インドパシフィック合同軍編 第10章 連合国アメリカ合衆国の動向
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。
アメリカ合衆国海軍太平洋艦隊司令部。
「大日本帝国についての、情報です」
海軍の情報員が、太平洋艦隊情報主任参謀のエドウィン・トーマス・レイトン中佐に、報告書を提出した。
「これは・・・新規空母か・・・?」
「はい、横須賀軍港、佐世保軍港、呉軍港、舞鶴軍港それぞれの軍港で、海軍諜報員たちが撮影した写真です」
「現在、建造中の[エセックス]級空母よりも、巨大だな・・・」
レイトンは、報告書と写真を交互に見ながら、つぶやいた。
「この空母は何隻、確認出来た?」
「この超大型空母だけでも2隻・・・大型空母は、2隻が確認されています・・・さらに、台湾や朝鮮半島でも、不確定な情報ではありますが、空母が確認されています」
情報員が型通りの報告をした後、付け加えた。
「それと、気になる事が・・・」
「何だ?」
「その超大型空母のマストに、星条旗が掲げられていました」
「何だと!?」
「これが、その写真です」
情報員は、超大型空母のマストに掲げられている旗を撮った、写真を見せた。
「アメリカ海軍には、この規模の空母は存在しない。それに、アメリカ海軍籍の軍艦が、大日本帝国の軍港に入港する予定は無い」
「はい、恐らく大日本帝国軍が、我が国との戦争に備えて、偽装軍艦を配備しているのでは無いでしょうか・・・?」
「いや、その可能性は無い」
レイトンは、きっぱりと答えた。
彼は、駐日アメリカ大使館海軍武官補として、大日本帝国にいた経験がある。
その時に、海軍次官だった山本五十六中将とも、顔を合わせた事もある。
「大日本帝国人は、武の礼節をわきまえる民族だ。そのような下劣な方法をとるとは思われない・・・それに、首都・東京府に隣接する地域に、独立国家が誕生したそうでは無いか・・・?」
「サー。日本共和区という、独立国家と言いますか、自治区のような地域があります」
「その情報は・・・?」
「それは、こちらの書類に・・・」
情報員が、薄い報告書を提出した。
「これだけか・・・?」
「申し訳ありません。大日本帝国と日本共和区との国境での検問が厳しく、諜報員を派遣しても、潜入が困難なのです・・・イギリスの諜報員が潜入したそうですが、そちらの資料を、ご覧になられますか?」
「ああ」
情報員が新たな報告書を、提出した。
「これは、日本共和区の市街を撮影した写真です」
「これは・・・」
日本共和区の街並みを写した写真は、レイトンを驚かせるには十分だった。
アメリカ・ニューヨークの街並みには匹敵しないが、それに近いレベルだった。
「日本共和区に存在する軍事組織である、陸軍の駐屯地に潜入するまでは出来たそうですが・・・こちらは・・・」
「どうした・・・?」
「その後、諜報員との連絡がとれなくなったと、イギリス本国から連絡がありました」
レイトンは、大日本帝国についての情報資料を取り出した。
「海軍の通信隊が傍受した大日本帝国海軍軍令部と聯合艦隊司令部との交信内容の中に、秘匿艦隊という単語が、ここ最近に増えている。この秘匿艦隊というのは、大日本帝国に潜入している諜報員たちが撮影した新規空母や巡洋艦、駆逐艦では無いのか・・・?」
「その可能性もあります」
「・・・・・・」
レイトンは、机を指でトントンと叩いた。
情報としては、これまでに届いている情報を整理しても、上は「何を寝ぼけている」と突き返すだろう・・・
だが、報告しない訳にはいかない。
レイトンは、自分に与えられている執務室で、これまでの情報を整理し、上官であり太平洋艦隊司令長官である、ハズバンド・エドワーズ・キンメル大将に報告した。
「・・・・・・」
キンメルは、部下からの報告書に、最初は眉を顰め、次は不快感を浮かべるという複雑な表情を浮かべた。
「海軍省から届けられた情報には、目に通したか?」
キンメルが、レイトンに質問する。
「はい、ですが、海軍省は自分たちの願望と言いますか、一種の想像を主体として判断されている所があります・・・」
「君の見解は違うと・・・?」
「そうです。超大型空母や大型空母の存在は、何よりも大日本帝国海軍が海軍力を強化しているという事です」
「海軍省からの情報では、これらの空母は、突然、現れたと報告されている。つまり、空母は空母でも、見掛け倒しの艦艇だと・・・」
「その可能性もあります・・・しかし、大日本帝国は、中国、ロシアという大国との戦争に勝利した結果、アメリカとの戦争に備えた準備を、1905年の段階から行っていました。はりぼての軍艦を建造するとは、考えられません」
