インドパシフィック合同軍編 第9章 空中機動演習
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。
菊水総隊航空自衛隊第9航空団飛行群第205飛行隊所属の高居直哉1等空尉と、嘉村慶彦1等空尉の2人は、それぞれのサポート役兼ウィングマンである川ノ木耀司3等空尉と、波島徹3等空尉と共に、硫黄島近空で行われる実弾演習に参加していた。
『イーグルアイより、イーグル編隊及びファルコン編隊へ、実弾演習を開始。無人標的機が接近中!全機、撃墜せよ』
E-767早期警戒管制機から、通信が入る。
「こちら、イーグル1。ラジャ」
高居は、後方横についているウィングマン兼サポート役の川ノ木機に、顔を向けた。
「今回の演習は、大日本帝国陸海軍航空隊の高級幹部や上級幹部に、現代の空中戦を観戦してもらう事だ。無人標的機になっているのは、国民の血税で購入された物だ。誘導弾もタダでは無い。しっかりとやれ!」
「は、はいっ!」
『こらこら。あんまり新人をイジメんなよ。イーグル1』
嘉村が、声をかけた。
『新入り共、今回の演習が、実弾演習だからと言って、気を張るな。張り切り過ぎては身体に毒だ。深呼吸しろ』
「ふん!」
高居は、鼻を鳴らす。
『さぁ!イーグルちゃん。久々に大暴れが出来るよ!頑張ろうな!』
嘉村の不敵な声が聞こえる。
恐らく、満面の笑みを浮かべているだろうと、想像出来る。
『行くぞ!新入り!』
『は、はいっ!』
ファルコン編隊が、加速する。
「俺たちも行くぞ!」
「はい!」
高居は、F-15J改を加速させる。
「目標、レーダーで捕捉した!AAM-4(99式空対空誘導弾)、スタンバイ!」
視界外射程誘導弾であるAAM-4の準備を行う。
「FOX1!」
準備が出来たと同時に、高居はAAM-4の発射ボタンを押す。
胴体下に搭載されているAAM-4が、白い尾を引きながら発射される。
ロックオンした無人標的機が、回避飛行をする。
レーダー画面上、AAMの光点と無人標的機の光点が重なり、消える。
「スプラッシュ!」
「す、スプラッシュ!」
相棒も、AAM-4を発射し、無人標的機を撃墜する。
「近接戦闘を行う!ついてこい!」
「は、はい!」
高居は、F-15J改を加速させ、無人標的機を目視出来る距離に迫る。
「AAM-5(04式空対空誘導弾)、スタンバイ!」
高居は、AAM-5を選択する。
ピー!
無人標的機を、ロックオンしたというアラーム音が鳴る。
「FOX2!」
AAM-5の発射ボタンを押す。
主翼下に搭載されているAAM-5が、発射される。
発射されたAAM-5が、無人標的機に命中する。
無人標的機が爆発炎上し、そのまま空中分解する。
「こんな感じでいいのか・・・?」
高居が、J-WACSに通信する。
『ああ、問題無い。お客さんたちは、F-15J改、F-2改、F-4EJ改等の空中戦や地上目標への爆撃、対艦攻撃も観戦している。話によれば、かなりの衝撃を受けているそうだ』
「・・・そうだろうな」
F-15Jは要撃戦闘機であるため、主に制空戦を実践しているが、F-2改は小笠原諸島に属する無人島を爆撃演習地として買い取り、地上目標を設置した。
地上目標は旧式の戦車を無人自走車として改造し、その自走する標的にF-2改は、JDAMを投下し、無人戦車を撃破する。
さらにASM-2(93式空対艦誘導弾)を搭載したF-2改が、標的艦に向けてASMを発射している。
正確無比の攻撃の上、迎撃も出来ない。
大日本帝国陸海軍人たちにとっては、刺激が強すぎるだろう。
ましてやF-15J改、F-2改、F-4EJ改は、音速で飛行する。
その恐ろしさは計り知れない。
『イーグルアイより、ファルコン1、イーグル1へ、ウィングマンを先に硫黄島基地に帰投させ、両機は空中待機せよ』
突然のJ-WACSからの通信に、高居と嘉村は首を傾げた。
「何だ?」
『俺たちだけ?』
『そうだ。お前たち2人と、手合わせしたいと言うパイロットがいる。空中機動演習だ』
「イーグル1、ラジャ」
『ファルコン1、ラジャ』
「イーグル2、そういう訳だ。ただちに基地に戻れ」
「イーグル2、ラジャ」
川ノ木機が、左に旋回する。
ファルコン2のコールサインを持つ波島も、左に旋回する。
『イーグル1、俺たちと手合わせしたいって、どんな人だろう?』
「米軍で、よく行われる秘匿部隊によるドッキリ演習だろう・・・俺たちに匹敵する腕を持つパイロットがお出ましだ」
『俺たちに匹敵するパイロットって、空自内では数えるぐらいしかいないよな?』
「そうだな・・・」
『大した自信だな!』
「「!?」」
ヘルメット搭載式の通信機から、女性の声がした。
