?」


「貴女には、弟の面影があります。特に、目元。幼かった頃の弟に、本当にそっくり・・・」


「・・・は・・・はぁ・・・あ・・・ありがとうございます・・・」


 この老婦人の名は、御影(みかげ)環季(たまき)


 桐生の養父である、御影惣(みかげそう)三郎(さぶろう)の祖母である女性だ。


 桐生明美・・・こと、桐生朱里丞(きりゅうしゅりのすけ)明美(あきよし)から見れば、実弟である五代目桐生家当主の子孫であり、幕末に御影家に嫁入りしたのだ。


 だから、彼女の弟に似ているというのも、強ち気のせいという訳ではないだろう。


(・・・まぁ、代を重ねて血は薄まっても、血は一応繋がってはいると、言っても良いかな・・・)


 桐生は、内心で自分を納得させた。


「アメリカで弟や、その孫たちが、どんな生活を送っていたか、教えて下さる?」


「はい・・・」


 嬉しそうな眼差しの老婦人に乞われて、桐生は、彼女の弟や、その孫たちについて話をする。


 あくまでも、表向きの身分である彼女の弟の玄孫として・・・





「そうですか・・・大変な苦労はあっても、皆、幸福な生涯を送る事が出来たのですね」


 老婦人は、安堵の表情を浮かべる。


「一昨年、弟が亡くなった・・・という手紙が、弟の孫から送られて来ました。アメリカは、あまりにも遠すぎて・・・お葬式にも参列出来なくて・・・弟の孫たちには、冷たい人間だと思われているのではないかと・・・」


「そんな事は、ありません。祖父は、大伯母様・・・大奥様には、とても感謝していました。遠く離れた日本から、いつも祖父や高祖父を気遣っていて下さったと・・・」


 悲しそうな表情を浮かべた老婦人に、桐生は告げた。


 本当の所、異国へ移住した自分の弟の子孫が、何を思っていたかについては、桐生も知る由は無い。


 咄嗟に付いた嘘ではあるが、悔恨の念を抱いている老婦人の心を和らげるには、必要と思っただけである。


「ありがとう・・・本当に、弟の様に心根の優しい方ですね」


 涙ぐみながら、老婦人は笑みを浮かべる。


「・・・・・・」


 さすがに少し気まずく思い、桐生は、頭を下げて表情を隠した。


「さぁさ、もっとアメリカでの弟たちの話を聞かせて下さいな」


 明るい表情になった老婦人に、桐生は色々な話を聞かせるのであった。

 インドパシフィック合同軍編 終章1をお読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。

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