「だから、アメリカの星条旗を掲げるという卑怯な手段を考えた」
「それは考えられません!」
レイトンは、強く言った。
「大日本帝国人は、武士道精神を第一に考える民族です。策略を用いるとしても、このような見え透いた愚策を用いるとは考えられません」
「それは君の見解だ。大日本帝国人と言えども、人間という事だ。人間は卑怯な生き物だ。特に蛮族は・・・」
「大日本帝国人は、蛮族ではありません。大和魂を持ち、武士道精神を持って、独自の精神文化の中で生きています」
「蛮族には変わりない。そのような時代錯誤な精神等、近代社会の前では無意味だ」
「・・・・・・」
「我々にも、ヤンキー魂がありますが」・・・レイトンは、そう言いたかったが、何も言わなかった。
「私が知りたいのは1つ、最近の大日本帝国海軍の動きはどうなっている・・・?」
「はい、空母による艦載機の飛行訓練に、熱心です。艦上戦闘機、艦上攻撃機、艦上爆撃機による艦船攻撃や、地上施設への爆撃訓練・・・艦上戦闘機による制空戦訓練に、時間を費やしています。さらに、大日本帝国海軍内にいる情報提供者から情報では、戦艦の建造をキャンセルして、建造中の戦艦や重巡洋艦を空母に改装する計画に変更するなど、すでにある戦艦や重巡洋艦を、空母に改装する計画をしているとの事です・・・」
「海戦の主役は、戦艦や重巡洋艦なのに、空母とは・・・空母は飛行甲板や格納庫が主体になるため、軽巡洋艦レベルの自艦防衛能力を有する事は出来ない。艦載機の攻撃能力も低い上に、戦艦や重巡洋艦に対しては、効果的な打撃を与える事は出来ない・・・」
「さらに、潜水艦の艦数も増やしているようです・・・」
「ドイツ海軍は、潜水艦決戦思想で、商船破壊を行っている。我が国の軍事物資を満載した輸送船も、沈められている」
「恐らく、潜水艦によるアメリカ西海岸攻撃を、狙っているのでしょう・・・」
「何?」
キンメルは、顔を上げた。
「大日本帝国からアメリカ西海岸まで、どのくらいの距離があると思っている。潜水艦の航続距離では、ハワイまででも厳しい」
レイトンは、眼鏡をかけ直した。
「長官。ハワイとアメリカ西海岸を繋ぐ航路の、警備態勢を強化して下さい。恐らく潜水艦によるアメリカ西海岸への攻撃が、予想されます」
「それは、ありえん」
キンメルは、きっぱりとレイトンの見解を否定した。
アメリカ合衆国海軍太平洋艦隊司令部で、大日本帝国についての情報を整理している頃、アメリカ本土でも、世界規模での情報を整理していた。
連合国アメリカ合衆国首都ワシントンDC・ホワイトハウス。
大統領執務室で、フランクリン・デラノ・ルーズベルト大統領は、大統領補佐官から報告書を受け取った。
「大統領。大日本帝国が、中国国民党に満州を返還するという情報は、ブラフでは無いようです・・・」
「うむ。満州国人及び満州に渡った大日本帝国人の、移送計画が実行されている・・・」
「ですが・・・これに関しては、軍部も一枚岩では無いようです・・・」
「何?」
ルーズベルトが、顔を上げた。
「満州国に駐留している関東軍には、根強い反対意見があるようです・・・さらに、中国に侵攻した大日本帝国陸軍部隊等にも、反対意見があるようです・・・」
「ふむ・・・」
「大統領。ソ連を、使いましょう・・・」
「ソ連を?」
「はい。ソ連極東軍を、満州国に侵攻させるのです。それだけではありません。朝鮮半島にも国境紛争を勃発させましょう」
「すると、どうなるのだ?」
「大日本帝国は、帝政ではありますが、実際は軍部が実権を握っています。いくら天皇が中国からの撤兵を主張しても、諸外国からの軍事的圧力が発生すれば、中国からの撤退は無くなるでしょう・・・さらに、日独伊三国同盟を破棄することも無いでしょう・・・」
「なるほど」
アメリカとしては、日独伊三国同盟を締結させるために中国国民党や中国共産党を、軍事的に援助してきた。
すべては、ドイツ第3帝国との戦争に、参戦するために・・・
ドイツ人たちは、第1次世界大戦の敗因をよく理解している。
アメリカが、軍事的介入した事により、ドイツは世界大戦に敗北した。
同じ過ちは、絶対に繰り返さない。
そこで大日本帝国に圧力をかけて、日独伊三国同盟を締結させた状態で、さらなる経済的制裁を行い。大日本帝国を戦争に引きずり込む。
それが、アメリカの狙いだった。
ドイツ第3帝国の政権を握っているナチス党は、独裁的な政策を断行している。
しかも面白くないのは、ナチス党は国民選挙によって、選ばれた政権である。
アメリカ合衆国は、民主主義の国家である。