その声の主が誰であるのか、2人にはすぐにわかった。
『か、風間教官!?』
「まさか!?今は空将補だったはず・・・」
嘉村と高居の驚きの声に、通信機から再び声がする。
『私の子供たちが、ハワイ攻略作戦に参加すると聞いてね。お前たちの腕を確かめたくなった』
2人の目の前を、1機のF-15が通過する。
「何だ!?あのF-15は!?」
『F-2と、同じ塗装がされているぞ・・・!』
『F-15Jの後継機であるF-15FXだ。こいつで、お前たちの腕を確かめてやろう』
「F-15FX!?」
『噂には聞いていたけど・・・すでに完成していた・・・?』
『どこからでもかかって来い!お前たちの腕を確かめてやる』
風間が、挑発的な口調が、通信機越しに響く。
「わかりました。教官」
「俺たちの力を、見せてやる!」
高居機と嘉村機が加速し、F-15FXを追跡する。
(さすがだな・・・性能面で劣るF-15J改の性能を、最大限に発揮するとは・・・私の教えを忘れていないな)
風間は、嬉しくなった。
『だが!』
風間機が、加速する。
F-15FXとF-15J改の最高速度は変わらないが、加速性能ではF-15FXが圧倒的に上である。
「何という加速力だ・・・!?」
『これが、次世代次期主力戦闘機の性能・・・』
『どうした?お前たちの腕はその程度か・・・?』
風間が、挑発する。
「舐めないで下さい!この程度で根を上げる俺たちではありません!」
「その通りです!」
高居と嘉村は、F-15J改のエンジン出力を全開にした。
F-15FXを、F-15J改2機が追跡する。
(飛行教導群にいるのは、間違いでは無いな・・・)
風間は、嬉しさのあまり鼻歌を歌う。
『だが、そろそろ終わりだ!』
F-15FXは、さらに加速した。
「馬鹿な!?」
『あれで、全速力では無かった!?』
高居と嘉村が、驚く。
そのままF-15FXは、2機のF-15J改の後ろをとった。
『スプラッシュ!』
『演習は終了だ。ブリザード1の圧勝だ』
「さすがは、風間教官だ・・・」
『まったくだぜ・・・ここで、風間教官を出すとか反則だぜ』
『だが、良い経験にはなっただろう?』
「教官」
『はい、なりました。でも、どうしてここに?』
『こいつのお披露目だ。それと教え子が私の教えを忘れていないか・・・確認に来た』
『教官、忘れる訳がありませんよ。教官からの熱心な指導は、昨日の事のように覚えています』
嘉村が、嬉しそうに答える。
その日の夜。
硫黄島統合基地の施設内にある居酒屋に、高居と嘉村の姿があった。
「久しぶりだな。直哉、慶彦」
居酒屋内にある席を1つ、占拠した状態で、風間の姿があった。
彼女の前には、大ジョッキのビールがある。
すでに半分だけになっている。
「お久しぶり!2人共!元気・・・?」
顔を赤くした状態で、大上が馴れ馴れしく2人に挨拶した。
「何だ?何だ?大上。もう酔っているのか?」
高居が、呆れたように告げる。
「お前も俺と一緒で酒に強く無いんだから、ほどほどにしとけよ」
嘉村も、呆れた口調でつぶやく。
「酔っていないよ~少し身体がフワフワするだけ~」
「それを酔っていると、世間は言う」
高居が、きっぱりと言う。
「お前たちも席に着け、久しぶりに飲もう」
風間が、お通しの枝豆を食べる。
「はい!教官!」
「了解です!教官!」
高居と嘉村が、席に着く。
「あんたら、何にするんだい?」
「ビール大を」
「ビール小を」
「あいよ。大と小だね」
「女将さ~ん。ビール、おかわり~」
「あいよ」
少し待っていると、若い女性スタッフが、ビールの入ったジョッキを持ってきた。
「どうぞ」
「ありがとう」
「どうも」
「ありがとぉ~」
3人の目の前に、ビールジョッキが置かれる。
「さて、酒も行き届いたところで、乾杯しよう」
風間が、半分になったビールジョッキを持つ。
「君たち3人のおかげで、F-15FXのデータが収集出来た。技術者たちも喜んでいる。私からも礼を言わせてもらう。ありがとう」
「いえいえ」
「俺たちで、お役に立てたかどうか、怪しいです」
「そんな事は無い。お前たちの腕は空自内では10本指に入る。お前たちが空自初の実戦の時にいてくれたら、6人の殉職者を出す事は無かった・・・」
「空将補~また、その話ですか~?」
「そうだった!」
高居が、思い出したように叫んだ。
「教官。空将補昇進、おめでとうございます」
「おめでとうございます」
「おめでとうございますぅ~」
「大上。お前からの祝いの言葉は飽きる程、聞いた」
風間は、鼻を掻いた。
「何。この時代に派遣される辞令を受け取った時に、1等空佐1等から昇進したんだ。実戦を経験した指揮官は、貴重だという事で、私も将補の1人になった」