だが、近年の経済不況等や様々な不祥事によって、社会主義勢力や共産主義勢力、独裁主義勢力が現れている。
ナチスの存在を許していたら、アメリカは民主主義国家で無くなってしまう。
アメリカ政府首脳部は、そこに危機感を覚えている。
「だが・・・あの男が、我々の申し出に素直に従うだろうか・・・?」
「そのために、こちらも義勇軍を派遣するのです。現在、ヨーロッパ・アフリカでは、ドイツ軍の攻勢が続いています。こちらにも義勇軍を派遣していますが、ソ連にも義勇軍を派遣するのです」
「ふむ・・・」
「武器・兵器もこちらが供与する形で、ソ連軍に話を持ち掛けるのです。さらに、満州には油田がある事が確認されていますから、ソ連側にとっても、悪い話では無いでしょう」
大統領補佐官の言葉に、ルーズベルトは頷いた。
「うむ。君の案を採用しよう。国務省長官と陸海軍省長官を呼んでくれ。ソ連を説得する内容をまとめる」
「わかりました。ただちに」
大統領補佐官が、退室する。
「ふっふっふっ、ジャップどもめ、お前たちの思惑通りには行かないぞ」
国務省長官と陸海軍省長官と会談した後、ルーズベルトは、とある人物と私的に昼食会を開いた。
「お待たせして申し訳ない」
ルーズベルトは、応接室で待つ、その人物に挨拶をした。
「いえいえ、大統領。待つのも楽しみのうちです」
その人物は、人の良さそうな笑みを浮かべた。
「それで・・・対独戦に関しては、どのような進展ですか?」
「それは抜かりなく・・・大日本帝国に、圧力をかける計画です」
「そうです。ナチス・ドイツは、ヨーロッパ大陸にあるすべての企業を国営化し、資産を独占しようとしています。このままでは、ヨーロッパに投資した我々が、大打撃を被ります。何とかしていただかないと・・・」
「あの独裁者は、ユダヤ人に対する政策で、ユダヤ人から高い評価を受けました。ヨーロッパにいるユダヤ人たちに、領土を割譲しました・・・そのため、合衆国国内にいるユダヤ人たちが、ナチス・ドイツに資金提供を行っています」
「ええ、そうです。彼らを迫害し、そこに甘い話を持ち掛ける事で、我々が利益を得るはずだった計画が、すべて水の泡になりました」
「はい。アメリカにいる資産家たちの不利益になるようには、致しません。ヨーロッパ、アフリカ、アジアで、アメリカの資産家たちが利益を得るように努力しています」
「努力だけではいけませんな・・・結果を出していただけないと・・・」
「わかっています」
「それと・・・」
その人物は、もう1つの懸念を口にした。
「最近、アメリカの資産家たちが次々と暗殺され、その資産家たちが裏で行っていた悪事が世間に流れています。これについては、どうなっているのですか・・・?」
「それに関しては、FBI長官に捜査を指示しているのですが・・・まったく、進展がありません」
「では、解任してはいかがですか・・・?」
「それは不可能です」
「どうして、ですか?」
「彼は、どうやって調べたのか、歴代の大統領の裏の顔を知っており、もしも、私を解任する事があれば、その情報をマスコミに暴露すると脅しているのです」
「それは大変ですね・・・」
「その辺を、貴方様に対応していただきたい」
「そうですね・・・」
その人物は、顎を撫でた。
彼の顎髭は綺麗に整えられているため、とても綺麗だ。
「私の息がかかっているマフィアに、彼を暗殺してもらうというのは、いかがでしょう・・・?」
「暗殺ですか・・・?」
「そうです。彼は、日系人に対する財産没収の上、強制収容所への強制収容するという案に反対し、ドイツ系アメリカ人や、イタリア系アメリカ人へ対する財産没収の上、強制収容所への強制収容の案を推奨しているそうですね・・・その情報が流れて、ドイツ系アメリカ人又はイタリア系アメリカ人に、暗殺されるというのは・・・?」
「その後の彼らに対する措置が、必要ですね・・・」
「いえいえ、これらの情報は日系アメリカ人が流したデマという事で片付ければ、万事解決です」
「なるほど・・・」
ルーズベルトが、納得した。
「そして新しいFBI長官を就任させて、資産家暗殺事件の捜査を行わせるのです。このまま資産家の暗殺が続けば、アメリカ第1主義が揺らぎます」
「わかりました」
ルーズベルトは、頷いた。
「では、食事にしましょう」
その人物は、立ち上がった。
ルーズベルトも立ち上がり、食堂に向う。
インドパシフィック合同軍編 第10章をお読みいただきありがとうございます。
誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。
次回の投稿は7月19日を予定しています。