「今は、何をなさっているのです?」
嘉村が、尋ねる。
「統合任務部隊航空自衛隊航空開発実験集団飛行開発実験団飛行実験群飛行隊飛行班に所属しているが、統合省防衛局・防衛局長官付の顧問団・団長も務めている。実戦経験をしているという事で、実戦経験した自衛官たちのトップだ」
「治安出動命令であっても、離島奪還及び空中戦を経験なさった自衛官たちは、貴重ですからね」
「だが、私は思う・・・実戦を経験した事により、自衛隊の世界が嫌になった者たちを無理やり復帰させて、顧問団に入れるのは、問題では無いのか?と・・・」
「確かに」
「そうですね」
「まあ、お前たちも来年の12月8日には、実戦を経験する。これは先輩としてのアドバイスだが、敵を侮るな。確かに、この時代に置いてF-15J改に敵う制空戦闘機は無いだろう。だが、人間の底力は計り知れない・・・追い詰められた者たちは、何をするかわからない。F-15J改がやられる可能性もある」
「はい」
「了解しています」
「お前たちが、実戦で生き残れるよう私が顧問団・団長として、防衛局長官、副長官、統合幕僚本部長、統合作戦司令官にしっかりと助言していくつもりだ。そこは安心してくれ」
「はい!」
「お任せします!」
「私も、同席してもいいかね・・・?」
4人で雑談をしていると、傍らから英語訛りのある日本語が響いた。
「ベイカー少将。もちろん、いいですよ」
風間が大ジョッキを掲げて、笑みを浮かべる。
「ベイカー少将・・・!?」
「うぐっ!!」
高居と嘉村が、驚いた。
嘉村に関しては、焼き鳥を喉に詰まらせそうになっていた。
「大丈夫か・・・?」
「おいおい・・・」
高居が嘉村の背中を叩き、風間が声をかける。
「驚かせてしまったな、申し訳ない。ナオヤとヨシヒコが居酒屋にいると聞いてね。私も挨拶しようと」
ベイカーとは、高居と嘉村がアメリカに渡った時に、アメリカ空軍側の指揮官だった。
「君たち10人は、特に素晴らしかった・・・アメリカ空軍の練習機であったF-15Dに乗り込み、NASAが声をかける程の名パイロットだった」
ベイカーがビールを注文すると、昔の話をした。
「閣下も、現在は在日アメリカ空軍を指揮する身・・・在日アメリカ空軍第5空軍第18航空団第44戦闘飛行隊や第67戦闘飛行隊のパイロットの中にも、私たちと肩を並べたパイロットたちがいる」
風間が、つぶやく。
「ああ、そうだ」
高居と嘉村が自衛隊少年工科学校(陸上自衛隊だけでは無く、海上・航空自衛隊の学生たちも受け入れた自衛隊の高等学校)を卒業後、そのまま空自組の選抜学生たちと共に、アメリカ空軍に渡った。
航空自衛隊側は自衛隊少年工科学校空自組(飛行要員)、空自の航空学生、空自の幹部候補学生(飛行要員)から50名が選抜され、アメリカ本国に派遣された。
彼らはアメリカ空軍で、アメリカ空軍籍に在籍した状態で、さまざまな教育訓練を受けた。
高居も嘉村も、マルチパイロットとして多用途戦闘機等の固定翼機やヘリコプター等の回転翼機の操縦訓練を受けた。
特に、その中で、10人のパイロット候補者たちは、空自の10本指と呼ばれる程、高い操縦技術と戦闘技術を有する名パイロットになった。
高居、嘉村以下8人の名パイロットたちは、アメリカ空軍での教育訓練終了後、航空自衛隊航空総隊航空戦術教導団飛行教導群第2教導飛行隊に配属された。
マルチパイロットという事もあり、F-15J改だけでは無く、F-2改、F-4EJ改、F-35Aに乗り込み、さまざまな航空戦術の研究や部隊の練度向上訓練に従事した。
「私も鼻が高い。私の教育を受けた君たちが、日本国航空自衛隊を引っ張っていくのだからな」
ベイカーが、ビールを飲む。
「この場を借りて、君たちに話しておこう・・・絶対に他言はするな」
ベイカーは、念を押した上で、口を開いた。
「現在、行われている日米和平工作と新世界秩序構築は、上手く行っていない。新世界連合軍最高幕僚会議で、武力による新世界秩序構築が決定した」
「つまり、新世界連合軍が参戦する時期が早まると・・・?」
風間が、つぶやく。
「ああ、予定では日米開戦から2ヵ月後に、新世界連合軍が軍事介入するそうだ」
ベイカーが、焼き鳥にかぶりつく。
「その間は、自衛隊、各独立軍及びその独立軍を監督するアメリカ軍のみで、戦争をするそうだ」
「・・・開戦から、2ヶ月後・・・」
「・・・・・・」
ベイカーの言葉に、高居と嘉村は息を呑む。
インドパシフィック合同軍編 第9章をお読みいただきありがとうございます。
誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。




